安倍総理の今回の真珠湾訪問はどうも思いがけない副産物を生んでしまいそうだな、というあまり楽しくない予感がしてきた。
オバマ氏がアメリカの大統領を続けたり、オバマ氏の路線を次期アメリカ大統領のトランプ氏がそのまま受け継ぐのであれば、安倍総理の今回の真珠湾訪問の決断を手放しで讃えるところだったが、現時点ではトランプ氏側がどんな風に受け止めるのか分からないために、そう簡単にいいことだ、とも言えなくなってしまう。
何とも難しい時期に真珠湾訪問をすることにしたものだ、というのが現時点での私の率直な感想である。
オバマ大統領が広島を訪問した直後だったら如何にも自然だったが、オバマ氏が大統領を辞する直前の今の時期の真珠湾訪問にどれだけの意味があるのかよく分からない。
下手をすると、アメリカにおける反日感情に火を点けるかも知れないし、万一、アメリカの国民の間からリメンバー・パールハーバーなどという声が上がると、今度は、日本の愛国主義を標榜する方々の中からルーズベルト謀略説が上って来て、結果的に我が国の保守層の一部に根強くある反米意識を煽ることにもなってしまいかねない。
これはアメリカ側も日本側も相当慎重に対処する必要があるぞ、安倍総理のメッセージの出し方も難しいぞ、と思っているところである。
私は、友人の勧めで、アメリカの大統領がフーバーからルーズベルトになったから日本とアメリカは戦争をしなければならなくなったのだ、フーバーが大統領を続けていれば、フーバーは日本との戦争を回避するためにあらゆる知恵を駆使したはずだが、ルーズベルトは好戦的で、アメリカを第二次世界大戦、欧州戦線に引き込むためにあれやこれや手を打っていた、日本の暗号の解読で真珠湾攻撃計画はルーズベルトのところには届いていたのだが、ルーズベルトはあえて何の手も打っていなかった、などと書かれている書物を最近読んだばかりで、現在もなお相当その影響を受けている。
私には真偽のほどは分からない。
しかし、ルーズベルトの施政を強く非難しているフーバーの書籍がフーバーの死後ようやく最近になって公刊されたということで、そのフーバーの書物を原書で読まれたという方々の解説を読んで、そういうこともあったかも知れないな、ぐらいの感じではいる。
したがって、私は、単純に日本の真珠湾攻撃を宣戦布告なき日本の奇襲攻撃で国際法的に許されざるものだ、などという物言いには賛同し難いのだが、しかし今の段階でそんなことを言ってしまえばさぞ物議を醸すだろうな、とも思っている。
安倍総理のメッセージの出し方が実に難しい。
真珠湾は、日米関係を考えるうえで実にセンシティブで、取り扱いが難しい問題である。
編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2016年12月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。