温暖化対策の勧め

金星探査機「あかつき」が周回軌道に乗ることに成功したニュースは日本の宇宙開発技術に新たなる歴史のページを加えました。この金星は地球と兄弟惑星で成分や大きさが似ているとされます。が、その金星は大部分が二酸化炭素に覆われ、温室効果が発生しています。その二酸化炭素の分厚い雲で地表温度は460度で風速360キロの突風が吹き荒れています。なぜ、地球と兄弟なのにこんな違いが出るのか、それを探求するのが「あかつき」の目的の一つでもあります。

フランスで開催されていたCOP21、正式には「国連気候変動枠組み条約締約国会議」という長くて覚えられない名前の会議ですが、パリ協定を採択しました。内容を細かく見ていけばまだまだ緩いところは多いのですが、大きな進展につながったと思います。97年の京都議定書は先進国だけの取り組みでしたが今回は参加する196カ国や地域が一定の縛りを受けるという意味で極めて意味がある決定でした。その主たる目標は「産業革命前と比べて平均気温の上昇を2度未満とし、できれば1.5度に抑える努力をする」というものです。

環境問題に繊細である欧州の1.5度の主張は希望的観測だったはずですが、文言にその努力目標として付け加えられたのは意味があったと思います。COP21がフランスで開催されたことが大きな力になったような気がします。

環境問題への対応はいろいろな分野があります。エネルギー源の効率化や改善、省エネ、リサイクルなど再利用の普及、森林資源の維持、生活様式の改善や人口増の抑制もあります。

例えばエネルギー源についていえば石炭はその悪玉の代表格ですが、ドイツは石炭がたくさん産出されることから石炭による電力発電に大きく頼っています。原発を止めたことは確かに称賛されましたが、結局、地球温暖化に対して無策であると叩かれたわけです。そのドイツも効率の悪い石炭発電所を潰す計画を発表するなどイメージ回復に努めています。

リサイクルについては日本も北米も厳しく、むしろそれが生活の中にしみこんできたようです。スーパーには大きなバッグをもっていくことが当たり前になりました。私もカナダのスーパーで並んでみている限り、ビニル袋を購入する人が以前に比べ明らかに減ってきています。ではここからもう一歩踏み込むにはどうしたらよいのか、知恵を出さねばなりません。一つにはテイクアウト系のフードの包材は何らかの改善の余地があるでしょう。ネットで購入した際に発生する大量の梱包の段ボールなどの改善の余地がある気がします。日本は以前から過剰梱包や包装が指摘されてきました。確かに包装に美的感覚を求めるところは伝統でもあるのですが、メリハリが欲しいところです。

個人的に思うのは街中のネオン。街は明るくきらびやかでありますが、何かやりすぎのような気もします。欧米は街中が基本的に暗いのですが、むしろ眩しがる傾向が強いと言った方がよさそうです。当地では普通の商店や施設のネオンでも最近は夜中にオートタイマーで消灯させたり一定の照度以下に落とすように仕向けています。事務所のトイレはモーションセンサーで自動消灯されたり、事務所の電気が一定時間になると必ず消えてしまい、残業する人はその度に電気をつけに行かねばなりません。不便ですが、そう思っているうちに陽のある朝早く来るとか、早く仕事を終えるといった工夫につながってきているようにも思えます。

最近の高層ビルは窓が開かないものが多いのですが、小窓があれば高層ビルの為に風が入り込みやすいものです。室温の調整から窓はないほうがよい、という発想だと思いますが、これもまた再検討する余地はあるのではないでしょうか?

地球温暖化問題は1,2年で目に見えて効果があるものではありません。何十年、何百年という時間を経て、その努力が報われる気の長い話です。しかし、金星の二酸化炭素をみると我々が努力をしなければこんなふうになるという姿を見せてくれている気がします。

長期的視線にたって人類一人ひとりの意識改革で1.5度という努力目標に一歩ずつ近づけなくてはいけません。

では今日はこのあたりで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 12月20日付より