2月6日の欧米市場の動きは少し変わっていた。それが顕著に現れていたのが国債市場である。欧州の債券市場ではフランス、イタリア、スペインの国債が売られた反面、ドイツや英国の国債が買われ、米国債も買われた。リスク回避のような動きにも見えるが、どうやらその起点はフランスにあった。だからリスク回避の動きにも関わらずフランスの国債が売られたのである。
4月から5月にかけてフランスでは大統領選挙が実質される。最新の世論調査では、当初最有力とされた中道右派のフィヨン氏が家族のスキャンダルで支持率が落ち込み、ルペン氏が首位に立っている。それを中道のマクロン氏と中道左派のアモン氏が追う構図となっている。その中道・無党派のエマニュエル・マクロン前経済相には不倫疑惑が浮上した(ロイター)。ここにきて主要候補者にさらなるスキャンダルが浮上したことで相対的に極右政党・国民戦線のル・ペン候補が優位となりつつある。
ルペン氏は4月23日に行われる第1回投票では勝ち残っても、5月7日の決選投票でマクロン氏に敗れるとの大方の予想となっていた。しかし、このあたりの読みも怪しくなりつつある。米国の大統領選挙をみてもわかるように予想がまったく通用しなくなっている。
フランス大統領選挙前には3月にオランダで選挙が実施される。この結果次第ではポピュリズム政党がさらに勢いを増し、反EUを掲げる国民戦線の支持率が高まる可能性がある。それが6月に実施されるフランスの国民議会選挙に影響を与え、社会党と共和党によるフランスの二大政党制を揺るがす可能性も出ているのである。
その注目のルペン氏は6日の大統領選挙に向けた決起集会で、米国のトランプ政権の発足やイギリスのEU離脱の決定などを踏まえ、フランスも自国の利益を最優先にすべきだという立場を鮮明に打ち出した。英国が欧州連合の離脱を選択したことを称賛するとともに、フランスの有権者に対し「国益を第一とする」トランプ氏支持者に続くよう呼び掛けた。
ポピュリズムの流れがフランスにも押し寄せるのではないかとの危惧から6日にフランス国債が売られ、外為市場では円が買われるなどのリスク回避型の動きが生じたといえる。
また、ルペン氏のアドバイザーによると、ルペン氏は当選した場合、直ちに欧州連合首脳と欧州中央銀行の会議を招集し、かつての欧州通貨単位のような各国通貨のバスケットを採用してユーロに代えるよう要請する考えだいう(ブルームバーグ)。
仮にユーロの中核ともいえる国のひとつフランスがユーロを離脱するようなことになれば、ユーロというシステムそのものの崩壊は免れない。まさに危機的状況を迎えることとなる。フランス大統領選挙の前にオランダでの選挙の動向にも注意したいが、いずれにしてもポピュリズム政党が勢いを増すようなことになると欧州そのものが新たなリスク要因となる懸念がある。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2017年2月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。