イエレンと市場 市場を本当に分かっているのは誰か 

2015年06月19日 11:45

逆説的だが、イエレンである。

市場は市場を分かっていない。だから、市場価格は乱高下する。

それが、中央銀行の政策と市場価格の関係を見れば、明らかである。

今回のFOMC後の記者会見でも、それが端的に示された。

市場は分かっていないのである。

***

まず、FEDがいつ利上げを始めるか、ということについては、9月だとか12月だとか年内が危うくなった、とか市場関係者はかってなことばかり言っているが、真実はただ一つ。

まだ決まっていない。

景気状況を見て、経済がこのまま改善すれば、そのときにやる。FOMCの他のメンバーもイエレンも繰り返し言っている通りだ。それ以上でもそれ以下でもない。

年内に利上げとなる、という見通しを表明している委員が多数ではあるが、それはあくまで見通しであり、景気が悪くなったり、経済の回復、とりわけ雇用の改善が急に止まったりすれば、それはまた別なのである。

それは、まさに、彼女が繰り返しっているとおりだ。彼女もチャーミングな笑顔を絶やさず、忍耐強く、かつ力強い言葉で、信念、いや単なる事実を繰り返し述べ続けており、素晴らしい。

これがわからない市場関係者は馬鹿なのか、それとも馬鹿なふりをしているのか。

どちらでもない。欲に目がくらんでいるだけなのである。

市場関係者は、なぜ利上げの時期に拘っているのか。

売りタイミングを探っているからである。利上げが始まれば売りなのだ。じゃあどうせそのうち上がるのだから、今売っておけば確実ではないのか。

それが普通の感覚だ。

彼らは普通でない強欲なのである。

売りタイミングが来るまでは上がる。そこまでは買いで儲けたいのである。あるいは、そこまでは乱高下でトレーディングで儲けたいのである。

だから、9月ならば9月までに売り体制を作っておきたいし、12月ならば、まだまだ買いで上げていきたいし、さらに、乱高下を利用してトレーディングで揺さぶって儲けたいのである。

つまり、実体経済がどうなるかとは無関係に、株式などの金融商品の売買のタイミングのためだけに重要なのである。また、これほど実体的にはどうでもいいタイミングの話で、いつだ、いつでない、早まった、遅くなった、と話をわざわざ大げさにし、また大げさにすることで、逆方向のニュースが出れば,大騒ぎできるような仕掛けを作っているのである。

その意味では、確信犯とも言える。

しかし、彼らはあまりに確信犯であり続けたために、それが自分たちで作った大騒動であることを忘れかけている人々もいる。

自分で忘れるところまで行くと、それは市場関係者の勝利である。鈍感力の勝利である。

FEDが考えていることはただ一つ。市場にサプライズをもたらさないことである。そのためには、市場関係者が分かっていなければ、分かるまで忍耐強く説明しなくてはならない。イエレンのような母なる大地のような包容力で教えて聞かせることが必要になる。

しかし、それでも分からない場合には、分かるまで待つしかない。鈍感力、あるいは確信犯の勝利である。市場関係者に市場を人質に取られているのである。

だから、市場をよく分かっている、市場の無知さをよく分かっているイエレンは、耐えなければならないのであり、イエレンの忍耐力に感謝をすることも忘れ、市場関係者は、イエレンは分かりにくい、もっとはっきり説明しろ、と勝手なことを言っているのである。

さらに驚いたことに、私のかつて尊敬していたファンドマネージャーが、FEDの公表した、GDP、金利、インフレ率の見通しの数字についてコメントし、市場から推計される(イールドカーブや物価連動債の価格から)将来のインフレ率との食い違いについて述べ、FEDのメンバーは、将来の経済変化による金利の変化やインフレの変化を分かっていないと述べた。

FEDは分かっていない。視野が狭い。市場は分かっている。

確信犯ならば、ここまでのことは言わないだろう。なぜなら、それは、確信犯には、FEDこそが真の力を持っており、市場は欲望による利害の統一戦線が崩れれば、あっという間にばらばらに崩壊してしまうから、FEDを怒らせるようなことはしないからだ。

やはり、市場関係者は、欲望に目がくらんで何も見えなくなってしまった、というのが現在の真実であろう。

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