タワーマンションを買いたいと思わない「3つの理由」

内藤 忍

昨日の日本経済新聞電子版にタワーマンションが密集するベイエリアの朝の街並みが掲載されていました(写真)。出勤時間帯の地下鉄の勝どき駅周辺ですが、仕事に出かける地元住民と、降りて周辺のオフィスに向かうビジネスパーソンで道路は埋め尽くされています。

一時期に比べると人気が沈静化したタワーマンションですが、タワーマンションが建設されると、一気に大量の住民が引っ越してくるため、インフラの整備が追い付かず、このような事態になっているようです。

夜景が見えるオシャレなタワマンに憧れている人は多いと思いますが、私はもしこのような混雑が将来解消したとしても、住みたいと思いませんし、購入もしたいと思いません。その理由を書いてみます。

まず、高層階になればなるほど、アクセスに手間と時間がかかることです。エレベーターで上の階まで上がって行かなければならず、待ち時間や乗っている時間は結構バカになりません。駅から近くてもマンションのフロントから自分の部屋までさらに時間がかかってしまうのです。通勤時などはさらに混雑して時間が読めません。

2つ目は地震です。免震構造になっているから安全性には問題がないかもしれません。しかし、震災時には、エレベーターが長時間にわたって止まってしまい、陸の孤島になってしまうリスクがあります。また、建物の構造によって、地震の揺れが上層階ほど大きくなってしまう問題もあります。

3つ目は、将来のメンテナンスコストの上昇です。共有スペースが多く設備が整っている分、将来のメンテナンスにかかるコストは大きくなります。また高層階の外壁等のメンテナンスをどのようにするかは、前例がなく、これから大きな課題になるでしょう。

上層から下層まで様々な広さの部屋があって、数百人あるいは数千人の住人が一緒に住んでいるタワーマンション。マンションの管理の方針を決めるにしても意見をまとめるのは大変です。オーナー間の利害が対立すれば、マンション管理に時間と手間がかかることが予想されます。

どこに住むかはその人の生まれ育った環境や好みによって変わってくると思います。湾岸のタワーマンションは、夜景が見たい人や、海の近くに住みたい人は良いでしょう。しかし、現状の利便性や将来のリスクや資産価値を考えれば、敢えて選ぼうとは思いません。

既にタワーマンションを購入した方には気分の悪い話だと思いますが、将来の「負の資産」になるリスクも覚悟しておいた方が良いというのが、私の考えです。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2017年3月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。