国債は「差し引きゼロ」なの?

2016年06月14日 07:00

民進党の江田憲司さんがこんなことを書いています。

国債を発行するということは、国民からすれば国債を買う、すなわち「支出」、国(政府)からすると「収入」。結果、差し引きゼロということになるわけです。ただし外国人が半分以上買っている場合は、国のお金が外国に流出するわけですから、「差し引きゼロ」とは到底ならない。でも、日本の場合は、今でも90%以上は内国民(日本人)が国債を買っている。だから、まだまだ大丈夫なんですね。

国債をいくら発行しても差し引きゼロなら、国の歳出をすべて国債でまかなう「無税国家」ができますね。外人が買っても、彼らのお金が日本に流入してくるんだから、何の問題もありませんが、彼らは買いません。日本国債の金利がリスクに対して低すぎるからです。

では日本の銀行はなぜ買うんでしょうか? それは為替リスクなしで確実に金利が取れたからです。為替レートは1日で5%ぐらい平気で動くので、海外の金利が高くても為替差損でパーになることが多いのですが、円建ての国債なら確実に0.1%ぐらい金利が取れました。銀行は1回で1兆円ぐらい国債を買うので、金利が0.1%でも10億円ですから、リスクの大きい小口の企業貸し出しより有利なのです。

でも最近のようにマイナス金利になると確実に損しますから、図のように銀行は国債を売るようになりました。日本の銀行も愛国心で国債を買っているわけじゃないので、損したら売ります。日本人か外人かなんて関係ありません。

ビジネスをやったことのない江田さんにはわからないでしょうが、債券が「財産」であるためには、その担保が必要です。普通の会社は不動産などを担保にしますが、国の場合は将来の税収が担保です。普通の国は増税できるので心配ないのですが、日本が今の借金を消費税の増税で返そうとすると、30%ぐらいに上げないといけません。

日本の消費税は1989年に3%で始まってから、10%に上げるまでに30年もかかっています。このペースで30%まで上げるには、あと30年以上かかるでしょう。そのころには日本の人口は半分にへり、その半分が年金をもらいます。国の借金は3000兆円ぐらいになり、国民負担率(税金+社会保険料)は7割を超えます。

そんな負担を国民(みなさんの世代)が認めるでしょうか? いやですよね。だからこの負担増は、いつか国民の反対で止まります。つまり国債が返せなくなる日が来るのです。これは債務不履行(デフォルト)になるということではありません。国債の買い手がなくなって金利が上がり、インフレになって実質的な借金が大きく目減りするのです。

日本もそうなったことがあります。戦前の軍部も江田さんのように「国債は国民の債務なると共にその債権なるを以て何ら恐るるに足らず」といって戦時国債を乱発しましたが、戦争に負けると300倍以上のインフレになり、軍部の使った借金は踏み倒されました。

つまり今のお年寄りが年金で消費した国債を将来世代が税金で返すときは「差し引きゼロ」ではなく、世代間の大幅な所得移転が行なわれるのです。税収が足りない分はお札を印刷するので、インフレになります。歴史的にも国の借金がここまで大きくなると、インフレで踏み倒すしか方法はない、とピケティやロゴフなどの有名な経済学者もいっています。

江田さんの頼りにしていた日本の銀行も、国債を売り始めました。あとは彼らの売る国債を日銀が全部買い取って塩漬けにするしかありませんが、そのとき金利が上がって国債が暴落したら、銀行だけでなく日銀も大きな評価損をかかえて倒産(債務超過)します。するとどうなるのか…これはまた別の回で。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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