「宅急便の父」小倉昌男氏から学ぶ「人生の光と影」 --- 内藤 忍

2016年02月14日 13:31

久しぶりに素晴らしい本と出合うことができました。「祈りと経営: ヤマト「宅急便の父」が闘っていたもの」。第22回小学館ノンフィクション大賞を史上初の選考委員全員満点で受賞した話題作です。


主人公の小倉昌男氏と言えば「クロネコヤマトの宅急便」の生みの親で、晩年にはヤマト福祉財団に私財を投入し、スワンベーカリーの経営をはじめ身障者福祉に大きな功績を遺した偉大なる事業家です。

実は小倉氏は、ヤマト運輸在職中は福祉については、まったく関心を示していませんでした。ところが、妻の玲子の死後に修道院や玲子の出身地へクリスチャンとして多額の寄付を行い、その2年後に44億円の私財を投じて福祉財団を設立しています。その「豹変」ともとれる行動に疑問を持ったライターの森健氏の緻密で冷静な取材が積み重ねられて本書が完成しています。

小倉氏が抱えていた苦悩が一体何だったのかは、ここで書いてしまうよりも是非本書を読んで欲しいと思います。

読後に感じたことは、人生には、その人にしかわからない「光と影」があるということです。

父から引き継いだ運送事業を、運輸省とやり合い、宅急便サービスでは郵政省と裁判までして正面対決、そして福祉事業でも厚生省への不信と常に官と戦い、弱いものの気持ちに立った経営を続けてきた切れ者経営者という側面ばかりがクローズアップされています。しかし、その裏には家族関係に悩みを抱える「父」としての側面があったのです。

妻と娘の確執、そしてその根底にあった精神の病。妻との予想もしなかった別離。そして、最後にやってきた孤独。様々な出来事が、小倉氏を精神的に追い詰めていく中で、どうやって生きる道を探していったらよいか。そこには偉大なる事業家ではなく、1人の人間としての小倉氏の生き様が見えてきます。

小倉氏の晩年は、楽しいこともたくさんあったと同時に、辛く苦しいことも重なっています。人生の成功者、経営の神様と崇拝されるような人であっても、周囲の人たちとの人間関係、自分自身の健康、人生の目的や目標といったものによって、その歯車は思い通りに回らなくなり、大きく狂ってしまうことがあるのです。

人生についてより深く考えてみたい、今持っている悩みをどう解決して良いかわからない。そんな人に一読をお薦めします。

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※内藤忍、株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2016年2月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。


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