待機児童増加の犯人は事業者の資本力が足りないこと --- 渡瀬 裕哉

2015年11月04日 07:00

「待機児童増加の、意外な犯人は」(駒崎弘樹氏)
という記事を読みました。駒崎氏の主張に対する感想は「しっかりとした企業体の参入」が必要だということです。
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民間の経営感覚から見た違和感


駒崎氏は記事の中で、待機児童増加している原因は「役所が保育園のための初期の補助金を創らないからだ」と述べており、地方自治体や厚生労働省などへの制度設計を求めています。しかし、本当にそうでしょうか?

仮に、駒崎氏が述べているように「投資から回収までの期間が1年半」かかるとしたら、経営の当たり前の感覚としてそれに見合うだけの資金調達を実施するだけのことです。実際、普通の民間事業であっても回収までに1年半かかる事業なんてザラだと思います。

むしろ、回収見込みまで運営補助で見通せているのに「資金調達を実施することができない」と仮定することは?と思います。資金調達という経営の手腕の根幹に関わる話を「行政の補助金が無いことに責任転換」することは話の筋が明らかに違います。

本当の問題は事業者の資本力の問題ではないか


確実に儲かる可能性が高い事業であるにもかかわらず、初期資金が用意できないために参入できない、それによって待機児童が解消できない、という駒崎氏の主張の通りであれば、「資本力を持った事業体が参入すれば良い」というだけのことです。

むしろ、素人考えでは初期の補助金が無いと保育園を運営できないような主体に経営を担わせることは危険ではないか、とさえ思います。良いサービスを提供しようと思えば、資金繰りはカツカツの状況ではなく、多少の余裕を持って回す必要があるからです。

本当に重要なことは、資本力が足りない事業者が参入しやすい制度ではなく、資本力の潤沢な事業者が参入しやすい環境を整備することです。

資本力を有する事業者の参加に「価格の自由化」は不可欠


資本力を有する事業者が魅力を感じて参加するためには「価格の自由化」は必要不可欠です。価格が自由化されることを通じて、強力な資本力を持つ事業者が大量に参加すれば待機児童問題は一気に解決します。

待機児童数が多い相対的に保育料が上昇している地域には、新たに事業者が参入することを通じて価格競争が生じることになります。自由価格であったとしても競争が存在している限り価格は妥当なラインに収斂します。

むしろ、社会福祉法人に関する規制、保育士に関する規制、施設に関する規制などの規制緩和を推進するとともに、経営状況が第三者からも分かるように徹底した情報公開を義務付ける方向で改革するべきです。

社会主義者の言論が社会の発展を遅らせているということ


駒崎氏の記事の中では区役所の担当者の答弁を社会主義として切り捨てていますが、同じ問題を補助金があれば解決できると主張する姿は単なる社会主義者同士の近親憎悪でしかないと思います。自分に言わせればどちらも社会主義者ですが、それをうまく自由主義的に見えるよう化粧できているか否かというだけのことです。

現代社会においては福祉国家病が蔓延しており、あらゆる人々が政府予算にたかるようになったため、昔のように「補助金を寄こせ」と騒げば無限に予算が出てきた環境ではありません。まして、高齢者の影響が強い超高齢化社会において、それ以外のアクターに対する補助金設定をソリューションとして提示することに疑問を覚えます。

現在のような人口構造・財政構造の下では、若者や乳幼児に関する施策は自由化を進めて民間資本の力で実現していくやり方について知恵を絞る必要があります。高齢者と同じ土俵で予算の分捕り合いで競合することは生産的なことだと思えません。徒に子育て関連の補助金を求めることは物事の根本的な解決を遅らせることになるのではないでしょうか。

渡瀬裕哉
早稲田大学公共政策研究所地域主権研究センター招聘研究員
東京茶会(Tokyo Tea Party)事務局長、一般社団法人Japan Conservative Union 理事

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