政界だとLINEではゲスを極められない

2016年01月09日 09:00

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どうも新田です。長谷川豊氏が書いているように、週刊文春が報じた女性タレントとミュージシャンの不倫疑惑の一件は、企業の広報対応として、それなりに参照できるわけですが、本件が余計に目を引いたのは、LINEという旬のツールが決定的証拠になったこともある種の時代性なり、ニュース性なりを帯びてしまった部分も大きいですね。

まあ、でも、そもそも十数年近く前から電子メールが社会に普及しているし、そもそも紙の恋文だってあるわけで、世が世ならそれらが証拠物件として流出してしまうケーススタディはこれまでもございました。本質的には実は新しいことはないようにも思います。

夜の政界では文書は残さない


反面、政治案件のコミュニケーションに携わった経験が多少ある身としては、永田町界隈の住人、特にある一定世代以上の“危機管理”が周到な方々から見れば、今回の不倫疑惑は、「なにをやってんだか」と思われるんじゃないでしょうか。要は「物事は、昼の永田町ではなく夜の赤坂で決まる」世界なので、政治生命に決定的に関わるような重大なクラスの意思決定とかは、なるべく物証を残さないようにしたい人も多いわけです。

いかにも赤坂の料亭で派閥のボスたちが酒を片手に密談するみたいなシーンが浮かぶわけですが、ある先生なんかに話を聞いていると、昼間の国会内で、ある法案を非公式会合で、党派間で修正して行った際なんか、「どうしてこの文言になった」のか細部を詰めたプロセスの逐一なんかは交渉の席にいた当事者しか認識していないことも少なくないようです。

「500億円」が口約束で交わされる世界


まあ、それでもパワーゲームの成り行きでたまに表に飛び出てくる事故物件もあるのですが、最近だと記憶に新しいのが国立競技場建設費用に、東京都が500億円を負担するように、下村大臣(当時)と猪瀬知事(同)が「口約束」したとされる情報。この手のストーリーにうってつけのラスボス森さんの影がちらつくという展開で、発覚してから猪瀬さんが「森さんの勘違いだった」と釈明してはおりましたが、そのやりとりを記載した公文書は存在せず、後任の舛添さんも聞かされてなかったのは事実です(おときた都議のブログをご参照)。

まあ、数百億円くらいのやりとりが口約束で決まることも常態化しているんだな、と思わされてしまうわけですが、逆に言えば、文書でやりとりすることは良きにつけ、悪しきにつけ、目立ってしまうが故に何も残さないのは危機管理であると“本当のワル”は認識していると見ることもできるわけです。ついつい善意から、「クリティカルな内容なので、その部分だけは明記しておこう」と取り交わし、当事者だけで秘匿したはずの文書のコピーが翌日にはなぜか政治部記者が入手していたりなんて、よくあること。

誠実に揚げ足を取られるか、ゲスさを極めるか


あるいは、誰かを追い落とそうとして、怪文書を使い、「噂」を作るのもまた文書を作らない業界慣習を逆手に取った手段といえそうです。そういえば、10年ほど前、もう世間の人はほとんど忘れてしまっている某民主党の偽メール事件というのもありましたね。詳しくはウィキを参照してもらえればと思いますが、出所不明のメールを国会質問で使ってしまうというのは、「センシティブなやりとりを極力文書で残さない世界で、ひょこっと出現してきた意味」の考察が浅く、もしかしたら敢えて掴ませた“本当のワル”がいた可能性もあるわけです。まあ、人の良さが裏目に出たと好意的に解釈してもいいのですが、厳しく言うと、権力から離れている野党の脇の甘さはソフトクリーム並みとも言えます。

もちろん、先進国の中では最低クラスの公文書の管理ぷりなんかを見ても分かるように、そうした永田町の常識・感覚が世間離れしていて、民主主義の観点からは極めて不適当ですよ、そりゃ。このあたりは、ネットを社会人になる前から利用してきた、いまのアラフォー世代が政権与党の中枢で多数派になってくると、多少は変わってくるんでしょうけど、今しばらくは数百億円の血税の使い道を口約束で決めるゲスさを極めていないと、政界でのし上がっていけない現実もまだまだあるのではないかと、暗澹たる気持ちに成るこの頃です。

ではでは。


新田 哲史
アゴラ編集長/ソーシャルアナリスト
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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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