テロ等準備・共謀罪の創設を考える今日的視点

早川 忠孝

通常国会が開会される。
この通常国会でいよいよ一応の結論が出そうだな、と思っているのが、組織犯罪処罰法の改正である。

この問題について如何に深く私が関わっていたかについては、今はご存知の方は殆どおられないだろうが、私が自民党の法務委員会理事として何度もテレビの前に登場したことは、当時のマスコミ関係者や法務省の方々はよくご存じのはずである。

自民党の国会議員の中で私ほど深く関わっていた人間は、他にはいないはずである。

あれから早10年以上が経過したのか、と感無量のところがある。

私の役回りは、国際組織犯罪防止条約の締結のために、法定刑が長期4年以上の懲役・禁固となっている「重大な犯罪」に係る共謀罪を創設するという組織犯罪処罰法改正法案の政府原案を如何にして国民が理解し納得してくれるような法案に修正するか、という修正案策定作業であった。

自民党と公明党からそれぞれ担当者を出して政府原案の修正のためのワーキングチームを構成し、私がその座長を務め、当時の民主党の法務委員会理事と協議をしながら修正案を作成して行った。

自民党・公明党の協議で第三次の修正案まで提出したのだから、多分自民党としては異例のことだと思う。

共謀罪という名称がどうにも一般的に過ぎて、イメージが膨らみ過ぎる、ということで、組織的犯罪共謀罪という犯罪名にしようと提案したのは私だし、政府原案にただ団体と表記されていたのであくまで対象となるのは組織的犯罪集団だということが一見して分かるようにしようと「団体」を「組織犯罪集団」と変えることにしたのも私たちのワーキングチームの仕事である。

私たちが策定した修正案は自民党、公明党のそれぞれの機関で正式に承認され、所要の手続きを踏んで法務委員会に提出されているから、私自身は政府原案は撤回されたものと思ってきたが、今回に提出されようとしていたのは私どもが修正をした修正案ではなく、元々の政府原案だったようだ。

あの時の議論は一体何だったのか、ということになるが、国会で正式に修正されない限り残るのは政府の原案だけ、ということのようである。

まあ、私が衆議院議員のままであれば、議論が後戻りをすることはなかったと思うが、今はどうやら振出しに戻って最初から議論しなければならないようである。

まあ、私の名前は出さなくてもいいから、最低限あの第三次修正案ぐらいは新たな検討の出発点にするくらいのことはしてもらいたいものだと思っている。
確か、私の修正案は対象犯罪は如何にもテロ組織集団が実行しそうな特殊な犯罪に限定していたはずである。

現時点で長期4年以上の懲役、または禁固の法定刑が定められている犯罪が600以上と聞く。
それを公明党との協議で半分の300くらいに減らそうとしている、という報道がなされているが、どうにも釈然としない。

この問題は無理をしない方がいい。

懸念事項の解消にはまだほど遠そうだ、ということだけ、とりあえず申し上げておく。


編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2017年1月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。