C-2 民間転用はヤルヤル詐欺だった

2017年01月20日 06:00
C-2 輸送機 wikipedia

飛行中のC-2輸送機。手前は量産1号機(通算3号機)、奥が試作1号機(画像奥)※Wikipediaより:編集部

川崎重工、空自向け新型輸送機の民間転用を断念(日経ビジネス)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/011800541/?P=1

川崎重工業が防衛省向けに開発した新型輸送機「C2」の民間転用(スピンオフ)を事実上断念したことが「日経ビジネス」の取材で分かった。民間貨物機市場の開拓による量産効果を狙っていたが、商用化に必要な「型式証明」などを新たに取得するには莫大なコストが発生する恐れがあると判断した。型式証明の取得をめぐっては、三菱航空機の国産ジェット旅客機「MRJ」でも苦戦しており、事業化が大幅に遅れている。

C-2の民転なんてはじめから無理なのは分かっていた話です。
耐空証明・型式証明を取るならば開発と同時にやらなければ、ならなかった。そうでないとトンデモなくコストがかかります。初めからやっているMRJですらあれだけコストがかかっているわけです。

ところが川重はそれをやらずにきたわけです。今更耐空・型式証明とるなら数百億円はかかります。仮にC-2の調達数が30機としても、その儲けをすべてつぎ込み覚悟が必要でした。

しかも、それをやっても売れる保証はまったくありません。
防衛省におんぶにダッコで、喰っている事実上国営企業の川重の航空機部門がやるわけないでしょう

つまり、民間転用は初めから絵に書いたモチだったわけです。こんなことは航空業界の人間なら誰でもわかる話です。
ところが自衛隊大好きの中学生レベルの軍オタならまだしも、首相官邸初め、経産省やら防衛省が世界に輸出と大宣伝をしてきました。

それもたちが悪いことに、天下り先の業界団体を使ってもっともらしいリサーチをしてきたわけです。
その原資は当然ながら税金を使ってです。出来もしないことがわかりきっているにも関わらず、国民のカネをつぎ込んで詐欺をおこなったようなものです。

それを対して、取材も検証もしないメディアが「絵に描いたモチ」があたかも本物のモチであるかのように宣伝しきたわけです。

「国産機、世界羽ばたく」なんて幼稚な夢を語って、自慰行為に励んでいただけです。

それを真に受けた蒙昧な愛国的な国産マンセー、自衛隊マンセー的なマニアが増長して、ネットでバイアスのかかった情報を垂れ流すから、余計に「待望論」が膨らんでいったわけです。

「軍用機」としての海外輸出も簡単ではない
民間転用を見送った以上、量産効果を狙うために最後に残るのが「軍用機」としての海外開拓の道だ。日本政府は2014年、防衛装備移転3原則を閣議決定し、条件付きながら防衛装備品の輸出を容認した。これを受けて川崎重工も既に、C2などの輸出チームを発足させた。目下、日本政府がニュージーランド政府などに輸出交渉を持ちかけている模様だ。

ペイロードが2倍以上で、しかもメーカーとしての信頼が高いボーイングのC-17が買えるお値段で、しかも不整地での運用もできない深窓の令嬢のようなお上品なC-2を誰が買いますかね?

どっかの島国の奇矯な空軍以外買わないでしょう。

常識的に考えれば、民間機を母体に開発されたたエンブラエルのKC390やらエアバスのA400M、LMのC130J、或いはイリューシンの輸送機をチョイスするでしょう。

しかも実はC-2の維持費は民間機と同じエンジンをつかっているにも関わらず、バカ高い。当初の予定を遥かに超えています。このためLCCは更に高いものになるでしょう。これも不利な条件です。

これは恐らくは、本来製造単価が上がっているが、それを素直に載せると財務省が認めない。だから維持費に乗っけたのではないでしょうか。ただでさえ跳ね上がったLCCが更に高いものになるのは必然です。海外の潜在顧客に、あれは自衛隊向けだけです。実際の運用費はもっと安くなりますと説明しますか?

こういうインチキをやって恥じない当局と、メーカーに羞恥心とか、良心とかないんでしょかね。こういう人たちが厳しい市場で商売できる能力もやる気もあるわけないでしょう。

軍オタはよく軍用機は極めて高度な技術が云々とか口泡飛ばしてまくし立てますが、三菱重工だって、「たがが民間機」のMRJであれだけ苦労をしているわけです。市場でお客様に買っていただく製品を作るのがいかに大変か、また日本の航空業界のレベルが以下に低かったか、防衛省相手の商売がいかにちょろいものだったか、三菱重工の関係者は身にしみてわかっていることでしょう。

C-2の調達数は約30機とありますが、財務省からダメ出しがでるんじゃないでしょうかね。
次の中期防でざっくり削られるのではないでしょうか。

しかも既存のC-130Hも老朽化しているからこれの更新も必要です。普段使いの輸送機とすればC-130の方が遥かに有用です。
既存のC130Hを遥拝にして全部C-2にする、というような胡乱なことを空幕考えるからもしれません。何しろ「おらが村の事情」最優先で、軍事的な整合性を無視する人たちですから十分にありえます。

ですが、それはコスト的に無理でしょう。1,2トンの貨物を輸送するのにC-2使えば費用対効果が悪すぎます。本来であれば輸送機の種類はC-130クラスと、もう一つ小さいサイズがあったほうが便利です。例えばC-2の調達を15~20機でやめて既存のC-130Hを売却して、新たにC-130Jを20機、C27Jを10機とか調達すべきでしょう。

それに通常の輸送だけではなく、本来特殊作戦用の輸送機が必要不可欠です。それにC-2は向いていません。またオスプレイに給油するならば空中給油型の輸送機も必要です。

現在の体制では特殊作戦をまともに活用できません。世界の軍隊から物笑いのレベルです。
そういう「常識」がないから、C-2のような怪しげな、平時でしか使えない輸送機を開発、調達し、反面C-130Hやその更新はほったらかしにするんです。
輸送機のポートフォリオも示さずに、新しい玩具を一点買いしたいと、喚くのは子供と同じです。

いずれにしても装備品の輸出というバラ色の幻想を振りまくために、出来もしない軍用機の民転ができると言って、多額の税機を使って天下り団体に調査までさせてホラを吹いた政府の責任は極めて重く、悪質であります。これは民主党政権、自民党政権両方にいえることです。政治家の責任ってなんなんでしょうかね?それとも官僚に騙されていたけど、しりませんでした、とでもいうのでしょうか。

それを検証もしないで正負の引く三味線で踊って、無責任に「ウリナラマンセー」的な報道を続けてきたマスメディア、特に新聞の責任は極めて大きなものがあります。
記者クラブで口開けて会見をまっているだけで、専門知識もなく、能動的に取材をしないから、政府の手先のような原稿しか書けないのです記者クラブって本当に必要不可欠な組織ですね。政府にとっては。

朝日新聞のWEBRONZAに以下の記事を寄稿しました。

南スーダンで負傷した自衛隊員は救えるのか
戦死者、戦傷者を想定していない「軍隊」の危うさ
http://webronza.asahi.com/politics/articles/2017011700001.html

Japan In Depth に以下の記事を寄稿しました。
自衛隊、オスプレイの空中給油能力を活用? その1

http://japan-indepth.jp/?p=32558
自衛隊、オスプレイの空中給油能力を活用? その2
http://japan-indepth.jp/?p=32583


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2017年1月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。

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清谷 信一
軍事ジャーナリスト、作家

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