今週のメルマガの前半部の紹介です。
先日、ゆうちょ銀行の新卒採用において“学歴フィルター”の存在が発覚し、大きな話題となりました。就職セミナーのエントリーで、東大なら「空席あり」と表示されるにも関わらず、日東駒専だと「満席」と表示されてエントリー出来ないというものです。「東大生用の席しかないぜ」と言っているわけで、これほどわかりやすい学歴フィルターもないですね。
学歴フィルターという言葉自体はだいぶ前から一般的になっていましたが、目に見える形で発覚したのは初めてではないでしょうか。
とはいえ、存在自体は証明されても、学歴フィルターにはまだまだ語られていない闇が多く存在しています。俺は高学歴だからフィルターなんぞ関係ないぜという人も、自分はFラン大なのでどうしたもんでしょうとお悩みの人も、学歴フィルターのすべてを知れば、視野は大きく変わることでしょう。ということで、今回は、学歴フィルターに関する7つの事実を紹介しておきましょう。
学歴フィルターは学生思いの優しい仕組みである
まず、学歴フィルターなるものは、別にゆうちょ銀行だけの専売特許ではなく、大企業ならどこにも必ず存在します。というのも、人気のある大手にはたいてい新卒求人枠の数十倍~100倍ものエントリーが殺到するからです。全員に会って面接していたら年が明けてしまいます。だから、とりあえず学歴で区切って、良人材の多そうな大学グループにリソースを集中するわけですね。
といっても「偏差値55以下は来ないでください」と明記してしまうといろいろとまずいので、そこは上手くカバーします。もっとも一般的なのは筆記試験をやりつつ学歴でセレクションかけるパターンです。これなら次の面接ステップでなぜか東大とか早慶の学生しか控室に残ってなくても「やっぱり東大早慶は優秀だよね」と、別に違和感なくセレクトできるわけです。ひどい会社だとコスト削減を理由に採点すらしてませんね。
ついでに言うと、そういう場合の筆記はやたら難しかったり量が多くて全回答が不可能だったりします。簡単だと「私は絶対100点満点の自信があります。採点結果を教えてください」みたいな空気読まないこと言ってくる奴が必ずいるからですね。
さて、ひょっとすると読者の中には「学歴フィルターは差別だ、学生みんなに平等に機会を与えるべきだ」と思っている人もいるかもしれません。でも、実は学歴フィルターは、学生の負担を大きく軽減し、効率的な就活を可能とする合理的なシステムだというのは筆者の考えです。
はっきり言うと、学歴フィルターではじかれているような大学の学生が、仮にフィルターなくして本選考ルートに乗れたとしても、内定まで到達する可能性は限りなくゼロです。なんていうと「自分は高校時代はあんまり勉強しなかったけれども大学4年間はこんなに頑張りました」と言う人も多いでしょうけど、そういう人にチャンスを上げられるほど大手の採用担当の懐は深くありません。
だって、うっかり冒険しちゃってダメだったとしても、その人を65歳まで雇い続けないといけないわけですからね。少なくとも現行の終身雇用であるかぎり、企業は応募者の自己申告よりも18歳時点でのポテンシャルを重視するしかないでしょう。
そう考えると、可能性のとても少ない人を本選考の前の段階で落としてあげるのは、ある意味、温情的な措置でもあるわけです。蒸し暑い中スーツを着て、授業を休んで数時間をドブに捨てるという苦行から解放してあげるわけですから。特に、一回の上京で一万円以上かかる地方の学生に対しては、フィルターの有無は死活問題でしょう。
よく「就活何十連敗しました」的な人の話を聞きます。恐らく、その多くは学歴フィルターでふるい落とされているはず(実際の選考過程に入っていればとてもその数を落ちている時間的余裕はないでしょう)。そういう人は「自分の存在を全否定された気がする」なんて人もいますが、別に気に病む必要はないですね。否定以前に、そもそもあなたは選考の土俵にすら載ってないわけですから。
それから「学歴フィルターを無くせ」的な短絡的な意見にも筆者は反対ですね。上記の雇用構造がある以上、学歴フィルターを無くすことは不可能であり、無くそうとすればするほどそれは水面下に巧妙にもぐって多くの人に偽の希望を与えることでしょう。結果、ますます就活自体が非効率かつ希薄化し、100連敗オーバーのチャレンジャーが量産されるだけでしょう。
以降、
なぜか大企業はマーチ以上が好きである
東大と明治で扱いに違いはない
学歴フィルターは一枚ではない
MARCH以上なのに学歴フィルターではじかれる大学
学歴フィルターではじかれても、リベンジする方法はある
ゆうちょ銀行の採用担当は頭が固い
Q:「管理職になったら給料が下がったんですが……」
→A:「新任管理職あるあるネタです」
Q:「シャープで働いています。早期退職に手を上げるべきでしょうか?」
→A:「応募するしないに関わらず、40歳定年という考えは皆が持っておくべきです」
+雇用ニュースの深層
派遣切りが勃発中なのに野党や労働弁護士が文句を言えないワケ
筆者のかねてからの指摘通り、専門26業務の派遣労働者に対する雇い止めが起き始めているものの、左派や労働弁護士の皆さんは一様にこの点を無視し続けている。無理もない。これまでの経緯を考えれば、彼らは「3年ルールのせいで雇い止めが起きている」とは口が裂けても言えないだろう。
孫正義は暴走しているのか
組織の大企業化を防ぐには、功労者から外部人材へのバトンタッチがとても有効だ。
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編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2015年6月10日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった城氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。