憲法学者は「自衛隊は違憲だ」という訴訟を起こせ

憲法学者が「違憲訴訟」を準備するそうだが、その前に安保法案11本をすべて読んだほうがいい。潮匡人氏によれば法案には「集団的自衛権」という言葉はないので、集団的自衛権の行使が違憲だとしても、今回の法案は違憲にならない。新3要件程度なら個別的自衛権で対応できるので、集団的自衛権という言葉を政府が使わなければいいのだ。

小林節氏は「ジョージ・ワシントンが王様を倒して、初めて民主国家をつくった時、それまで神の秩序を詐称していた王様と違い、初めて一般人が権力を持った以上、権力者特有の法規が必要だと憲法を作った」というが、これはどこの国の憲法だろうか。アメリカ独立戦争でイギリスの王権は倒れていないし、憲法は「神の秩序」の代わりではない。

独立戦争の前にアメリカには13の民主国家(州)があり、それぞれ法律をもっていた。憲法が制定されたのは独立戦争の12年後であり、最初の合衆国憲法はたった7ヶ条の州際条約のようなものだった。この程度のことは阿川尚之氏の文庫本にも書いてあるので、小林氏も大学に入り直して勉強したほうがいい。

長谷部氏の「9条で武力行使が認められるのは個別的自衛権の行使のみです。これは政府の憲法解釈です」という主張も疑問だ。自衛隊による個別的自衛権の行使は、なぜ合憲なのか。彼は「政府の憲法解釈」と表現しているが、彼自身の解釈はどうなのか。

憲法第9条では戦力も交戦権も否定しており、自衛隊が「戦力」であることは自明だから、その行使は(個別だろうと集団だろうと)違憲だというのが憲法学界の多数説だろう。2人ともその点を曖昧にして、いわゆる「違憲合法」説をのべているようにみえるが、これは井上達夫氏も指摘するように論理的に矛盾している。

違憲訴訟を起こすなら「自衛隊も安保条約も違憲だからすべて廃止せよ」という訴訟を起こしてほしい。そして違憲判決が確定すれば、政府も改正せざるをえなくなるだろう。