原発30キロ圏内で語る「再稼働は、日本の未来への大英断」

2016年07月02日 09:30

内原発の再稼働が、鹿児島県知事選や参議院議員選挙の大きな争点の1つになっています。私が副町長を務める長島町の一部は、原発から30キロ圏内ですが、それでも敢えて言いたいことがあります。

『再稼働は、日本の未来への大英断』だと。

好き嫌いではない原発

原発というとすぐに感情的な議論をする人がいますが、まず日本のエネルギーの状況について「冷静に」考えてみましょう。

現在の日本の発電の供給量割合は、

●LNG、石炭、石油などの化石燃料が88%
●水力発電が9%
●太陽光、風力などの新エネルギーが3%

という状況。ほとんどを化石燃料に依存しています。

化石燃料は、日本の富が海外に流出し続けるだけではありません。

中長期的には、
●需要と供給バランスの中での価格の高騰リスク
●為替リスク
●安全上のリスク
●地球温暖化リスク

など様々なリスクがあります。しかもこれらのリスクは日本の努力だけでは、どうにもならない可能性があります。一生懸命に自動車を輸出しても、化石燃料の費用が高騰すると、すぐに貿易大赤字になってしまいます

今、世界中でテロが頻発しています。もし中東で戦争が起きたらどうなるのでしょうか。化石燃料や電気の値段は暴騰します。そうなると、倒産する会社も少なくないでしょう。真夏の酷暑日に、クーラーを使えなくなる人も出てくるでしょう。熱中症で亡くなる人も絶えないでしょう。

電気が使えない。それは経済だけの問題ではありません。くらしや命にも関わる問題です。

省エネにも限界があります。日本は第1次石油ショック以降、世界で最も省エネが進んだ国です。更に省エネを進めるには、他の国と比べて最も費用(限界費用)がかかってしまいます。

また、新エネルギーの普及にも限界があります。新エネルギーは、固定買取制度(FIT)の導入以来、急速に普及していますが、まだ日本全体で3%。これ以上の普及は、立地上の制約や、消費者への価格転嫁の限界などもあります。

そして、太陽光発電や風力発電には致命的な弱点があります。安定しないこと。太陽光は日中晴れているとき、風力は適度に風が吹いているときしか稼働しません。太陽光の設備利用率は年間を通じて概ね15%、風力は概ね20%と言われています。仮に供給量が増えても、太陽光や風力では化石燃料の代わりはできません。

今年度、畜産王国「鹿児島県」では、家畜糞尿を活用したメタン発酵バイオマス発電のための調査費用を、いとう祐一郎知事の強いリーダーシップのもと初めて計上し、その導入を進めています。メタン発酵バイオガスは、太陽光や風力と違い、1年を通じて(糞尿は出続けますので)安定して稼働できるのが魅力化石燃料を代替することができます。

長島町においても、信用金庫や漁協、養豚場、私(副町長)などが出資する地域エネルギー会社(長島大陸エネルギー株式会社)を設立し、その検討を深めていますが、メタン発酵バイオガスは国内でもほとんど実例がなく、さまざまな課題があり、今すぐに稼働できるわけではありません

また、規模にも限界があります。メタン発酵バイオガス発電は、地域の未活用の資源をエネルギーに変える非常に有効な手段ですが、これだけで全ての化石燃料を置き換えることは不可能です。

結論として、現在の日本で、化石燃料を代替できる選択肢としては、原発が1番有力なわけです。実際のところ、日本のエネルギー全体を考えると、原発以外には、ほとんど実現可能で有効な選択肢はありません。

暴騰した化石燃料に依存せざるを得ないという危機的な事態を迎える前から、安定電源として様々な選択肢を持つことが極めて重要です。それは、平時においても資源国との交渉力を高めることになります。最後は、化石燃料を買うしかないという状況では、足元を見られてまともな交渉はできません。日本の富がどんどん流出してしまいます。

確かに、ドイツなどの一部の国では脱原発が進んでいます。しかし、ドイツの場合、ヨーロッパ大陸の中で電気を融通することができます。実際は、脱原発と言いながら、フランスなどの原発を利用しているわけです。

ところが、島国の日本はそういうわけにはいきません。日本単独で、エネルギー安全保障を考えなければなりません。

怠けた石油王より真面目な原発

安易に原発という選択肢を捨てることが本当にいいのか?日本の富でアラブの石油王を太らせることが本当にいいのか?エネルギーのベストミックスを「冷静に」考える必要があると思います。

原発は安全にも配慮

原発の必要性は分かっても、やっぱり怖いという人も少なくないでしょう。しかし、再稼働にあたって、福島原発の事故を踏まえた極めて厳格な基準をクリアしています。

例えば、地震。
川内原発は160ガルの揺れで自動停止するよう設計され、それ以下の規模では何の影響もありません。4月の熊本地震の本震の揺れは8.6ガルですから、まだまだ余力があります。

安全は、一番大切なことです。しかし、一度福島第一原発の事故があったからといって、原発の全てが未来永劫にわたり安全ではないと考えるのは「あつものに懲りてなますを吹く」議論ではないでしょうか。

福島と女川は地震では原子炉が正常に停止しましたが、福島の場合、地震や津波で外部電源と非常用電源が使えなくなり電源を喪失し冷却手段を失ったことが事故に繋がりました。

福島の場合は、数百年に一度の大津波という特殊な要因があったわけで、東日本大震災の震源地から最も近くにあった女川原発は地震によって稼働に影響を与えるような被害は受けていないわけです。

女川原発の場合は、当時の技術者が、過去の三陸地震などの文献をひもとき、数百年に一度の大津波にも備え15メートルの高台に設置。さらに、津波の引き波で堤防を削り取られることを防ぐため、堤防の補強工事を実施しました。その結果、福島原発と同じ13メートルの津波に襲われましたが、ほとんど被害がなく、住民たちの避難所として活用されました。

例えば、過去には、鉄道や飛行機においてもたくさんの方々が亡くなる悲惨な事故がありました。それらの原因を検証し、今後に生かしていくことが大切なわけで、もう鉄道や飛行機は全て廃止しようという議論はやはり変なのではないでしょうか。

現代生活において、鉄道や飛行機がないことが考えられないのと同様、原発以外の実現可能な選択肢はほとんどないわけです。原発とうまく付き合っていくことが大切ではないでしょうか。

地方創生もそうですが、初めてやるということは、それがどれだけ社会のため、未来のためになることでも、大きな決断と実行力が必要です。川内原発の再稼働、これこそがいとう祐一郎知事始め関係者の大英断ではないでしょうか。

「原発をやめる。」
耳障りのいい言葉です。

でも、僕は聞きたい。
化石燃料に依存してどうするんですか?日本の富でアラブの石油王を太らせることが本当にいいことですか?酷暑日にクーラーも使わず、熱中症で亡くなってもいいんですか?CO2の問題はどうするんですか?

およそ代替可能な選択肢がないのに、安易な主張をするのは、一番の無責任ではないでしょうか。

 

<井上貴至(長島町副町長(地方創生担当)プロフィール>
http://blog.livedoor.jp/sekainotakachan/archives/68458684.html

公私一致」という働き方
http://blog.livedoor.jp/sekainotakachan/archives/68507744.html


編集部より:この記事は、鹿児島県長島町副町長、井上貴至氏のブログ 2016年7月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は井上氏のブログ『「長島大陸」地方創生物語~井上貴至の地域づくりは楽しい~』をご覧ください。

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