“憲法9条さえ守っていれば日本は平和である”

2016年03月25日 06:00

今回は書評です。

百田直樹氏の「カエルの楽園」という本をなんとはなしに読んでみたのですが、いわゆる「朝日新聞論法」というものを強烈に皮肉っていてなかなか面白い本でした。(なお百田氏の本を読むのは初めてです)

カエルの楽園
百田尚樹
新潮社
2016-02-26


ざくっと物語の導入部分を紹介すると、以下のような感じです。

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ストーリーは突如現れた凶悪なダルマガエルに国を荒らされ、安住の地を求めて60匹のアマガエルが国を捨てて旅に出るところから始まる。しかしながらすぐには安住の地は見つからず旅は過酷なものになる。長旅の過程ではヘビやイワナやイタチなどの天敵に襲われ、次々とアマガエルの集団の数は減っていく。

途中住みごこちの良さそうな沼や池を見つけても、そこはすでに体の大きいアカガエルやトノサマガエルに占拠されており、彼らは同じカエルでありながら体の小さなアマガエルを助けるどころかむしろ食用にする。残ったわずか二匹のアマガエル”ソクラテス”と”ロベルト”も、ウシガエルに襲われてもはや万事休すか、と諦めかけたところ這々の体で辿り着いたのがツチガエルの国「ナパージュ」だった。

「ナパージュ」は平和で争いもなく、外から来たアマガエルにも優しく、豊かでまさしく二匹が求めた「平和の楽園」のように思えた。なぜこんなにもナパージュは平和なのか、不思議に思った二匹のヒキガエルはその秘訣を母国に伝えようとナパージュについて調べ始める。するとナパージュには

 

「①カエルを信じろ ②カエルと争うな ③争うための力を持つな」


という国民が共有する「三戒」の教えがあることを知る。ナパージュのツチガエルは口々に「三戒があるから争いは起きようがない。だからナパージュは平和なんだ。」と説明する。ロベルトは素直にこの「三戒」の素晴らしさに感銘を受けて、それを説く進歩的なもの知りカエル”デイブレイク”に心酔してしまう。

デイブレイクは日夜集会を開き、その集会では『謝まりソング』が合唱されていたが、その風景にどうにも納得がいかないソクラテスは「三戒の教え」ができあがった背景を調べていく。するとそこには複雑な事情が絡んでいることを知り、ナパージュ周辺を警備する老いた鷲”スチームボード”や、周辺のウシガエルも恐れる強力なツチガエル”ハンニバル”の存在を知る。

三戒の矛盾点に疑問がつのってきたソクラテスだが、その疑問をデイブレイクぶつけると「三戒によってナパージュは守られてるんだ。それを疑ってはいけない。」と半ば脅しも含め諭される。ますます三戒に疑問を覚えるようになっていたソクラテスだがある日南の崖からウシガエルがナパージュに侵入してくると国は大混乱に陥り・・・

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続きは是非読んでいただければと思うのですが、いうまでもなくこの「カエルの楽園」は現代日本を風刺した物語です。ざっと上で登場したカエルを整理すると

・ ナパージュ =日本
・デイブレイク =朝日新聞
・スチームボード=アメリカ
・ ウシガエル =中国

という感じになりますが、他にも百田尚樹自身と思われる「嫌われ者のハンドレッド」やsealdsをモチーフにした「フラワーズ」などの団体も出てきて、「あー如何にもこういうことやりそうだな」とニヤリとさせられる場面が沢山あります。

この本では「朝日新聞論法」というものが本当によく整理されまして、個人的には前々から「憲法9条さえあれば日本は平和」的な主張をする人の頭の構造がとても不思議だったのだですが、だいぶその疑問が解消されました。ということでこの本をベースにざっと「朝日新聞論法30」というものを整理してみました。

Flag_of_the_Asahi_Shinbun_Company

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Q1:何で日本は戦後ずっと戦争に巻き込まれず平和でいることができたの?
A1:それはね日本が憲法9条で戦争を放棄しているからだよ。

Q2:でも最近中国が日本の領土の近くに迫ってきているけど大丈夫なの?
A2:大丈夫。日本が戦争を放棄して自分から攻撃はしないんだから、争いになりようがないよ。

Q3:でも日本が攻撃しなくても中国が攻撃してくることはあるんじゃないの?
A3:何を言っているんだい日本国憲法には「平和を愛する諸国民の公正と信義を信頼して」と書いてあるじゃないか。中国人のことをもっと信頼して話し合いをしないと。

Q4:でも中国は内部では少数民族にひどいことをしているって話だよ?話し合いで理解してくれるの?
A4:それは日本には関係ない話だよ。日本の場合は平和を愛しているから、中国も平和を愛してくれるよ。

Q5:じゃ日本さえよければいいの?
A5:そうだよ。日本がよければいいじゃないか。余計なことを言って中国を怒らせたら大変でしょ。日本が平和だったらそれでいいじゃないか。

Q6:何かの拍子に中国が怒ったらどうすればいいの?
A6:謝ればいいんだよ。怒らせないのが一番。とにかく謝ればいいんだよ。そうしたら争いにならないじゃないか。この際、怒ってなくても謝ることにしようよ。

Q7:一体何に対して謝るの?
A7:第二次大戦以前に日本がしたことについてだよ。

Q8:具体的に何について謝るの?
A8:それは向こうが決めることだよ。向こうが怒ったら謝ればいいんだよ。そうしたら争いにならないじゃないか。

Q9:でも日本が謝られるべきこともあるんじゃないの?
A9:広島と長崎に原爆落とされて何十万人も虐殺されたけど、それも日本が間違ったことしたからだよ。

Q10:何十万人も虐殺されるほどの間違いって、どんな間違いしたの?
A10:戦争をしたんだよ。とにかく戦争はいけないんだよ。

Q11:戦争をしたのはアメリカも一緒じゃないの?
A11:うんだから、日本はアメリカの分も謝っているんだよ。「安らかに眠ってください。過ちは繰り返しませぬから」と。

Q12:言っていることがよくわからないのだけれど。何で日本人がアメリカ人の分も謝っているの。数十万人も虐殺されたのに。
A12:とにかく戦争はいけないからだよ。それに日本は特に戦争で残虐なことしたんだよ。

Q13:残虐なことって一体日本は何したの?
A13:史実はよくわからないけど、南京で30万人くらい虐殺したり、韓国で数十万人の女性に強制的に売春させたりしたんだよ。

Q14:それは本当のことなの?
A14:本当かどうかは大事じゃないんだよ。怒ってることが大事なんだよ。怒ってるから謝ればいいじゃないか。そうしたら争いにならないじゃないか。

Q15:日本人はいつまでも謝り続けなければいけないの?
A15:そうだよ。先祖の罪は自分の罪だよ。だから先祖の罪は末代まで語り継ぐよ。本当かどうかわからないけど、語り継ぐよ。

Q16:でも冷静に考えて日本が平和だったのは憲法9条のおかげじゃなくて、世界最強のアメリカ軍の基地が日本にあるからじゃないの?
A16:そんなことないよ、むしろ在日米軍は日本を戦争に巻き込むガンだよ。米軍が出て行ったときが日本は本当の意味で平和になるんだよ。だから早く米軍には出て行って欲しいよ。

Q17:自衛隊の役割も大きいんじゃないの?
A17:そんなことないよ、自衛隊があるから中国も日本を警戒するんだよ。自衛隊がなければ中国も日本を警戒しなくなって平和になるよ。

Q18:でも最近はしょっちゅう中国の軍艦が日本の領海周辺をうろついてて、自衛隊が対峙しているって聞くよ?
A18:日本の領海の近くに中国の軍艦がきたからって、別に日本に領土的野心があるとはかぎらないじゃないか。

Q19:でも自衛隊がいなければもっと日本の近海まで中国の軍艦は迫ってきたんじゃないの?
A19:そんなことないよ。中国の軍艦は憲法9条を思い出して帰ったんだよ。それにもし憲法9条がなかったら、野蛮な自衛隊は中国軍に手を出して戦争になっちゃったに違いないよ。やっぱり憲法9条だね。

Q20:でもさ、もしもね、中国の軍艦が大挙して日本の領海に迫ってきたらどうするの?
A20:「諸国民の公正と信義」を信じているから大丈夫だよ。中国人は日本人と違っていい人ばかりだから話し合えばみんなきっと帰っていくよ。

Q21:それって怖くないかな?念のため最強の米軍と安保協定を結んでおいたほうがいいんじゃないかな。
A21:うーん、憲法9条があると言っても万が一にも争いが起きてしまうかもしれないから、それくらいのことはしてもらってもいいかもね

Q22:それってなんかおかしくない。憲法9条と日米安保協定って矛盾するんじゃないの?
A22:そんなことはないよ。そもそも米軍がいるから中国軍を呼び込んでしまうんだよ。だから米軍がいること自体が悪いんだよ。米軍がいなくなれば憲法9条だけの平和な世界が訪れるんだよ。

Q23:ところで米軍が「日本のことを守ってあげるから、自衛隊も米軍の活動手伝って」といってきたらどうするの?
A23:絶対にダメだよ。憲法9条に反するからね。「戦いを前提にした協定」なんて戦いを呼び込むだけじゃないか。

Q24:それで米軍が日本から出て行ってしまったら、危険じゃない?
A24:そんなことはないよ。日本がようやく独立したってことで喜ばしいよ。そのときはややこしいことは考えずに憲法9条一本で日本は守られることになるよ。

Q25:でも米軍がいなくなったら怖いものがなくなって、いよいよ中国が周辺の島々を占領してしまうんじゃないの?
A25:例えそうなっても、こちらから攻撃しなければ戦争にはならないよ。

Q26:自衛隊はどうするの?
A26:この際だからなくしてしまえばいいよ。自衛隊が下手に攻撃したら、戦争になっちゃうからね。

Q27:自衛隊までなくなったら、中国軍が日本本土を占領しに来ちゃうかもしれないじゃないか?
A27:その時は無条件降伏だよ。そうしたら戦争にならず平和的解決になるよ。

Q28:そんなことになったら、日本人は中国の中の少数民族のようにひどい扱いされてしまうかもしれないじゃないか?
A28:戦争になって死ぬよりずっといいじゃないか。それに我々は「諸国民の公正と信義」を信じているから中国はそんなにひどいことはしないよ。

Q29:そうしたら日本が中国になっちゃうじゃないか?
A29:発想の転換だよ。そうしたらもっと日本人と中国人が理解しあって仲良くなれるよ。Let’s売国だよ。

Q30:結局憲法9条って日本のこと守れないんじゃないの?
A30:何を言ってるんだい。戦争さえしなければたくさん死人がでないんだから、奴隷になろうとなんだろうと構わないじゃないか。

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と、まぁこんな感じです。これはこれで一つの完成された論理体系であるとは感じた次第です。。。まぁ私は全く共感しないのですが。。。

カエルの楽園
百田尚樹
新潮社
2016-02-26

 

といことで、なかなか憲法というものを考えるに面白い題材を提供してくれる本ですし、とても読みやすくまとまっているので、ぜひ皆さん暇なとき読んでみてください。

ではでは今回はこの辺で。


編集部より:このブログは「宇佐美典也のblog」2016年3月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は宇佐美典也のblogをご覧ください。

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