籠池理事長は“クロ”、首相夫人は“判定負け”

2017年03月26日 00:30

校舎建設の業者がひとり大損

大阪の森友学園の問題をめぐる証人喚問、参院予算委員会は、国民生活に密着した予算案の審議という最も重要な本来の役割を放棄し、関係者の責任追及に熱中しました。もっとも、生の政治、行政の舞台裏が俎上に乗せられ、国民が「やはり、裏ではそんなことが行われているのだ」と再確認するケース・スタディには十分、なりました。

森友問題をめぐる動きを総括してみます。人間的に全く信頼できない人物に、よくまあ、これだけよくも引っかき回されたなあ、という感じですね。3通りも用意した建築申請書も虚偽というか詐欺なら、看板の愛国教育ついても、虚偽か偽装に思えてきます。うさんくさい愛国教育学園と安倍首相夫妻の関係も絡み、ニュース価値を引き上げました。

結局、「籠池理事長はクロで、補助金申請書の虚偽記載で訴追、逮捕、学校は破綻」、「昭恵・首相夫人は目に余る軽率な行動が明らかにされ、判定負け」で、最大の敗者はこの二人です。さらに「安倍首相自身もむきになりすぎ、森友問題の政治的、ニュース的な価値を高める結果を招いた」、「財務省関係などの行政の不手際は、首相に対する忖度が生んだ」です。

経営破たんで回収できない損害も

経済的に大損するのは、「認可取り消し、校舎解体の末、費用を払ってもらえなくなる建築、工事会社」ということになります。国に損害は発生しますかね。財務省は売った国有地を買い戻します。校舎の解体が条件ですから、実際に取り戻せるかどうかは別です。木造建築補助金(国交省)や騒音助成金(関空会社)の返還も求めます。経営が破たんしてしまえば、校舎の解体費用をだれがだすのか、補助金や助成金を返還する原資があるのか。事後処理は複雑ですね。

首相からの100万円寄付の有無は、双方が肯定、否定で応酬しており、真相は解明されないでしょう。国有地を不当な安値で払い下げ、学校開設を認可(その後、取り消し)に至る不透明な経緯を追及する上では、もともと、あまり意味がありませんでした。首相側の「もらっていない。議員、首相の職を賭す」との発言で、野党、メディアが活気つきました。選挙区外の寄付であり、「そもそも違法ではない」と、クギを最初に刺しておいたら、ニュース価値は落ちていたでしょう。

籠池夫人当ての首相夫人のメールには、首を傾げます。「100万円の寄付の記憶がないのです」という表現は実に妙です。なぜ「寄付していません」ときっぱり否定しなかったのか。寄付していても、していなくても、記憶に残らない金額であるはずがありません。なぜ「記憶がない」といったのか。他のメールには、「私もまだまだ追い詰められるかもしれません」とあり、解釈によっては、憶測を呼び文言です。

籠池夫人とのメールのやり取りが、問題発覚後2、3月だけでも、約60回というのは、信じがたい数字です。フェースブックに自分の見解を投稿したというのは、追及されている問題の大きさ、首相夫人という立場を考えると、話題を拡散するだけの効果しか持ちませんでした。情報戦の時代の格好の餌食になり得る立場にいることへの備えが頭から消えています。だすなら、きちんとした公式の発表文にすべきでした。

持論の愛国教育につまづく

疑惑が本当なら「議員、首相を辞める」との首相の国会答弁は、逆効果でした。愛国教育を看板にした人物との関係が不透明ではないかと探られることが気になったのでしょう。安保法制論議が国会で議論されているさ中に、大阪に飛び、民放のテレビ番組に出演(2015年9月)したのも不自然なタイミングでした。国有地払い下げを地元で調整している時期と重なっているとの指摘がされています。夫妻ともども持論の愛国教育で足を取られた形です。

この問題はどのような結末に向かうのでしょうか。寄附金に関する証言では、籠池氏を偽証罪で告発するのは無理でしょう。もっと追い込むには、金銭関係の出入りを記録する帳簿の調査が必要です。一方、首相夫人側も寄付を否定する証拠を持ち合わせていないように見受けられます。籠池氏は、3通りの建築費を算定を算定し、行政機関に提出した書類が虚偽記載で、詐欺に相当するとの点では検察の捜査対象となり、逮捕もありえます。メディアの関心は政治から離れ、そこに移っていくでしょう。

そのころには、森本学園は多額の債務を抱え、経営破たんしています。とんだ災難に見舞われるのは藤原工業という建築業者、その他の工事者ですね。総工費15億円程度の仕事にありつけると思ったのには誤算でした。この間、来年度予算案の審議がろくに行われず、国民生活全体のことが二の次にされたという意味では、国民こそが最大の被害者なのでしょう。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2017年3月25日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像と動画はFCCJより)。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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中村 仁
ジャーナリスト、元読売新聞記者

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