「劣化議員問題」を育休・不倫に矮小化させるな

2016年02月11日 18:00

国会議員の不倫育休問題は「根が深い問題」である

育休宣言を行ったと思ったら、子どもが生まれた傍から不倫疑惑が報道される国会議員。週刊誌が宮崎議員に最初から目をつけていたことは広く知られていましたが、自分の貧困な想像力を上回るスキャンダルが勃発したことにかなり驚かされました。

この問題はそもそも「議員育休」ではなく「国会議員の質の低下」を表す象徴として考えるべきです。筆者も育休の是非について論じるまでもなく、宮崎議員が育休宣言を出した時から「議員の質の劣化」の深刻さについて一貫して述べてきました。

<拙稿>
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男性国会議員の育児休暇は「学級崩壊」だ!
育休問題で感じる30~40代の社会的リーダーの質

現在、私たちが真剣に考えなくてはならないことは、国会議員の質の急速な劣化、つまり「劣化議員問題」なのです。まともに政策の勉強もせずに口先ばかりで愛国心を煽り立てるような議員が増えており、諸外国の政治家と比べて大いに見劣りする人材が国会の議席に座っています。議員の育休を語る以前に、この現状に背筋が寒い気分になるわけです。

昨今の若手議員が引き起こすくだらないスキャンダルは氷山の一角に過ぎません。なぜなら、このような下劣なスキャンダルが発生する原因は、議員個人の問題ではなく、有権者による選挙を通じた人材選抜が難しい選挙制度である小選挙区制度にあるからです。

小選挙区制度が作り出した「劣化議員問題」

小選挙区制度は当選者を実質的に政党が選ぶことができる制度です。政党の支持基盤が厚い地域で有力な政党の公認を得ることが出来れば、有権者が人材の質を実質的に問うことなく、公認された人物に国会の議席が用意されることになります。

つまり、当該選挙区の有権者の意向に関わらず、政党関係者の覚えがめでたければ国会議員になれるシステムが小選挙区制度です。ちなみに、小選挙区に比例代表制度が加わることによって、特定の選挙区の国会議員は有権者の投票結果に左右されずにほぼ確実に当選し続けることができます。

小選挙区制度では、世襲議員は公認を得ることが極めて容易であるとともに、他所から連れてきた軽い神輿である公募候補などが公認候補者に選ばれることも少なくありません。現行の小選挙区制度は政党公認までのプロセスが不透明すぎるため、小選挙区で重要となる公認選抜が適切に行われているとは言えません。

その結果として、社会人としての十分なキャリアもない人物が国政選挙の公認候補者として公認されるケースが増えており、一連の「劣化議員問題」が発生する温床となっています。

炎上目的の軽薄な有識者という知的言論の劣化

今回の不倫育休疑惑を通じて、もう一つ警鐘を鳴らしたいことは「炎上目的の軽薄な有識者」の言うことを真に受けるべきではないということです。

宮崎議員については、予算委員会委員という重責にありながら党内プロセスを経ずに「育休」を記者発表したこと、自分自身の政治活動・選挙活動と国会活動の区別がついていないこと、問題が大きくなった後の取って付けたような育休政策に関するブログへの書き込み、など、そもそも社会人失格であるエビデンスが盛り沢山でした。不倫疑惑自体はおまけみたいなものです。

それにも関わらず、有識者とされる人々が大人としての仕事手順について注意した自民党幹部をブログ上で激しく罵ってみたり、まるで子どものような言論で一部のインターネット上を賑わせていました。不倫疑惑発覚後には、キング牧師と不倫育休疑惑議員を並べて論じるものなど、有識者としての社会的な見識自体を疑うものすらあります。今回の問題は「議員育休」や「男性育休」の問題ではなく、国会議員だけでなく有識者の質の低さも露わにしたと思います。

炎上目的の記事は面白いわけですが、一時の感情を煽るポジショントークの言論に流されてはいけません。しっかりとしたプロセスを踏まえた行動ができる人を最初から支持するべきであり、目立たなくても淡々と仕事をこなしている国会議員や有識者を評価していくことが大事です。

有識者については公の立場がある人々の話ではないため、私たち自身が注意しながら有識者のポジショントークについて警戒していくことが重要です。

中選挙区制度による人材の質を問う選挙制度への回帰

筆者は人物重視の選挙制度に戻すべきであり、小選挙区制度から中選挙区制度への回帰を主張しています。もちろん人物重視の中には、候補者本人の品行から政策立案力まで当然に含んでいます。

小選挙区制度は中選挙区で常態化していた一部の利益団体による政治を排し、政党本位・政策本位の選挙制度に生まれ変わるための導入された制度でした。しかし、実際には政党助成金の大半は選挙活動に投入されており、政党の政策の質は向上しないどころか、国会議員の質が急速に劣化する事態を生み出しました。日本における小選挙区制度は根本的に見直す時期に来ていると言えるでしょう。

ただし、選挙制度を大幅に変更したものをもう一度元に戻すことは極めて難しいということも理解できます。そこで、自民党や民主党は「国会議員候補者の予備選挙」を行って公認候補者を選ぶべきようにすべきです。公認候補者の選考過程の透明性を高めることで自党の候補者の質を担保することが望まれます。

本件は、「育休」や「不倫」の問題に矮小化するのではなく、「劣化議員問題」について議論が始まるきっかけになれば良いと思います。

渡瀬裕哉(ワタセユウヤ)
早稲田大学公共政策研究所地域主権研究センター招聘研究員
東京茶会(Tokyo Tea Party)事務局長、一般社団法人Japan Conservative Union 理事
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