存在感増す二階幹事長-「現状維持の政治」に脚光

2016年09月01日 20:25

自民党の二階俊博幹事長の存在感が増している。

安倍晋三首相の総裁任期延長論をいち早く表明して、安倍首相への支持と協調を積極的に示す一方、沖縄県の翁長雄志知事や東京都知事に就任した小池百合子氏とも会談、協調路線をとる。親中派として軍事的な緊張感が高まっている中国とも対話を重視し、友好姿勢を前面に出す。

あつれき、摩擦を抑制し、仲良し路線を貫く。その融通無碍に「現状維持」を図る政治が脚光を浴びているのだ。

政治とは大きな波風を立てずに「うまくやること」。国民の多くが求めるニーズに沿って、きめ細かく政策を実現して行くのが自民党伝来の政治だった。戦後、長く与党として政治の実権を握って来たのもそのためだった。

中で頂点にいたのが、コンピューター付きブルドーザーと言われた田中角栄氏だった。あまりの金権政治に国民の支持を失ったが、最近、角栄政治が再評価されているのも、その「うまくやる」政治の実行力によるものだ。田中金権政治を批判してきた石原慎太郎が再評価の口火を切った点にそれが表れている。

二階幹事長に田中氏ほどの実行力はない。だが、若くして田中派に属し、田中氏を政治家として最も尊敬してきた。敬愛する政治家にくっついて求められる政策を一つひとつきめ細かく実現して行くこと。二階氏はそうした能力に長けている。

二階氏と安倍氏の政権構想、政治哲学は異なる。二階氏は「媚中派」とも呼ばれる親中派。安倍首相は日本の歴史と伝統を重視する保守思想の持ち主で、日本の近現代史を口汚くののしる中国や韓国の批判にホンネでは強く反発している。

しかし、その安倍首相の支持率が増し、また国際的にも「法と秩序」を重んずる安倍首相への支持が高まり、南シナ海、東シナ海で無法な行為を繰り返す中国への批判が強まっている。

二階氏はこうした動きには敏感で、今は「安倍支持が最適だ」とにらんでいるようだ。安保法案に賛成し、安倍総裁任期延長論をいち早く表明したのはその現われだろう。

政策構想は希薄だ。力のある政治家について、その求める政策実現に動き、経済大国となった現在は、できるだけ「現状維持の政策」を続けるのが心情だと思える。

雑誌「Hanada」10月号で、二階氏はこう述べている。

「ポスト安倍は安倍総理」--これが現時点での私の考えです。安倍政権の三年半を振り返ってみますと、近年、これほどの実績を挙げた総理大臣がいたでしょうか。……国際的な評価も極めて高い。……昨年十一月時点で、のべ八十三カ国・地域を訪れ、国内外での首脳会談数は三百七十回を超える。……先頭に立ってこの国を引っ張っておられる。……このまま行けば、歴史に残る総理大臣の一人になる。私は大いに期待しています

安倍首相と意見の合う点も少なくない。アベノミクスの持続を目指した財政投融資はその1つだ。バラマキと批判の強い公共事業など旧来の自民党の政策は大得意で、幹事長としての目配りは相当なものである。

一方、最近の中国の軍事攻勢は親中派としても困りものであり、そこでも親中派ならではの仕事が増えている。「Hanada」10月号で、次のように語っている。

公海においては、(国際法など)に則ってやるのが大前提であり、……程永華駐日大使にも、そのことをしっかり申し上げました。何よりもこのような問題では、両国がエキサイトしないよう慎重に対応し、話し合っていく必要があります。……何かの拍子に思わざる事態が発生しないとも限りません。平和的に解決するためには、やはり日中首脳会談などを頻繁に行い、とにかく仲良くやろうよという話をしてゆく。……日本のことを考えた時、中国と仲良くやっていくことができない人たちに政治を語る資格はありません

一触即発の危機が今そこに迫っている時、これは多くの国民の声でもある。二階幹事長の存在感が高まるゆえんだ。親中派の二階幹事長が言えば、中国も自制してくれる。実際、最近、侵略行為は沈静化しつつある。二階氏の成果と見られつつある。

だが、それも程度問題である。二階氏は中国の侵略に自戒を促す一方で、安倍首相や稲田朋美防衛大臣の靖国参拝の中止を強く働きかけているといわれる。

実際、両人は靖国参拝を行っていない。これは中国を増長させる一方、多くの日本国民ならびに中国の攻勢に眉をひそめる東南アジアの人々を失望させている。

しかも、中国の経済悪化や国内の政治的緊張が高まった場合、不満をそらすために、たとえ親中派の二階氏の要請があったとしても、日本への侵略攻勢を強める危険性は小さくない。

二階幹事長の「うまくやる」政治外交が持続する保障はないのである。むろん安倍首相も、徒に中国を刺激する政治外交をとる必要はない。が、国民が屈辱を味わうような政治を続けるのも好ましくない。

二階幹事長とどこまで二人三脚を続け、どこで袂を分かつか。その舵取りは容易ではない。

 

※画像は自民党公式サイトより引用(アゴラ編集部)

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