就職活動時期の変更による混乱と悪影響および、来年への対応についてメディアで報じられているところです。本件について、ドコモにて人事採用担当であったことから問題意識を持ち改善に向けて取り組んできました。
今回、河村建夫代議士・宮崎謙介代議士とともに議員連盟として提言をとりまとめ提出しましたので、今回の問題の整理も含め書かせていただきます。
就活問題についての整理
今回の後ろ倒しのうち、「広報」開始時期の後ろ倒し(12月⇒3月)は、3年生を授業に集中させる目的に関しては、一定の効果があった。しかしながら「選考」開始時期の後ろ倒しは「後ろ倒しの要請に協力しなかった企業」「協力すると言いながら実質上は様々な選考活動をした企業」が多く、また変更初年度の不安心理から就職・採用活動の総量が増加し、長期化するなどの問題が起こった。
またそれらの企業の一部には採用活動においてのハラスメント行為等の「不公正・不透明」な採用手法が看過できない社会問題として浮かび上がった。これらの混乱した状況が、一部の企業(特に中小企業)への採用コストを増加させ、経済活動に影響を与える可能性がでてきている。
17卒採用での就活時期変更の是非について
17卒採用においての対応に関しては、初年度であるから起こった要因を含む就職・採用活動の総量の増加・長期化だけの問題であるならば、再度選考開始時期の要請を徹底するという考えはあるものの、産業界の採用意欲の高まりを考慮すると、修正しないことにより「就職・採用活動の更なる不公正化・不透明化」と「企業(特に中小企業)経済活動への影響」という課題を助長する可能性が高い。
産業界の要請を受け、選考開始時期の若干の修正をしつつ、就職・採用活動の公正化・透明化を推進する施策を追加し、後述する本質的な課題に対して産業界にも協力を求めることが必要である。
就職・採用問題の新たな視点と本質的な課題の提示
就活開始時期の設定は、就活が始まると学生が授業に出なくなるという課題に対処する方法であるが、就活開始時期の設定があるかぎり採用活動の不透明化や不公正化を助長し続けてしまうというジレンマがある。
就職・採用問題は、ジレンマを抱える就活開始時期設定という手法だけに頼るのではなく、新たな取り組みを開始することが必要である。また、そもそも企業の経済活動の一環である採用活動において、開始時期の設定等の介入をすることは望ましいこととは考えられない。
もともとの就活問題の本質は、学生にとって就活に比較して授業への優先順位が低いことに問題の本質がある。17卒以降の就職・採用活動における課題の解決方策は、学業への優先順位を高める環境づくりを産学官で推進しつつ、就職・採用活動開始時期の設定と採用活動の透明化・公正化を推進する施策を実施する必要がある。
本質的課題を踏まえた、時期問題だけでない中期・短期の方針
1 学業への優先順位を高める環境に向けての方策
・企業の採用選考での履修履歴(成績証明書等)の活用の促進
経団連の時期変更の要請を受け入れる際には17卒採用の「採用選考に関する指針」に明記することを条件にすることが必須。これは企業にとっても受け入れ可能で、最も効果的である。
・大学の指導・評価の質の向上の促進
文科省が推進しているアクティブラーニングの導入等教育方法の改善や産業界との関係を見通したカリキュラム編成と授業の実施に加え、教職員の資質向上のための組織的取組等を推進することが重要。
2 採用活動の透明化・公正化を推進する方策
・採用活動の実態調査活動
上記の2方策は、17卒採用での施策だけでなく中期的に継続的に施策を積み重ねる必要がある。
以上のことから、17卒採用においての実施する必要がある施策は、時期に関して産業界(経団連)の要請を受け入れるとともに、その条件として留学生・教育実習生への配慮は当然のこととし、本質的な課題に対しての学業への優先順位を高める施策を組み込みことが重要である。
●提言
就職・採用活動開始時期の「後ろ倒し」によって、オワハラなどの採用活動における
不透明化・不公正化といった社会課題が浮かび上がった。
そもそも、民間企業の経済活動である採用活動に対して、開始時期の設定などの介入をしていることは望ましいことではない。
就活時期の後ろ倒しの本来の目的は、学生が学業に集中できる環境づくりにある。
とすれば、学生が就職活動と学業活動の両立に努力するよう、学業への優先順位が高まる環境を創っていくことが最も重要である。そのためには産官学の連携が不可欠である。
つまり、産業側は学業への取組みを確認、活用する努力をし、大学側は教育・評価の質を向上させることである。
しかし、一方で必要な対処として、「就職・採用活動開始時期の設定」、「採用活動の透明化・公正化」を推進する施策を実施する必要がある。
・17卒就職・採用活動における具体的施策
1 「選考」開始時期を6月で経団連と調整を図る(「広報」開始時期は3月で変更しない)
但し、産業界には下記の要請をする
特に経団連との調整においては➊❷の「採用活動の指針」に明記することを条件にする
➊留学中、教育実習中の学生への選考スケジュールの配慮
❷応募時の履修履歴の取得及び面接等での活用
❸採用選考の公正化、透明化に協力
2 自民党内に就職・採用状況を把握し課題を検討する組織を作る
さいごに
提言にあたって、内閣府・文科省・経産省・厚労省、経団連他経済団体とも内々に調整をし、
現在の報道されている結論にいたることができました。NPO法人DSSの辻代表を筆頭にご協力いただいた皆様に感謝いたします。
編集部より:この記事は、衆議院議員の小林史明氏のオフィシャルブログ 2015年11月20日の記事を転載させていただきました(アゴラ編集部で一部画像編集)。オリジナル原稿をお読みになりたい方は小林ふみあきオフィシャルブログをご覧ください。