セブン鈴木会長を「老害」と決めつける「思考停止」

セブン&アイ・ホールディングスの鈴木会長は、ついに経営の一線を退くことになりました。しかし、小売ビジネスの世界に革命をもたらした日本経済を代表する名経営者の1人であることは間違えありません。今回の引退に至る経緯を「老害」の一言で片付けてしまうのは、残念な思考停止だと思います。

世襲ではなく、自ら「ゼロから1を生む力」を持ち続けた名経営者からは、学ぶべきことがたくさんあります。

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鈴木会長と同世代で、日本を代表する名経営者の1人に稲盛和夫さんがいます。京セラを世界有数の企業に育てあげ、最近では日本航空の再建も手掛けて成功させました。そんな稲盛さんが日経電子版のインタビュー記事で、興味深いことを語っています(写真も同サイトから)。

自分の人生には失敗は無かったというのです。

しかし、少年時代には大病にかかったり、受験も失敗、就職も理想の会社に入ることはできなかったと聞けば、人生は挫折の連続だったとしか思えません。失敗したことが無い。そう言い切る理由は、極めてポジティブです。

「失敗したことがないというと、そんなバカな、人間誰しも失敗はあるでしょ、とみんないう。私は失敗を失敗として終わらせたくなくて、食らいついて成功するまでやる、あきらめない、だから失敗の経験はありませんと。そういうわけです」

失敗したり挫折したとしても、そこで諦めてしまったら、そこで終わりです。何とか現状を改善していこうという執念のような気持ちこそ、失敗や挫折を成功に変える最大の要因だということです。

失敗したことが無いという前向きな思考と並行して、稲盛さんがいつも心に持っているのが「謙虚にしておごらず、さらに努力」という、驕りを持たない姿勢です。

成功するまで諦めないで努力するという執念と、成功してからも常に謙虚で、努力を怠らない。

凡人にはマネの出来ないストイックで、誇り高い人生との向き合い方だと言えます。

ビジネスの世界でも、それ以外の世界でも、何かを成し遂げた人には、必ず学ぶべき点があります。神様ではありませんから、もしかしたら欠点もあるかもしれませんが、良い点だけを見るようにすれば、そこから多くの学びが得られます。

高齢の政治家や経営者が、トラブルや不祥事を起こすと、すぐに「老害」と決めつける人がいます。問題自体は解決すべきですが、彼らが長年培ってきた人生を生きる知恵に対しては、もっと尊敬と評価をすべきではないかと思います。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2016年4月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。