「二重」じゃいけないんですか?二重国籍の事情

2016年09月02日 12:30

日本は二重国籍を禁じている。しかし、現実にはかなりの二重国籍の人がいる。一方では、これまで二重国籍に寛容だったヨーロッパではテロやタックスヘブン対策で規制する方向になりつつある。

ここのところ、蓮舫さんの二重国籍の可能性も話題になっているが、現実に、日米二重国籍者などずいぶんといるように見える。

しかし、どうして、そんなことが起きるのか。

ひとつは、日本人が外国の国籍をとるときに、その国が二重国籍を認めていて、日本国籍の放棄は求めないことがあり、そこで、二重国籍となるケースだ。

一方、日本に帰化する場合には、外国国籍の放棄が条件で証明書も必要なので、原則、二重国籍にはならない。

そして、もうひとつのケースが、父母の国籍が別で両方の国籍があるとか、両親が日本人でもアメリカのように生地主義をとる国で生まれその国の国籍を与えられた場合だ。

その場合は、ひらたくいえば、22歳まで日本国籍を選択しないと、日本国籍は取れない。

そして、法務省のHPには、以下のように書いてある。

国籍を選択するには,自己の意思に基づき,次のいずれかの方法により選択してください。

①外国の国籍を離脱する方法
当該外国の法令により,その国の国籍を離脱した場合は,その離脱を証明する書面を添付して市区町村役場または大使館・領事館に 外国国籍喪失届をしてください。離脱の手続については,当該外国の政府またはその国の大使館・領事館に相談してください。

②日本の国籍の選択の宣言をする方法
市区町村役場または大使館・領事館に「日本の国籍を選択し,外国の国籍を放棄する」旨の国籍選択届をしてください。

ところが、この制度の運用について、混乱がある。

ある人が法務省に問い合わせたところ、「国籍離脱制度がある国では、①しか選べない。台湾には国籍離脱制度があり、従って台湾との二重国籍者が日本国籍を選ぶ場合、①しか選択できない。国籍離脱制度が無い国があり、この場合は止むを得ないので②の宣言をもって代えている」といった趣旨を言われたのである。

これだと、もっとも多い日米二重国籍も、存在するはずがないことになり、実情と違う。

そこで、別の弁護士さんに問い合わせていただいたところ、どうも、こういうことらしいのである。

法令の文言では①と②は自由に選択できる。しかし、二重国籍は認めていない趣旨からいって、できる限り①で行うべきだというポジションである。しかし、手続きを行うのは市町村の窓口なので、②でも認めていることもあるだろう。

そして、実情はこのブログにもあるように、ほとんどは、②で行われているのが実情のようだ。

そして、この方法では、まだ、もうひとつの国籍離脱手続きをしている可能性は普通なく、窓口からは速やかに国籍離脱手続きを指導されている。

しかし、実際には、かなりの人がそのまま放置して違法な二重国籍状態がかなりの期間、あるいは一生、継続しているのである。そして、離脱手続きをしても日本の官庁には通知されないし、しなくても、分からないのが実情だ。

世界の常識:二重国籍は「悪」だが必要悪として認められていることがあるだけ

二重国籍について議論していると、日本は厳しすぎるとか、なにも悪いものでないという人がいる。

世界の実情を見ると、日本は原則禁止だが例外がある程度はあって、かつ、違法に取得している人に比較的甘いという位置づけだ。それに対して中華人民共和国のように厳密に禁止している国もあるし、欧米のようにかなり広範に認めている国もある。

しかし、世界で二重国籍を積極的に好ましいと考えている国はない。もともと、ヨーロッパでは国籍は何かあったときに保護を求める権利にみたいなものだったから多重国籍は広範にあった。

ところが第一次世界大戦でいろんな矛盾が生じたので、制限し規制のルールを定めるために、1930年に「国籍の抵触についてのある種の問題に関する条約」(国籍抵触条約)が締結され、「人は必ず唯一の国籍を持つべき」とする国籍単一の原則が基本となった。

第二次世界大戦後の混乱と冷戦のために亡命者が増えたりし、無国籍のこどもが大量に発生したりしたので、例外的に認める動きも出てきた。

最近の動向としては、テロ、マネーロンダリング、麻薬などの取引などに対処するためには、多重国籍は諸悪の根源そのもので、認めない、認めても制限を加えることが多くなっている。

かつてフランスはフランスで生まれたら国籍を得ることができたので、日本人両親でフランスと日本国籍と二重国籍が多かった。しかし、男性の場合は兵役があったので、18歳になるまえにフランス国籍を放棄する人が多かったが、女性にはけっこう二重国籍のままにする人が多かった。

しかし、1980年代の法律改正で、フランスで生まれただけでは国籍取得ができず、5年間の居住が義務づけられたので二重国籍者はすくなくなった。(私の長男はフランス生まれで二歳半のときに日本に帰国?来日?したが、出生の二年ほど前の法律改正によって18歳までに5年の滞在が必要となっており、その後、フランスに住まなかったのでフランス国籍は持っていない)

一方、国民の数が減ることを嫌って、国籍離脱を認めていない国があって、結果的にそうなるいことがある。かつての社会主義国やブラジルがそうだが、その結果、カルロス・ゴーンの場合には、レバノン人の両親のもとでブラジルに生まれ、フランスの国営企業幹部になるとき国籍が必要だったので、三重国籍となったようだ。

二重国籍については、認めているところでも、他の国籍を行使することの制限を加えていることがあるし、政治家や公務員に就くことを禁止しているところも多い。

いずれにせよ、二重国籍は権利と義務の重複で、公正さから考えて好ましいはずがないので、未成年者などを除いて、原則としては解消すべきものだ。あるいは、片方の国籍の行使を停止・制限するような方向にいくのではないか。

日本は運用で少し甘いところがあるのだが、未成年者は別にすると、大多数のケースは温情である。アメリカでビジネスをするのに国籍があったほうが便利、片方の両親が悲しむ、将来の留学や仕事に備えて可能性を残したいなどである。

二重国籍の人で、それを自慢している人もいるが、あんまり感心する話でないし、思わぬ落とし穴にはまることもありうる。たとえば、行使が制限されているのに無頓着だと処罰されたり、徴兵制が停止されていても、国際情勢が変化したら復活して、旅行で入国したとたんに兵営行きだってあるのだ。

※写真はWikipediaより

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学大学院教授

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