地方議会報酬ランキング・名古屋では655万円増案

800万だと安くて、1,454万だと高いのか?

名古屋市議会に、これまで暫定的に800万円になっていた議員報酬を1,455万円に増やす条例案が出されて話題になっているようだ。
名古屋市議会のHPを見ると、2015年度の議会開会予定では議会開催は115日間。報酬額を議会開催日で割ると1日7万円だったものを12万6千円にしようといっていると考えると、市民の皆さんにも分かりやすいかもしれない。
ただ、議員の仕事はそんなに単純に測れるわけではない。議会開催日以外にも様々な形で仕事をしている議員もいるからだ。
今回は、この名古屋市会の問題を例に、自分の住んでいる自治体の議員はいくらもらっているのか、それは高いのか低いのかを考えるキッカケにしてもらいたいと思う。
名古屋市の場合、単純計算すると、議員定数が75人なので、1人当たりの議員報酬が800万円であれば6億円。1,455万円になると10億9,125万円と、約5億円の増になる。
もっと言えば、今回の条例案では半減されている議員報酬を約1,630万円に戻した上で15%削減する案であり、いつの間にか、この1,630万円に戻っているということにもなりかねない。
ただ、議会にかかる費用は、こうした計算で出てくるものだけではない。議員の場合、報酬以外にも一時期話題になった政務活動費などもあるほか、議会運営に関わってくる費用もある。
議員報酬800万円時の名古屋市でも、26年度決算における議会費は18億384万3,000円で名古屋市の全体予算の0.2%を占めている。こうした費用もかかってくることもまた忘れてはならない。
議会費にかかわらず、全自治体の決算状況については、一枚の紙にまとめられた「決算カード」を総務省のHP( http://www.soumu.go.jp/iken/zaisei/card.html )から見ることができる。こうしたものも一度見てみると面白いのではないかと思う。

 

日本には34,130人も地方議員がいる

図表1:都道府県別地方議員数

160315コラム 図表1

グラフはこちらから

最新の2014年12月のデータでは、地方議員の定員については、全国に都道府県議会議員が2.733人、市議会議員が19,024人、区議会議員が906人、町村議会議員11,467人と、合わせて34,130人もいる。衆議院475人、参議院242である国会議員と比べても圧倒的に多いということが分かる。

最も議員数が多かったのは、東京ではなく北海道で2,497人だった。次いで東京の1,821人、3位が埼玉で1,396人、4位が千葉で1,310人、5位が愛知県の1,295人と続いた。以外にも神奈川県が900人で12位だった背景には、政令市が3つもあり自治体数が少ないことなどが影響しているのではないかと思われる。ちなみに最も議員数が少ないのは鳥取県で317人だった。
地方議員というのは、こんなに必要なのだろうか?

 

地方議員報酬ランキング1位は横浜市の1.539万円。平均でも645万円

図表2: 議員報酬年額自治体ランキング(市議会議員・区議会議員)

160315コラム 図表2

グラフはこちらから

今回の名古屋市の報道なども受け、多くの方が「地方議員って一体いくらもらってるんだ?」というみなさんの素朴な疑問や関心に応えるため、単純計算ではあるが、全国の全市区議会議員の月額報酬を12ヶ月分にして、議員のボーナスとも言える期末手当を支給割合から導いて加え、議員報酬年額を推計してランキングにしてみた。
最も報酬が多かったのが、横浜市(神奈川県)で1,539万円だった。次いで、神戸市(兵庫県)が1,493万円、3位が福岡市(福岡県)で1,329万円、4位が京都市(京都府)1,305万円、5位が広島市(広島県)で1,303万円と並んだ。23区の中でトップが9位の江戸川区(東京都)1,235万円だったというのも驚いたが、14位の千葉市(千葉県)1,178万円までに入った自治体は、すべて政令市と23区だった。
とくに政令市は高い傾向にあり39位の新潟市(新潟県)の986万円までに名古屋市以外の全19政令市が入った。23区については、思ったほどは高くなく、23区中2位は49位の千代田区で964万円、50位の大田区が961万円、56位の葛飾区が952万円、58位の足立区が950万円と続き、23区で最も安かった中野区は116位で885万円だった。
一般市で最も高かったのは、15位の東大阪市(大阪府)で1,113万円。次いで16位の西宮市(兵庫県)で1,106万円、17位の姫路市(兵庫県)1,103万円、18位の宇都宮市 (栃木県)1,079万円、20位の倉敷市(岡山県)1,079万円、21位の茨木市(大阪府)1,066万円、23位 の和歌山市(和歌山県)1,063万円、24位の高槻市(大阪府)1,059万円、25位の寝屋川市(大阪府)1,059万円、27位の岐阜市(岐阜県)1,043万円と続いた。業界内で議員報酬や手当などについては「西高東低」などと言われることがあるが、まさにそんな結果であり、とくに大阪府内の自治体についてはベスト10内に4つも入っており、大きな特徴と言える。
ちなみに筆者も議員を務めた市川市(千葉県)も43位の972万円、市役所で部長職を務めた松戸市(千葉県)も66位の941万円と、全国の中では極めて高い自治体の中に入っていると言えるようだ。
逆に、全国の市議会議員の中で最も報酬年額の低い自治体についてもワースト10だけ紹介しておこう。
今回の調査対象とした813自治体の中で最も低かったのが、財政破綻自治体としても有名になった夕張市(北海道)の260万円だった。報酬の安い自治体は以下、812位のにかほ市(秋田県)329万円、811位の北秋田市(秋田県)346万円、810位の阿久根市(鹿児島県)357万円、809位の白岡市(埼玉県)357万円、808位の阿蘇市(熊本県)373万円、807位の胎内市(新潟県)378万円、806位の室戸市(高知県)378万円、805位の行方市(茨城県)382万円、804位の垂水市(鹿児島県)390万円と続いた。

今回は文字数の関係で、ここまでとしたいが、次回は、議員の仕事内容についても書いていくので、単に「議員の報酬を下げろ」ではなく、「議員の仕事とは」とその内容についても関心を持ってもらいたい。

 

高橋亮平

高橋亮平(たかはし・りょうへい)

中央大学特任准教授、NPO法人Rights代表理事、一般社団法人生徒会活動支援協会理事長、千葉市こども若者参画・生徒会活性化アドバイザーなども務める。1976年生まれ。明治大学理工学部卒。26歳で市川市議、34歳で全国最年少自治体部長職として松戸市政策担当官・審議監を務めたほか、全国若手市議会議員の会会長、東京財団研究員等を経て現職。世代間格差問題の是正と持続可能な社会システムへの転換を求め「ワカモノ・マニフェスト」を発表、田原総一朗氏を会長に政策監視NPOであるNPO法人「万年野党」を創設、事務局長を担い「国会議員三ツ星評価」などを発行。AERA「日本を立て直す100人」、米国務省から次世代のリーダーとしてIVプログラムなどに選ばれる。テレビ朝日「朝まで生テレビ!」、BSフジ「プライムニュース」等、メディアにも出演。著書に『世代間格差ってなんだ』、『20歳からの社会科』、『18歳が政治を変える!』他。株式会社政策工房客員研究員、明治大学世代間政策研究所客員研究員も務める。

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