豊洲問題はもう終わった(おときたさんへのコメント)


アゴラは自由な言論の広場だから何を書いてもいいが、おときたさんの記事は論理が破綻している。彼は「豊洲新市場は科学的には極めて安全な可能性が高い」といいながら、「豊洲は科学的に安全だから今すぐにでも移転すべきだ」という石原元知事を批判する。なぜだろうか。

今まで豊洲の建物の中が危険だという証拠は何も出ていない。地下水は危険かも知れないが、豊洲で地下水は使わない。そして小池知事は「築地はコンクリートでカバーされているので問題ない」と判断したので、同じくコンクリートでカバーされている豊洲も問題ない。

問題はここで終わりである。石原氏のいうように、豊洲は(少なくとも築地と同等に)安全なのだから、今すぐ移転すべきだ。過去に都議会でどう答弁したかは、移転の可否とは関係ない。「土壌汚染対策を確実に実行する」というのは当たり前で、土壌汚染対策法ではコンクリートで「汚染を遮断」すればいいので、そもそも地下水の「モニタリング」が必要ない。豊洲移転は強制ではないので、安心できない業者は移転しなければいいのだ。

これは6年前に福島で「1ミリシーベルト」をめぐって展開された議論と同じだ。当時もICRPの基準では20ミリシーベルトで十分だったが、超法規的な「安心」を求める人々が騒ぎ、それに屈して民主党政権が非現実的な基準を設定したために、いまだに9万人が帰宅できない。無意味な「除染」のコストは8兆円に達する。

移転を延期しても6000億円のサンクコストは回収できないが、移転すると築地の用地売却で4300億円の収入が上がると見込まれ、固定費は大幅に圧縮できる。おときたさんの「都民ファーストの会」幹事長としての立場はわかるが、もう豊洲問題は終わった。政治的な見世物として石原氏の「責任追及」がやりたいのなら、移転問題とは切り離して存分にやってください(写真は日経新聞)。