忍び寄る70歳定年時代に備えて求人倍率を見てみよ --- 牧野 雄一郎

2017年01月06日 06:05

シニア労働者 job_roudousya_old

現役サラリーマン世代には嫌な予感のするニュースが流れた。

日経新聞の昨年末の報道によると、内閣府は直近の経済財政諮問会議に向けて「高齢者の定義を70歳にすること」を提言すると決めたようだ(日経新聞)。また、年が明けて、きのう5日には、日本老年学会が国に対し、「高齢者の定義を75歳以上に」と提言した(NHKニュース)。

「高齢者の定義」が何を意味するのかは不明だが、順当に考えると年金支給開始年齢や、様々な老齢社会保障の開始年齢を引き上げることが意図されているだろう。

伸びる寿命と労働力不足

日本人の平均寿命はこの10年でさらに2歳ほど伸び、男性は80歳、女性は87歳となった。かつてよりも70歳でも活き活きとした人は増えているし、働いている人も増えている。健康年齢は年々伸びているのだ。高齢で働けないことを理由に支給すべき老齢年金は本来の目的とずれきている。

さらに言えば現実的な日本の人口構造問題として65歳以上の高齢者比率は既に25%を超え年々増加している。年金支給を65歳からにしている現状では早晩年金財政は破綻する。労働人口を確保する上でも70歳まで働くことは少子高齢化の日本にとって選ばざるを得ない選択肢だ。

しかし現役世代のサラリーマンとしては60歳定年で入ったつもりの滅私奉公期間がつい数年前に65歳まで事実上延びたのもつかの間。政府はその舌の根も乾かぬうちに今度は70歳をゴールラインとして定めるつもりのようだ。サラリーマンのすぐ目の前には「70歳定年」という言葉が迫っている。

過酷な定年再雇用

平成25年に定められた改正高年齢者雇用安定法によれば、60歳で雇用満了を迎えた人は本人が望む限り65歳まで雇い続けることが事実上の義務として企業には課せられている。雇用延長の選択は従業員の自由だが、よほどの金融資産を残している人ならともかく、殆どの人は年金を貰うまでの期間は少なくとも何かの職業について食い扶持を見つけなければならない。年金支給年齢が70歳へ変更されればこの法制度は拡大解釈され、事実上70歳まで働かなくてはいけないのはほぼ決まっているといっても過言ではない。

私はかつて大企業のサラリーマンとして、また現在は中小企業のコンサルタントとして高年齢者雇用安定法により再雇用されている人や企業をいくつも見てきたが、そこには再雇用者を待ち受ける厳しい現実がある。

まず役職は当然のことながら剥奪され年下の部下のもとで平社員に戻る。契約は1年単位となり、一般的にはボーナス無しで新入社員よりも低い賃金で働くことになる。日本人の年上を尊重する風土からして、年下の上司が「60歳を超えた先輩」に満足に仕事を依頼することはなく、毎日パソコンでネットサーフィンをするなど寂しい労働環境に陥る人も多い。年功序列システムの中での不条理に貯まってきた日本型雇用のゆがみを一気に受け入れるような過酷なものだ。

転職をしようにも60歳を超えた人を雇う企業は殆ど無く、満足に転職活動ができる人など10%にも満たないだろう。日本の特に大企業社員はその会社のルールや人脈しか知らないので外部に持ち出して売れるスキルをもっていない。

本質的に仕事とは社会とのつながりや自己実現のための場であるはずだ。脳天気な人は平気なのかもしれないが、私も含めてたいていの人は数日でも辛いこの状況を10年も続けることができるのであろうか。

求人倍率に見る地殻変動、市場を自ら選ぶ時代

これはサラリーマンが自身のキャリアを考える上で発想の転換が必要になったことを意味している。最低でも10年、役職定年を含めれば15年程度も閑職に付く可能性があるならばそのような時代に合った働き方と職業を選択すべきだろう。

日本の社会は政府、銀行や大手上場企業を頂点としたピラミッド構造で経済を支えてきた。しかしその構造は今や老朽化し、高齢化する人口バランスを支えきれない状態になっている。上場企業はデスクワークが中心で面倒な現場の仕事は子会社、下請企業に行わせているが、その下請企業が行っている現場の仕事は「労働力の不足」にあえいでいる。

厚労省が毎月調査している全職種の総合求人倍率は25年ぶりの高水準1.2倍となり、中小企業では人を集められず収益を落とさざるを得ないケースが噴出している。東京五輪や復興需要に沸く建設業では、施工管理技士などの資格を持つ建設技術者の求人倍率は既に4倍を超えている。その他にも運輸、医療、介護、街のサービス業などで労働力の逼迫は喫緊の課題だ。一方で事務職などの内勤業務、リスクを伴わない仕事の求人倍率は相変わらず0.4倍程度なのも見逃せない。

よく経営で重要なのは「どの市場に身を置くか」ということが言われる。需要の増えている市場、ニーズの見えている市場に参入することが何よりも重要という考えだ。これは個人の働き方にとっても同じである。求人倍率を見れば、どの業種にお金と人が流れているのかは一目瞭然だ。70歳まで同じ会社で組織のしがらみに閉じ込められる囚人よりも、求められる市場を自ら選択し現場でニーズのあるスキル蓄積を一人一人が取り組むことで日本の理不尽な雇用慣習に左右されないストレス無い職業人になることができる。

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牧野 雄一郎
原価管理コンサルタント 中小企業診断士 事業再生アドバイザー
アゴラ出版道場一期生

大手精密機器メーカーにて原価管理、調達部門を通じて、コストダウンと事業構造改革に従事。独立後は中小企業の原価管理、事業再生のコンサルタントを行っている。

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