FRBは10日、タルーロ理事が今年4月5日をメドに退任すると発表した。タルーロ理事がトランプ大統領に退任の意向を伝える手紙を提出したそうである。タルーロ理事はオバマ前大統領の指名を受け2009年1月28日に就任した。空席となっていた金融監督担当副議長の任務を代行し、金融危機後の金融システムの規制強化に関わった。任期は2022年1月末まで残っていた(日経新聞電子版)。
FOMCの投票権のあるメンバーは理事会から7名の理事と、地区連銀から5名の地区連邦銀行総裁の合計12名によって構成される。現在のFRB理事の布陣は、ジャネット・イエレン議長、スタンレー・フィッシャー副議長、ダニエル・タルーロ理事、ジェローム・パウエル理事、ラエル・ブレイナード理事の5名である。FRBの理事会は本来、7人の理事で構成されるが現在空席が2つある。
タルーロ理事は、FRBの金融監督当局者として新たな規制の導入を主導するなどし、金融危機や深刻な景気後退への対応に尽力、最も厳しい銀行監督当局者の一人として高い評価を得ていた。しかし、金融規制を見直す大統領令にトランプ氏が署名するなど、今後は規制緩和の動きを強めることが予想され、タルーロ氏が退任表明は想定内との見方もあった。タルーロ氏が退任する意向を示したとのニュースが伝わると、株式市場では銀行株が上昇するなどしていた。
これで4月5日以降のFRB理事の空席は3つとなる。さらにイエレン議長の任期が2018年1月までとなっており、トランプ氏は再任しないことをすでに表明している。またフィッシャー副議長の任期も2018年中となっている。
トランプ氏は空席となっているFRB理事の3つの席をいずれ指名してくると予想され、いずれ議長、副議長も変えるとなれば、FRB理事会がトランプ色の強いものに刷新される可能性が出てきた。ラエル・ブレイナード理事はトランプ候補と大統領選挙で戦ったクリントン氏に近く、いずれブレイナード理事の去就が注目されることがあるかもしれない。
トランプ政権がFRBの政策に対してどのような認識を持っているのかはいまだはっきりしていない。ただし、現在の正常化路線については否定はしておらず、過度な金融緩和を求めるようなことはせず、ファンダメンタルに即したある程度の金利上昇も容認してくる可能性はある。このあたりが次第にはっきりしてくると、今後のFRBの政策にも影響が出てくる可能性があり、それはつまり日銀の金融政策の行方にも影響を与えてくる可能性がある。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2017年2月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。