厳しくなった高齢者運転講習の体験記

2017年04月17日 06:00

写真ACより(編集部)

ブレーキとアクセルを同時に踏む認知症

高齢者の運転事故が増えています。これに認知症が重なると、悲惨な事故につながります。高齢運転者の免許更新の条件が厳しくなり、私も先日、75歳以上を対象とした運転講習を受けました。同じ組になった3人のうち1人はシミュレーターを使った模擬運転で、アクセルを右足、ブレーキを左足で同時に踏んでいました。恐ろしいことです。認知症でしょうか。もう1人はひどい難聴で、教官が耳元で大きな声を出さないと、指示を聞き取れません。路上での運転が心配です。

自動車教習所に行き3時間(75歳未満は2時間)の高齢者運転講習を受けるようにとの葉書を警視庁からもらい、面倒なことをやらせるものだと、始めは不愉快でした。75歳以上は認知症の検査義務もあります。これを受けないと、免許証の更新の手続きに進めません。自分のボケ状態をチェックするにはいい機会か、とも考え出かけました。

70歳の時の5年前、そして認知症検査が加わった今回が2度目です。この日は6人が受講生でした。検査費用は5850円です。講習は、講義30分、適正検査30分、実車(実技)指導60分、シミュレータを使った模擬運転など合計3時間です。講義や認知機能チェックは全員で受け、その後、3人ずつ2組に分けられ、実車と模擬運転のテストです。

叱られてもすぐ忘れる

私と同じ組になり、隣の席に座った女性の所作、反応が鈍く、どこかおかしいと気になっていました。認知機能チェックの冊子が配られ、教官が「まだ開かないで。まだですよ」と繰り返し注意しているのに、開けて勝手に読み出し、再三、叱られるのです。叱られたことをすぐ忘れるのでしょうか。

認知症テストでは、その日の年月日、住所、氏名を書きます。腕時計をしまわせたうえで、丸く時計の文字盤を書き、今の時刻を針で表現させます。鳥、家具、乗り物などイラスト(16種)を見せられたのち、思い出して書き出すなどです。簡単な絵なのに、半分ほどしか思い出せず、意外に最も難しかったですね。それでも私は総合点で86点で、どうにか合格でした。

シミュレーターを使った模擬運転では、路上の様子が画面に映しだされます。歩行者が飛び出して横断しようとしたら、すぐにアクセルをから右足を離し、その足で横のブレーキを踏みます。動作が遅れると、減点です。この女性は教官が何度、教えても、右足はアクセルに乗せたまま、同時に左足でブレーキを踏み、両足で踏ん張るのです。路上なら事故になっているでしょう。5年前にもあった同じテストなのに、やり方をすっかり忘れているのでしょう。

教習所構内を実際の車に乗って走る実車テストでは、教官の指示に従って、右折や左折、車庫入れ、S字カーブ走行などを行います。この女性はなんと「もう何年も、運転しておらず、できません」、つまりペーパードライバーだというのです。実技は免除され、助手席に乗ったまま見学です。免許を更新する意味がないのに、どうしたことでしょう。身寄りがおらず、相談相手がいなかったのでしょうか。教習所は参考意見を警察に伝えるだけで、不合格にする権限はありません。

ペーパードライバーには甘い

ペーパードライバーということを理由に、免許をはく奪できない決まりになっています。医師の診断を受け、認知症と判定されると始めて、免許取り消し・停止の処分を受けます。認知症になると、記憶障害、判断力の低下、時間や場所を認識できないなどの症状がでます。道を間違える、行先が分からなくなる、交通標識を理解できないなどにより、事故が起きやすくなるはずです。

冒頭に申しあげた難聴の人はどうなったか。本人は「突発性難聴を2度、経験した」といっていました。路上でクラクションが鳴ったり、パトカーに追いかけられたりしても、気が付かないでしょう。免許の交付を正式に受ける時は、「補聴器をつけるから」といえば、パスするのでしょう。その方は補聴器をつけていなければならない症状なのに、そうしていませんでした。こんな高齢者が結構、ハンドルを握っているのですね。

どうやって高齢者の事故を防ぎ、あるいは免許証を自主的に返納させるか。警察の狙いは、頻繁に認知症検査をやり、「もう面倒なことはいやだ」と思わせることです。高齢者は3年ごとの免許更新とし、その都度、認知機能の検査をする。主な交通違反(18項目)を一つでもすると、毎回、2時間の講習を強制的に受けさせることになりました。そこで認知症と判定されたら、免許取り消しとする。高齢者を面倒な目に合わせ、「もう免許なんていらない」という心理に追い込むのです。

いづれは自動運転車が実用化されるでしょう。また、すでに自動ブレーキや車間距離制御の装置がついた車が発売されています。無人運転、自動運転の時代がくるまでは、安全走行ができる車を買うことでしょうか。完全な自動運転車でも、目的地の設定、途中下車の指示が必要で、認知症の人が1人で車に乗るのは危険ですね。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2017年4月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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中村 仁
ジャーナリスト、元読売新聞記者

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