政府の「学校の先生を保育士に」は絶対うまくいかない --- 駒崎 弘樹

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こんにちは、最近5歳の娘が「パパみたいな良い人を、どうやって見つけたの?」と妻に聞いていて、分かりやすく有頂天になった駒崎です。

さて、本日NHKの日曜討論という番組に出して頂いたのですが、そこで「保育士不足」の話題が出ました。

従来から、保育士不足の要因は、補助システムの不備で全産業平均値より月給にして10万円低い保育士給与であることを指摘し続けてきた(参照:保育士給与はなぜ低いか http://bit.ly/1PbAqn8)僕が、それを説明すると、加藤一億大臣は以下のようにおっしゃいました。

小学校などの学校の先生に、保育士現場に入って頂くということも、政府は考えている」と。
(参照:「幼稚園・小学校教諭を保育士に活用」http://s.nikkei.com/1QNcEyk

えっ・・・。

いや、それ、絶対に機能しませんから。簡単にご説明いたしましょう。

保育士給与は全国平均で月20.7万円です。(出典: http://bit.ly/1HwTytD
業界内では比較的賃金の高い、公立保育所の公務員保育士を含めてこれです。

一方で、小学校の先生の給与は、約33万円/月です。誰が、給与6割になって小学校の先生から保育士にジョブチェンジするのでしょうか。

それを突っ込むと、加藤大臣は「いや、退職した教師を・・・」と仰います。

はい、与党関係者の皆さんには、1日だけで良いので、保育所で働いてもらえたらと思います。なんなら僕の経営する園で受け入れます。8時間以上、子どもを抱き、一緒に遊び、時に追いかけ回し。子どもが寝ている間も書き物をします。そう、保育士の仕事は、たいへんな重労働です。

厚労省自身の調査でも、資格を持っていても「保育士としての就業を希望しない理由」として上位にあるのが、「自身の健康・体力への不安」です。(出典: http://bit.ly/1HwT9XW
東京都の統計でも、退職意向者の退職理由の2位に「仕事量が多い」とあります。(出典: http://bit.ly/1HwTytD )(ちなみに、もちろんどちらも1位は「賃金が合わない・給与が安い」です)

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それもあり、人手不足にもかかわらず、保育士で60歳以上で働いている人は1%にも満たないわけです。(出典: http://bit.ly/1HwUDl3 )

だから、学校教員、特に退職した教師が保育所で保育士として働く、というのは絵に描いた餅どころか、悪い妄想と言っても良いでしょう。

政府は早く目を覚まして、保育士不足問題の本質である、保育士の給与の引き上げを行いましょう。
1万円上げるのに約340億円、全産業平均にまで引き上げるのに約3400億円です。(出典:http://bit.ly/1NiUjqs

軽減税率についてはすぐ4000億円用意しようとする政府が、できないわけはありません。

でなければ、1年半後には保育士が7万人足りなくなります。(出典: http://bit.ly/1NiU7aA
そうすると保育所はつくれなくなり、待機児童ゼロは当然達成できません。

するとどうなるか。2020年、オリンピックをやってる最中に、その陰で保育所がなく、お母さんが泣く泣く仕事を辞めている。そんな未来像を、我々は絶対に選択してはならないのです。


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編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2015年11月29日の記事を転載させていただきました(タイトルは改稿)。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。