「トランプ大統領」とIoTで日本は輝きを取り戻す

2016年05月01日 06:00

アメリカ大統領選でトランプ旋風が吹き荒れています。孤立主義・排他主義を煽り中下流層のハートをがっちり掴んでいます。日本も含めて世界の人々は、軍事・外交・経済に関する彼の極端な言動に戦々恐々としています。

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ですが、もしトランプが本当に大統領に就任したら、私は、日本にとっては意外に差し引きプラスの効果が大きいのではないかと思いますので、概略ご説明させていただきます。

「トランプ大統領」が誕生する理由

アメリカの中下流の人の気持ちになって、よく考えてみましょう。以下は、過去35年の名目GDPの推移です。アメリカと、「アメリカの作った世界秩序に只乗りして、「不当に為替を操作して」輸出で稼ぐ宿敵」日本・中国・ドイツのGDPの合計を比較します。

名目GDP(10億USD)の推移

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1980年から2000年までは、この3カ国が束になっても、まだアメリカが2−3割も上回っていました。圧倒的に優位だったのです。アメリカは世界の秩序を維持するために、軍事・外交・経済システムで膨大な資金を拠出していました。ある意味カジノの胴元です。でも、自分の実入りもよくて、カジノのお客さんよりは胴元のほうが儲けが多かった訳です。

ところが2010年には見事に追いつかれてしまい、2015年にはアメリカを3%上回ってしまいます。お客さんの儲けが上回ってしまったわけです。そこで、アメリカさんはぶちきれるわけです。「お前らただ乗りしてないで、きちんと所場代払えと」

それでは、もっと時代を遡ってみてみましょう。

主要国のGDP比率の推移

出典:Hirobay氏の独り言ウエブサイト「衰退する経済大国日本」 http://www.geocities.jp/yamamrhr/ProIKE0911-117.html

注:2000年以降は推計値と思われる。

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もともと、アメリカが「成り上がった」のは第一次世界大戦でヨーロッパが疲弊したからです。そして、第二次世界大戦では本土が戦場になることもなく、軍需産業で丸儲けし、アジアと欧州が疲弊して、インフラ投資を復興する必要があったので、圧倒的な優位に立ちます。IMFブレトンウッズ体制でヘゲモニーを握ります。

誤解を恐れずに言えば、アメリカは戦争する度に大もうけして国民が豊かになっていきました。第二次世界大戦以降も、朝鮮戦争があり、ベトナム戦争がありました。

戦争の度に武器輸出と戦後インフラ復興で莫大な有効需要が創出され、アメリカの経済はガンガン廻ります。そこでは機会の平等が保証され、靴磨きでも成功すれば億万長者になれた、アメリカ国民でありさえすれば「アメリカンドリーム」の挑戦権を有するという「期待」が国民の生きるよりどころだったわけです。国も栄え、自らも栄える。精勤して富を成すことを良しとする、プロテスタントの教義がそれを支えます。

1910年から70年代までは、将来の成長期待も高く、実際に豊かになっていったわけです。資本主義経済という賭場の胴元としてハッピーハッピーだったのですが、1970年代に新参者が「場を荒らしに」やってきます。それは誰かというと、

日本です。

激烈な貿易摩擦がおこります。西ドイツも参入してアメリカの製造業は大打撃。GM(自動車)やGE(電機)といった工場に勤めていたアメリカの中流階層はレイオフされ、リストラされていきます。東芝のラジカセをハンマーで叩くわけです。

で、憎き日本をプラザ合意で超円高にして、バブル崩壊させて、「ざまあみろ、沈めてやったぜ」と思っていたら、今度はグローバル経済の盟主、中国がムクムクと台頭してきます。そして、2015年には宿敵3カ国連合にGDPで抜かされます。アメリカ人の堪忍袋の緒が切れる訳です。

一方、アフガン・イラクと戦争が起きるのですが、これまでのように「戦争終わる>復興>アメリカに注文がやって来る」という勝利の方程式が成り立たなくなります。恐るべしイスラム教と憎悪が高まります。

しかも、アメリカで稼いでいる企業はITや金融など中低所得層の雇用を生まないところばかり。国内での貧富の格差が拡大・固定化します。アメリカンドリームは何処へ。

まとめると以下の表になります。縦軸が成長期待、横軸が所得水準です。1940−50年代はまだ所得水準も低かったけれど、全体のパイが拡大していて機会の平等も保証されていたから国民が明るかった。で、朝鮮戦争・ベトナム戦争を経て実際中流が豊かになった。しかし、今やグローバル経済の荒波で、所得も親の世代より減ったし、未来の希望もない。こういうことです。

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そこでトランプ(サンダースも)が颯爽と登場。

「お前らの気持ちはよおく解った。俺が金融・ITで稼いで儲けを独り占めにしている金持ち連中を叩きのめしてやる。為替操作してダンピングしてくるドイツ・日本・中国もただじゃおかねえ。儲からない戦争相手のイスラムとは縁を切る。」

それは、人気が出ますよね。何せ、民主主義では一人一票の参政権の平等だけは保証されていますから。負け組が大勢を占めれば、現在の政治・外交・経済システムを否定する政権が誕生します。たとえトランプが敗れたとしても、この流れは止められません。

ハーバード大学の実施した最新の世論調査において、アメリカ合衆国の若者たちの51%が資本主義を支持していないという驚くべき結果が出たそうです。アメリカはこれから衆愚政治に陥るでしょう。

「トランプ大統領」は何をするか?

では、トランプ的な誰かが政権についたら、彼(彼女)は何をするでしょうか。

イスタブリッシュメントは皆そっぽを向き、政権基盤が中低所得層にしかないわけですから、「大衆迎合主義」をとるでしょう。

まず一番に、最低賃金を思いっきり引き上げると思われます。政府支出を最小化を唱える「TeaParty」がいるので、公的な社会保障は拡充せずに、企業に負担を押し付けるでしょう。

次に、金融ビジネスで稼いでいるニューヨークをバッシングすると思います。給与所得や配当所得に上限を設けて格差是正に動くでしょう。何せ、彼らは票数では圧倒的マイノリティーですから、魔女狩りよろしく、WallStreetはいじめられるでしょう。

すると企業はどう対応するでしょうか。今のIoT化、AI化の設備投資を加速して、単純労働者をできるだけ減らそうとするでしょう。労働生産性は格段に向上する。そこでは、「安かろう悪かろう」の規格品よりは、セキュリテイや安全性スペックの高いシステム(例えば自動運転車)を必要とされる「第四次産業革命」が起きるでしょう。

また、既存の銀行システムから、効率的な金融技術(Fin Tech)への移行が進むでしょう。

「ばらまき」で下流層の収入はある程度底上げされ、格差もある程度縮小するでしょうが、中流層の復活にはいたらないでしょう。AI化でホワイトカラーの仕事は機械に置き換わっています。

一方で、彼らは強い所有欲求を持たないでしょうから、分散・ローカルを基本とするシェア経済が進行するでしょう。低水準で収入と消費が見合うことになります。

グローバル経済からシェア経済へ

こうした新しいパラダイムへの適応力が高い国はどこでしょうか?これはもう圧倒的に

日本です。

なぜかというと、日本はそもそもこの20年グローバル経済に乗り遅れて停滞していたわけです。周回遅れでシェア経済を生きていたら、世界が寄り添ってきた格好です(拙稿「グローバル経済の終焉とシェア経済の行方」)。

それに、好む好まざるとに関わらず、少子高齢化が進み、現業労働力の確保ができないわけです。だから、たとえガラパゴス化したとしても、自国のインフラをIoT化していかないと経済が廻っていかないのです。

そこに、アメリカが同じ土俵に乗っかってくれたら、これは御の字というわけです。

日本のライバルはアメリカ西海岸のシリコンバレーと、ドイツですね。荒っぽいグローバル経済でうまく立ち回っていた韓国は自国のインフラが日本ほどは高度化されていないし、市場が小さすぎるので圧倒的に不利です。中国も厳しいでしょうね。高度なインフラと市民社会の成熟がなければIoTは廻りません。

こういうシナリオは結構あるのではないかと思うのです。期せずして、アメリカの中下流層の不満が日本に福音をもたらす。日本はもう一度輝き出すでしょう。

Nick Sakai  ブログ ツイッター

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