自公は○だが民共は×である理由を整理しよう

2016年07月07日 11:30

このところ私は以前に比べて右寄りになったと言われる。そんなことは全くなく、私は首尾一貫して、ヨーロッパ的には穏健左派、アメリカでならリベラルだ。変化したのは安倍首相など自民党主流派であり、岡田克也代表など民進党だ。

安倍首相は戦後レジームの見直しといって、アメリカの保守派とはともかく、リベラル派からは警戒されていた。政権発足当初のオバマ政権とのぎくしゃくした関係はその反映だった。しかし、昨年の米国議会演説や戦後70年談話で、日本としていうべきことは主張しつつもリベラル派から疑念を持たれるような立場でないことを示したからいかにもリベラル派らしいオバマ政権と蜜月である。 

一方、民進党はといえば、一年前に民主党が共産党と選挙協力するなどと誰が想像しただろうか。また、集団的自衛権が明確に憲法違反だとか戦争につながるとか愚かなことは言っていなかった。 

つまり、安倍政権は保守らしい保守から穏健保守にシフトし、岡田代表らはリベラルないし中道派から明確な左翼路線にシフトしたというだけのことだ。

今回の選挙では野党共闘が組まれているが、とくに、共産党との協力について、民進党内でも疑念を持つ人は多いものの、自民党も公明党と協力しているから同じという弁解をする人も多い。

先週、滋賀報知新聞というローカル紙で、武村正義元大蔵大臣と紙上討論をしたのだが(リンク参照;武村氏のコメント私のコメント、武村氏がそういう説明をしていたので、この問題に絞って論点を整理して提供したいと思う。 

第一は、公明党は欧米的民主主義の枠内の党であるのに対して、共産党はそれと敵対する党である。宗教政党だから普通の意味での政党と違うという人もいるが、ヨーロッパではキリスト教民主主義という考え方がリベラルとともに中道派の中核になっている。公明党はこのキリスト教民主主義を良く研究し、それに近い考え方で、自分たちの信仰の理想に社会を近づけていこうということをめざす、いわば仏教民主主義というべきものに基づく政党であって、欧米的民主主義の王道にある。 

それに対して、共産党はソ連東欧型の社会主義は反省しつつも、欧米型の社会を肯定しているわけではない。キューバとかベネズエラなど中南米の左派政権に近い路線の様にも見える。

また、党運営についても、共産党は上意下達の傾向が非常に強いが、公明党は下部の意見に非常に敏感である。東京都で舛添知事を辞任に追い込むことの先頭に公明党が立ったのも婦人部などの意向が影響したわけで、決めたことを実現するときに鉄の団結を示すことは共産党と共通点はあるが、そこに至るまでのプロセスはだいぶ違う。

第二は、自公連立は、保守主義が主流の自民党が、中道政党(伝統的に宗教政党を中道左派とかリベラルとは呼ばないが公明党の主張は実質的には中道左派的だ)である公明党と協力することで薄められ中道派的なものになっている。つまり、やや右寄りであるのが国民世論の中央に引き寄せられている。

それに対してもともと民進党は穏健左派的な政党だが、それでも左寄りすぎて民主党政権は失敗した。当然、もう少し中道寄りに軌道修正すべき所を、共産党との協力によって、民主党時代よりさらに左寄りの純粋左派的な路線に引っ張られている。これでは、旧社会党的な万年野党ならともかく現実的な政権受け皿にならない。

第三に自公連立は、きちんと政策合意を得て、将来のことはともかくも、次の総選挙までどうするか枠組みが出来ている。それに対して、今回の野党連合は、とりあえず、安保法制の廃止を目指すことのみの協力で、しかも、それすら衆議院では三分の一も議席がないのだから、実現不可能で、しょせんは、議席確保のための野合に過ぎない。

これまで、社会党などが共産党と地方選挙で共闘したことはあるが、地方では外交、防衛、憲法などは基本的には関係ない。ドイツなどでも左派党(社民党左派が離脱して旧東独与党残党と結成)と地方レベルでは躊躇しつつも協力することがあるが、国政ではタブー視されている。やはり国政レベルでの選挙協力では、基本政策の一致が条件であるべきだ。 

こうした三点における違いを踏まえれば、自公と民共の協力がまったくちがうものであることを理解してもらえるかと思う。

今回の参議院選挙の結果をいま予想するのは難しいが、民進党は一人区で共産党のおかげで  いくつかの議席を確保するだろうが、比例区では共産党が6年前に3議席だったのを8議席ほどに増やすのに対して、民進党は16から10程度に激減し、社民党は2議席だったのが、1議席確保出来るかすら怪しい。

社民党など共産党としっかり違いを強調して、同じ左派でも民主主義の枠内の社民と枠外の共産を際立たせれば3議席くらい確保できるだろうに、共産党攻撃をしないから存続すら危ぶまれることになる。

そして、さらに困ったことは、民進党の候補者や総選挙立候補予定者が、共産党に媚びた主張をし始めていることだ。元自民党員だった人とは思えない左翼的スローガンを叫んで平気な人も多い。

そして、さらに、心配なのは、共産党との協力を前提にして、共産党のお眼鏡にかなわない人は民進党の候補にすらなれなくなることだ。おりしも、都知事選挙で、長島昭久代議士は共産党が難色を示すだろうからダメとか噂されている。 

これでは、民進党から中道やリベラル派は追放されて、完全な左翼翼政党になっていまいかねない。それは困るし、自民党に代替すべき政権の受け皿にもならない。

そういう意味で、いつも民主党や社民党に投票する人でも、共産党との協力に反対して、今回は、投票しないというのが、長い目で見れば政権復帰への近道であるようにも思うのである。

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

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