高スキルボランティアを活用するための条件

松本 孝行

東京オリンピック・パラリンピックで来日する方々にむけて、組織委員会は通訳のボランティアを使おうとされているそうです。これに対してネットでは「技術はタダじゃない」「然るべき報酬を払うべき」と、否定的です(下記リンク参照)。

東京五輪の通訳ボランティアについて言及した東京新聞の記事が話題に「技術はタダではありません」

確かにスポーツや政治、映画などで通訳をプロで行っている人たちがいますから、無料でボランティアとして通訳をするというのはコストを浮かせる魂胆があるんではないか?と疑ってしまうのもわかります。

ただ、世の中には自分の持つ専門スキルをボランティアに活かす人たちもいます。それがプロボノと呼ばれるボランティアです。

東京オリンピックのボランティアはどうなる?

プロボノはなぜ専門スキルを無償で提供するのか

私個人も経験したことがあるプロボノですが、NPO法人サービスグラントなどが提供しているサービスです。

資金が不足しがちなNPOや町内会・自治会などに対して、サービスを提供するボランティアで自治体の委託や補助金などで運営されています。

例えばホームページの作成でWordPressの導入と運用、SNSマーケティングの初期設定と運用指導、フリーペーパーの作成、CIの企画立案など様々な案件があります。そこには実際にウェブサイト制作を行っている人や私のようにウェブマーケティングを生業にしている人が自らのスキルを提供しています。

プロボノを行う人達の多くはNPOや地域活動協議会などの理念・考え方・活動に共感し、自らのスキルと時間と労力を提供します。そのNPOや地域団体の活動に興味がない、社会的なものではないと思えば参加しません。自らのスキルをどこで使うか?ボランティア側が選びます。

喜んでボランティアをする音楽・スポーツボランティア

またスポーツ系や音楽系のボランティアはファンの人たちが喜んで集まりやすいボランティアでもあります。

例えばボランティアインフォでは東日本大震災・熊本地震の地震以外にも下記のような音楽イベント・スポーツイベントのボランティアなども募集しています。

こういったスポーツや音楽のイベントはファンの人達が集まりやすく、自分たちも好きなアーティストやスポーツ選手と一緒になって一つのイベントを作りたい!という強い動機を生みやすいために、他のボランティア募集に比べて集まりやすいと言えるでしょう。

オリンピックに関わりたい!と思う人をどれだけ作れるか

今回、東京オリンピックに関して通訳のボランティアを募集するというのは、特におかしなことではないと思います。プロボノにも通訳・翻訳を行う人がいますから、例外的なものではありません。

ただ、NPOに対して行うプロボノと今回の東京オリンピックの大きな違いは「理念・考え方・活動に共感しているかどうか」ではないでしょうか。

昨今のオリンピックは商業化が進み、多くのお金が動いています。また東京オリンピックを今行うことに対して、あまり多くの人たち(特に若者)に理念や考え方が共感されていないのではないでしょうか。

そもそも東京オリンピックを誘致しよう!となったときに一番のネックが「国民の関心・世論の支持が低い」ということでした。多くの国民がオリンピックを東京で行う意味を見いだせていないのです。そのような状況でオリンピックにボランティアを、しかも高いスキルを提供するボランティアを配置しようとするのはハードルが高いと言わざるを得ません。

ボランティアしてよかったと思える仕組みづくりを

上記で紹介したボランティアインフォが行うパンクロックフェスのボランティアは「またやりたいです」と、ボランティアを何度もしたいと考えている人も多いそうです。それだけイベントそのものへ携わることの面白さ、やりがいがあるということでしょう。

2020年の東京オリンピックは9万ものボランティアを動員することを考えているそうですが、そのためには「ボランティアしたい!」と思わせる仕組みづくりが必要です。東京オリンピックのボランティアをすることで味わうやりがいや社会貢献、高揚感などが感じられるのであれば、人数は集まると思われます。

ロンドンやリオではボランティア募集枠の3倍もの応募があったという話もあります(参照)。大きな震災を複数回経験し、ボランティアの息吹が芽吹きはじめたわけですから、同じくらい応募があって欲しいものです。