ポピュリズムは合理的である

2016年11月12日 12:44

ポピュリズム化する世界 ―なぜポピュリストは物事に白黒をつけたがるのか?トランプ大統領は、Brexitに続くポピュリズムの第2波である。フランスのルペン、ロシアのプーチン、イタリアのベルルスコーニ、日本の橋下徹など大衆に直接アピールするタイプの政治家を「ポピュリスト」と呼ぶとすると、それは確実に増えている。

本書はその原因を朝日新聞の記者があれこれ推測しているが、結局何もわからない。それはポピュリストを既存のメディアの偏見で「不合理」な政治家と決めつけているからだ。そう考える限り、ポピュリズムを理解することはできない。

ポピュリズムは合理的である。それはデモクラシーの根本的な欠陥を利用しているからだ。アメリカ大統領選で、1人の有権者がその結果を変えられる確率はゼロだが、投票するコストは有意に大きい。平日にわざわざ仕事を離れて投票所に行くだけでなく、その前に候補者の政策を調べて誰が正しいかを判断するには時間もかかる。

正しい候補者が当選したとしても、その利益は全国民が得るので、政治的選択は公共財であり、それにただ乗りして棄権することが合理的だ。これは政治経済学でよく知られている。あなたが政治に影響を与えようと思うなら、投票より政治家を(合法的に)買収することが効果的だ。

普通の有権者にとって投票は無意味な行動だが、そこに何らかの意味を見出す不合理な人が多いからデモクラシーは成り立っていた。しかし人々が合理的になると棄権する。今回の投票率は、約48%で史上最低だった。投票に行くのは、不合理で暇な人なのだ。

これを候補者からみると、合理的な政策を訴えることは当選する役に立たない。有効なのは不合理な有権者にアピールし、彼らが投票に行くインセンティブを与えることだ。そのためには、合理的計算ではなく感情に訴える必要がある

安全保障や経済政策などのむずかしい話は投票に結びつかないが、「ヒラリーは迂回献金で金もうけして選挙に出る汚い政治家だ」という怒りは結びつく。ろくな政策なしに、もっぱら個人攻撃に終始したトランプの選挙戦術は合理的だったのだ。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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