仕事を断るは恥だが役に立つ --- 宮寺 達也

2016年11月18日 11:30
断る

あなたは上手に仕事を「断る」ことができる?(出典:写真AC)

電通の強制捜査を受けて、経団連が15日、会員企業に対して社員の過重労働の防止対策を徹底するよう要請した(http://ur0.work/zIQP)。これまでのアゴラ投稿記事(「電通の残業規制は逆効果。新しい働き方を提案する」「36協定は非人道的か?36歳の誕生日に考えてみた」)でも書いているが、「残業代込みの収入を維持する給与制度」や「解雇ルールの明確化」といった抜本的な働き方改革を行わないと、サービス残業が増え、過労死はむしろ増えてしまうだろう。今回の経団連の要請は働き方の抜本改革には全く触れておらず、なあなあでほとぼり冷めるまでやり過ごそうという魂胆が見え見えで、ガッカリする。

というわけで、しばらくは真面目な人ほど、仕事が遅い人の業務や「残業低減案の作成」という業務を押し付けられたりと、ますます忙しくなるだろう。

こんな状況を乗り切るためには「仕事を断る力」を高めなければいけない。私も仕事を断るのは苦手だったが、「仕事の断り方が上手な人」の教えをご紹介したい。

必要な仕事でも断ろう

仕事には「必要な仕事」と「不要な仕事」があるが、実は「必要な仕事」の方が断ることは簡単だ。会社にとって必要な仕事はあなたがやらなければ必ず別の人が担当する。

必要な仕事を上手に断るためには、「断る仕事」と「受ける仕事」の見極めが最も重要だ。そのポイントは「緊急か、そうでないか」である。

仕事を「緊急」と「重要」の組み合わせで、価値が高い順番に分類すると、

1. 緊急で無いが、重要な仕事
2. 緊急で、重要な仕事
3. 緊急で、重要で無い仕事
4. 緊急で無いが、重要で無い仕事

となる。あなたは「緊急で無いが、重要な仕事」だけを受けるべきだ。それ以外は全部断ろう。

あなたの周りにもいないだろうか。クレーム対応や設計変更、デバッグといった「緊急で重要な仕事」に常に追われ、「忙しくて困るなあ」「優秀な人に仕事が集まるもんだよ」が口癖の人が。実は昔の私もそうだった。

真面目な性格のため、先輩や他部署にいつも設計変更、デバッグを頼まれ、80時間超の残業で対応していた。そんな「緊急で重要な仕事」をこなしている間に、「緊急でない重要な仕事」もいつのまにか納期が近づいており、「緊急で重要な仕事」に化けてしまっていた。そんな無限ループに苦しんでいた。これを救ってくれたのが、尊敬するKさんだ。

「宮寺くんは、緊急な仕事を受けるところが駄目だ。全部断りなさい。そして、まだ納期に余裕がある、重要な仕事を丁寧にやりなさい。そうすれば、君の仕事は不具合を出さず、緊急になることが無い。重要な仕事にじっくりと取り組むサイクルを身につけなさい。」

不要な仕事は頭を使って断ろう

不要な仕事を断るのは実に難しい。なぜなら、そんな仕事が発生する時点であなたの会社はマネジメントが狂っており、まともな判断を期待できないからだ。

特に頼んだ人も内心では不要とわかっている場合は厄介だ。悪意を持ってあなたに押し付けているわけだから、簡単には引かない。一人に断られると、次の人にも断られると考えているため、最初のターゲットに全力でゴリ押ししてくる。

私の失敗例と、私の親友Yの成功例を語ることで、不要な仕事を断るためのヒントを提供したい。

私の失敗例:課長を正論で論破した

会社員として8年目になった4月、「研究所が開発した有機ELを用いたデバイス開発」という、地雷臭しかしないテーマに抜擢された。私は研究所の有機ELが酷くできが悪いこと、他社で開発が進んでおり特許もたくさん押さえられているが、実用化の目処が立っていないことを知っていた。そのため、会社を思ってこそ、課長とチームリーダーに状況を説明し、仕事を断るべきと主張した。

課長とチームリーダーは「可能性は0%では無い、始める前から諦めるとは社会人失格だ。お前はチームからは外さないが、会議には一切呼ばない、資料も渡さない」と意味不明の供述をした。そして、テーマメンバーになったまま仕事は一切無く、暇を持て余すという屈辱の日々を過ごした。そして半年後に部署を追い出されることになる。

後で知ったことだが、そのテーマは当時の社長が有機EL好きだったため始まったものであり、しかも失敗してもお咎め無しという条件であったため、課長とチームリーダーは「おいしい」と思ったのだ。みんなで気楽に試作品を作り、「頑張ったけど駄目だった」と報告して万々歳という青写真だった。そのため、問題点を指摘しそうな私が邪魔だったらしい。しかし、特許で有名だった私がテーマメンバーに不可欠と、役員が私を指名したらしい。だから外さなかったのだ。

今思い返してもアホらしい話だが、正論で論破した私の断り方が悪手だったのは認めよう。
なお、有機ELテーマはその後、たった一年で中止になった。

親友Yの成功例:課長の企みを見抜き、同情を誘った

私が有機ELで失敗した頃、私の同期で親友Yがモーター制御チームのリーダーに抜擢されるという事件が起きた。事件と書いたのは、本人が本気で嫌がったからだ。

モーター制御チームは当時のブラック職場でも最悪のチームで、Yは入社以来、担当したテーマが全て開発中止になるという不遇を囲っていた。Yは目先の出世には一切興味が無かった。己のスキルを高め、周りと協力して製品を出し、社会に繋がることが組織に属した理由であり、技術者の本懐だと常々言っており、私は心から尊敬していた。

モーター制御チームのリーダーは、典型的な年功序列で管理職に昇進し、知識・経験が無いが偉そうな態度には定評のある人物だった。課長はそんなチームリーダーを見限り、Yに白羽の矢を立てた。周りは抜擢人事だと歓迎し、Yにエールを送っていた。私も悪い話では無いと思ってはいたとき、珍しくYに悩み相談された。

「こんなチームリーダーになっても何の権限も無いからマネジメントスキル向上には繋がらない、無駄な会議に呼ばれるだけでメリットは無い。今度こそ市場に出る製品設計に携わり、エンジニアとして成長したい」と言うYのエンジニア魂に感銘を受け、応援することにした。

そこで、課長とYと私の3人による相談の場を設けた。同席しながら、Yが正論で課長を論破すると思っていた。しかし、Yの台詞は違った。

「課長。私がチームリーダーをお断りしたいのは、私の我儘ではありません。*私がリーダーをやりたくない理由は、あなたが私をリーダーに指名した理由と同じなんですよ。*課長は××さんが厄介で扱いにくいからリーダーにしたくないのですよね。私も××さんが厄介で扱いにくいからリーダーになりたくないのです。課長は、誰よりも私がリーダーになりたくない理由がわかっているのではないですか。こんな私がリーダーになるより、厄介な××さんを良いリーダーにすることこそ、部署の利益です」(※)

と言ったのだ(一部、うろ覚え)。
課長の本心を見透かし、自分がリーダーにならないことが部署の利益だと言う訴えに課長も心が動いたのだろう、「わかった、だが何もしないと言う訳にはいかない」と答えた。
そして、私は自らがリーダーを務めていた特許検討チームのサブリーダーにYがなることを提案し、話が収まった。

不要な仕事を断るのは恥だが役に立つ

私とYの違いを振り返って、私が間違っていたとは思わないが、足りなかったと思う。不要な仕事が発生する背景、それをごり押しする上司の本心を読み解き、それに沿った主張を私はできなかった。

私は断り方が下手で部署を追われたが、Yはその後開発した製品が世に出るようになり、幾らか状況が改善され、エンジニアとしてどんどん成長していった。

不要な仕事を断ることはとても難しい。断った結果、昇進に響いたり、恥辱を味わうことになるかもしれない。しかしそれをしないと、自分のスキルを高める重要な仕事に専念できないのだ。

これを読んでいる真面目なあなたも、きっと不要な仕事を押し付けられて苦しんでいるだろう。その断り方にベストな回答は用意できないが、Yのように全体を見通し、前向きな言動を駆使して、上司を説得するよう頑張って欲しい。

宮寺達也 パテントマスター/アゴラ出版道場一期生
プロフィール
2005年から2016年まで大手の事務機器メーカーに勤務。特許を得意とし、10年で100件超の特許を取得。現在は、特許活動を通じて得た人脈と知識を駆使しつつ、フリーランスエンジニアとして活動中。

※19日17時差し替えました。

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