旧台湾人の蓮舫氏を担ぐ民進党の不可解

中村 仁

「蓮舫リスク」に鈍感すぎる

9月15日に投開票の民進党の代表選に、台湾国籍から帰化したとされる蓮舫氏が出馬し、前原氏と戦う展開になっています。現在、きちんと日本国籍を取得しているならば、政治家になろうと、野党第一党の代表を目指そうと、さらに将来、首相の座を目標にしようと、法的には何の問題はありません。

都知事選にでれば、当選したかもしれない蓮舫氏ですから、民主党の代表になる芽はあるでしょう。では、もう一歩、進んで日本の首相になる可能性があるかといえば、いかにグローバル化が進んだ時代になったとはいえ、まず無理でしょう。絶頂期にある安倍政権の弱点を突いて、布石を打つべき代表選の人選の安易さを感じないわけにいきません。

台湾といえば、中国、韓国と難しい関係にあり、蓮舫氏の発言の一つ一つが国際問題になりかねません。それ以上に蓮舫氏がどのような対中国認識、対韓認識を持っているのか、きちんと述べたこともありましたかね。すでに日本人ですから、蓮舫氏を差別的な目で見てはいけないにせよ、紛糾のタネはいろいろありそうですね。

オバマ大統領を生んだ米国と異なる風土

米国のバラク・オバマ大統領は初の黒人大統領となりましたし、母親は白人、父親はケニア出身です。感情的にはともかく、法的、政治的に大統領の出自を米国人は問題視していないでしょう。父親は台湾人、母親は日本人の蓮舫氏と共通するところがあるけれども、人種的構成も政治的成熟度も全く違った日本で、同様の現象が起きるとは思えません。

蓮舫氏が外国籍を持っていた(外国人だった)から一段上の政治的リーダーを目指すべきでないと、私は考えません。すでに国会議員として活動し、女性の時代の流れに乗って人気も高く、外国籍だったことが過去に重要な問題に浮上したこともありません。民進党が人気度、女性を重視したとすれば、安易ですね。

案の定、様子が変わってきました。野党第一党の代表を目指すとなると、ネットでは様々な情報が飛び交い始めていますね。「日本国籍を取得した過去の経緯をきちんと公開すべきだ」、「台湾系の一族に関する情報公開が必要になる」、「アジアにおける外交的立場を鮮明にすべきだ」、などなど。

代表になっても防戦一方

なかには重要な指摘もあるし、週刊誌やブログが得意とする指摘もあります。そういう人物が民進党の代表になった場合、防戦に追われて、安倍政権と闘うどころではなくなります。民進党の幹部たちは、蓮舫リスクに気がついていなはずはありません。それなのに、不思議な人選です。

恐らく、当分の間、安倍1強政権に太刀打ちでできず、代表になったところで、キャリアに傷がつくだけなので、有力候補は逃げてしまい、つなぎのつもりで蓮舫氏を立てておこうというのでしょうか。そうだとすれば、民進党は最初から勝負から逃げているのです。こんな政治姿勢ではいつまで経っても、政権交代のチャンスはめぐってきません。

私は蓮舫氏の人物調査よりも、安易な気持ちで代表選をやろうとしている民進党そのものに失望します。さらに大手新聞、テレビ・メディアがこの問題を取り上げないのなぜでしょうか。いつものように、代表選の結末をみてから、あれこれ論評するつもりでしょうか。従来型のメディアの報道に接していても、表面的な流れを紹介するだけで、本当のところはどうなのかさっぱり、分かりませんね。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2016年8月30日の記事を転載させていただきました(画像は民進党サイトより)。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。