「森永ホールディングス」誕生へ 経営統合の効果は ?

2017年03月06日 06:00

森永乳業<2264>と森永製菓<2201>が2018年4月をめどに経営統合を検討していることが明らかになった。2月24日付の日本経済新聞が報じ、両社は「経営統合に限らず様々な可能性について検討していることは事実」とのコメントを出した。実現すれば、明治ホールディングス<2269>に続く総合菓子・乳業メーカーが誕生する。会社側の正式発表に先立ち「森永ホールディングス」を統合効果を試算した。

【企業概要】乳業・製菓 過去にも合併分離の歴史

森永乳業は1917年、乳製品の製造販売を事業目的とする日本煉乳株式会社として設立された。その後、森永製菓株式会社との合併分離を経て、1947年に現在の森永乳業株式会社が設立された。1954年に東京証券取引所に株式を上場。1967年に森永商事株式会社の乳製品販売部門を譲り受けた。

現在(2016年3月期)は森永乳業、子会社56社および関連会社7社で構成され、市乳、乳製品、アイスクリーム等の食品の製 造販売を中心に、さらに飼料、プラント設備の設計施工、その他の事業活動を展開している。森永乳業(単体)の部門別売上高と主な製品は以下の通りである。

森永製菓の前身は1899年、創業者の森永太一郎がアメリカから帰国し、東京・赤坂に設立した日本初の洋菓子製造工場「森永西洋菓子製造所」である。1910年に株式会社森永商店として設立。1912年に森永製菓株式会社に改称した。1920年に日本煉乳を合併し、1943年に森永食糧工業株式会社と改称。1949年に東京・大阪・名古屋証券取引所に株式を上場。乳業部門を分離して森永乳業に譲渡すると同時に森永製菓株式会社に再び社名を戻した。

現在(2016年3月期)は森永製菓と子会社21社で構成され、事業は食料品製造、食料卸売、不動産及びサービス業などを営んでいる。主力の食料品製造事業の部門別売上高と主な製品は以下の通りである。

【業績推移】製菓、利益で乳業に急接近

森永乳業、森永製菓の業績をみると、売上高は森永乳業が約6000億円、森永製菓が約1800億円と、森永乳業の方が3倍以上売上規模が大きい。一方、経常利益をみると、2011年3月期時点で森永乳業が187億円、森永製菓が65億円と3倍近い開きがあったが、その後、森永製菓が急速に収益力を向上させており、2016年3月期には森永乳業が149億円、森永製菓が120億円と急接近している。

日本経済新聞の報道によると、両社は持株会社方式で経営統合する見通しという。そこで統合新会社の名称を「森永ホールディングス」として、業績を試算してみた。(森永乳業、森永製菓間の連結消去される取引は考慮せず、単純合算した数値である)

「森永ホールディングス」の2016年3月期の売上高は7833億円、経常利益は270億円となる。しかし、ライバルである明治ホールディングスの2016年3月期の売上高は1兆2237億円、経常利益は818億円となっており、開きはまだ大きい。

【収益力比較】規模・経営効率で明治に見劣り

売り上げについてさらに詳しく見ていく。以下のグラフは森永乳業と森永製菓の部門別売上高を合算したものである。連結売上高7833億円のうち、食品事業が7592億円、全体の97%を占めている。

一方、明治ホールディングスの食品事業の売上高は1兆607億円と全体の87%を占めており、森永の1.4倍の売り上げ規模を持つ。加えて医薬品事業も1629億円の売り上げを上げており、収益の2本柱となっている。

こうした規模の違いが、収益力にも反映している。下のグラフは売上高を100%とした場合の損益計算書の一部項目を抜粋したものである。明治は売上高営業利益率が6.4%に対し、森永は3.3%と見劣りする。売上原価率は明治が63.6%と森永(65.6%)より2ポイント低い。販売費・一般管理費比率は明治が30.1%、森永が31.1%と1ポイントの差で、原価率の差が収益力格差につながっていることが分かる。

森永乳業と森永製菓はそれぞれアイスクリームを製造するなど重複する部門もある。両社が経営統合すれば、お互いのノウハウを持ち寄って生産を効率化したり、研究開発やマーケティング費用を削減したりして、コスト競争力を高められるかが課題となる。

【ROE分析】売上高利益率に改善余地

以下は「森永ホールディングス」と明治ホールディングスの主要な経営指標を比較した表である。

財務データは2016年3月期。時価総額、PBRは3月3日時点。

注目すべきなのは、自己資本利益率(ROE)の数字である。森永の9.5%に対して明治は16.1%と高い。しかし、明治は2016年3月期に約200億円の不動産売却益を計上している。これを除外すると実質のROEは13%程度となる。それでもROEで3%以上の差がある。

ROEの構成要因を分析すると、総資産回転率は森永が明治をやや上回っており、財務レバレッジは森永の方が大きい。一方で売上高純利益率は明治の5.1%に対し、森永は2.4%にとどまっており、利益率をいかに改善するかがROE向上のポイントとなる。

会計上は森永製菓が乳業を買収?

財務データは2016年3月期。時価総額、PBRは3月3日時点。

さらに森永乳業と森永製菓を分けてみると、森永製菓はROEが2ケタに達している一方、森永乳業は8%台にとどまる。この経営効率の差が市場の評価にも反映している。株価純資産倍率(PBR)は森永製菓が3.7倍と森永乳業(1.8倍)の約2倍となっている。時価総額も売り上げ規模の小さい森永製菓の方が大きくなっている。

経営統合の方式の詳細が明らかになるのはこれからだが、会計上は森永製菓が森永乳業を「買収」する処理をすることになる可能性がある。いわゆる「小が大を飲む」形だ。

今後の市場環境にもよるが、この場合、森永乳業の時価総額と純資産の差額の約1000億円がのれんとなる可能性もある。20年で償却した場合、年間で約50億円の営業利益を圧迫する要因となる。これを上回る相乗効果を発揮できるかどうかが、経営統合を成功させるうえでカギとなる。

文:M&A Online編集部


アゴラ編集部より:この記事は「M&A Online」2017年3月4日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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