【映画評】不屈の男 アンブロークン --- 渡 まち子

2016年02月07日 06:00
不屈の男 アンブロークン
ローラ・ヒレンブランド
KADOKAWA/角川書店
2016-02-09


1936年のベルリン・オリンピックに陸上選手として出場したルイ・ザンペリーニは、第二次世界大戦がはじまり空軍に入る。だが彼をのせた爆撃機は太平洋上に不時着。サメや嵐に襲われながら、47日間の漂流の末、日本軍に見つかって捕虜として収容所に送られてしまう。そこでルイは、サディスティックな行いで皆から恐れられていた渡辺伍長に目をつけられ、執拗な虐待を受けることになるが…。

第二次世界大戦で日本軍の捕虜となった元オリンピック選手、ルイ・ザンペリーニの実話を描く「不屈の男 アンブロークン」は、人気女優アンジェリーナ・ジョリーの第二回監督作品だ。本作は、日本軍の非人道的な描写が問題視され、反日だと騒がれて日本公開が危ぶまれた経緯がある。精神のバランスを欠いた渡辺伍長が、主人公ルイに病的なまでに執着し虐待を繰り返す描写は、なるほど日本人としては見ていてつらいものがある。だが本作のテーマは、戦時下の日本軍の行いを糾弾することではないのは、映画を見れば明らかだ。

大海原での漂流サバイバル、過酷な捕虜生活、理不尽な虐待と、これでもかとばかりに逆境がルイを襲うが、彼は収容所で出会った仲間の「生き抜くことこそが復讐だ」という言葉から、不良少年だった自分に陸上競技への道をひらいてくれた兄の「耐え抜けばやれる。自分から挫けるな」という言葉を思い出して、文字通り、不屈の精神で耐え抜く。復讐ではなく赦しへと至るのは、キリスト教的精神を強く感じるが、むしろ一人の人間が、暗闇の中でも決して人生を否定せずに生き抜く普遍的な物語の印象が残る。現代人にルイと同じ精神力を求めても酷だろうが、戦争という巨大な暴力や理不尽の本質は、今も昔も変わらない。

ジャック・オコンネルが誠実にして強靭なルイを熱演するが、ルイの善と対局にある悪である渡辺を勇気をもって演じたミュージシャン・MIYAVIもすごい。逆境の合間の回想シーンで主人公の過去とキャラクターをわかりやすく整理したコーエン兄弟の脚本の上手さ、名手ロジャー・ディーキンスの陰影のあるカメラワークで、奥深い作品になっている。
【70点】(原題「UNBROKEN」)
(アメリカ/アンジェリーナ・ジョリー監督/ジャック・オコンネル、ドーナル・グリーソン、MIYAVI、他)
(祝!公開度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年2月6日の記事を転載させていただきました(画像はアゴラ編集部)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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