野党が“野坂昭如”的では困る --- 天野 信夫

「妬み、嫉み、僻み」ーー先日亡くなられた野坂昭如さんは、この3つの「み」でコラムを書くと、かつてこう言ったそうです。私もその通りだと思います。

コラムニストやコメンテーターには責任がありません。責任と権限は表裏の関係ですから、責任がない人には権限も普通はありません。権限がない人は権限ある人を時に羨ましく思います。妬み嫉み僻みは、この羨望から生まれるのかもしれません。

権限がない自分の地位を慨嘆しながら、一方でまた責任がない自分の立場に安堵しながら、それが共にない人は共にある人を羨み攻撃し又は皮肉ります。権限は富を伴うことが多く、権限も富もないのが私たちの大半ですから、その攻撃や皮肉は多くの人の共感を当てにできます。これがコラムニスト、コメンテーターの拠り所となります。

コラムニスト、コメンテーターやツイッターでつぶやく人はそれでもいいでしょう。権限への批判と責任への追及は必要だからです。でも野党の政治家がそれだけでは困ります。たとえ野党の今は権限がないとしても、責任を持って対案を示して欲しいと思います。

大衆の妬み嫉み僻みを当てにして、「首相は赤坂で高級天ぷらを食べていたぞ」なんて言っているのはさもしい限りです。対案のない攻撃や皮肉はもう卒業した方がよいと思います。天国の野坂さんも、もしかしたら、そうおっしゃるかもしれません。

天野 信夫
無職(元中学教師)
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