森友学園問題 「錯誤」登記をめぐる謎

郷原 信郎

学校法人「森友学園」に対して国有地が不当に安く売却された問題をめぐる疑惑が、ますます深まる中、小林よしのり氏が紹介するブログ「ゴー宣道場」の2月24日の記事【豊中市国有地格安売却疑惑「錯誤」の不可思議な登記】で、この土地の登記をめぐる興味深い指摘が行われている。

もともとこの一帯は伊丹空港の離着陸ルートにあたり、昭和53年ごろに騒音対策地として国が買収した土地だった。

その後、騒音が軽減されたとして、平成24年7月、この騒音対策地は「国(運輸省)」から「新関西国際空港株式会社(新関空会社)」に売却されている。

一昨年、豊中市が同じ騒音対策地から、学校給食センターの建設用地として、7210平米の土地を購入しているのだが、この時点での土地の所有者は「新関空会社」だから、豊中市は当然「新関空会社」に購入費を支払っている。金額は7億7000万円。

問題は、その後に書かれている指摘だ。

 森友学園が小学校用地として購入した土地の登記を見ると、平成24年7月に、所有者が国から「新関西国際空港株式会社」に移転。

ここまでは豊中市が購入した土地と同じだ。しかし、平成25年1月10日、なぜか「錯誤」を理由に所有者が抹消され、その上、なぜか所有者が「国(国土交通省)」に戻っているのだ。 

同日に出された同じブログの記事【「錯誤」登記の補足と、安倍首相の「森友学園切り捨て答弁」】に登記簿の写しが掲載されている。これを見ると、この土地は、運輸省(現国土交通省)の所有であったところ、

①平成24年10月22日に、「平成24年7月1日 現物出資」を原因として、新関空会社に所有権が移転

②平成25年1月10日に、「錯誤」を原因として、①の所有権(新関空会社)が抹消

されている。

つまり、問題の土地は、国から新関空会社に現物出資されたことになっていたが、その現物出資が「錯誤」で無効だったとして、国に戻り、その後、問題とされている森友学園との間で定期借地契約や売買契約が行われたりしたのである。

このことは、今回の問題が、単に、国が所有していた土地を安価で森友学園に売却したというだけにとどまらず、一旦、新関空会社に現物出資したものを、国が取り戻した上で、森友学園との契約を行うという「特別の取り計らい」が行われたのではないかという疑いを生じさせる。

しかも、【赤旗「森友学園問題 審議前に貸し付け内諾」】によると

森友学園は近畿財務局に国有地の賃貸を申し出ている段階で2014年10月31日、大阪府私学審議会(私学審)に新設認可を申請。私学審は、15年1月27日に「認可適当」と答申しました。

この答申の2週間後、国有財産の処分を決める近畿財務局の国有財産近畿地方審議会が、森友学園に国有地を10年間貸すことを決めました。

とのことである。「錯誤」を理由にして現物出資がなかったことにし、国が所有権を取り戻した後に、森友学園が賃貸を申し出たわけだが、その話はいつから始まっていたのか。

上記ブログによると、国交省大阪航空局は「手続き上のミスがあったので国に所有権を戻した。」と説明しているとのことだ。もともと現物出資が有効に成立していなかったという趣旨であろう。

しかし、平成24年度の新関空会社の有価証券報告書によれば、国から新関空会社への現物出資は、「関西国際空港及び大阪国際空港の一体的かつ効率的な設置及び管理に関する法律」に基づいて行われている。現物出資が行われたとされた半年後に、「錯誤」で所有権を抹消する登記が行われたのであれば、「手続き上のミス」を明らかにする書類が残されているはずだ。

法律に基づく現物出資等である以上、近畿地方財務局が「既に廃棄した」と説明している森友学園と財務局との交渉経過に関する文書等とは異なり、行政文書として確実に保存されているはずであり、それに関する文書を確認することで、事実関係は明らかになるはずだ。一旦は国有地ではなくなっていた土地について、その後、森友学園から賃貸の申し出があった。なぜ、都合良く、「錯誤」によって国に戻っていたのか。

いずれにせよ、国と政府100%出資会社との間での通常の取引や登記では考えにくいことが行われているように思える。この点についても、真相の解明が必要だろう。

いずれにせよ、国と政府100%出資会社との間での通常の取引や登記では考えにくいことが行われているように思える。この点についても、真相の解明が必要だろう。


編集部より:このブログは「郷原信郎が斬る」2017年2月27日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は森友学園ウェブサイトの旧画像より)。オリジナル原稿を読みたい方は、こちらをご覧ください。