3000万人のデータを平気で取得解析できる国は恐ろしい

先週は北京で会議に参加した。中国企業が進めた研究について聞く機会があったが、その内容は驚きだった。

発表したのは、シャオミ(小米科技)の下で、スマートウォッチビジネスを展開しているHuami(華米)という会社。中国国内で販売した3000万台以上のスマートウォッチを使って、中国人の睡眠に関するデータを収集し、ビッグデータ解析したという。

平均的には中国人は23時32分に就寝し6時44分に起床する。中学生は睡眠時間が短く、大学生は夜遅くまで起きている。加齢とともに睡眠時間は短縮する。男性ではBMI23から25、女性は22から24が眠りにつくまでの時間が短く、やせすぎも太り過ぎも寝つきが悪い。

もっともらしい発表なのだが、なぜHuamiはスマートウォッチ装着者の性別・年齢・職業・身長・体重などが把握できたのだろうか。スマートウォッチを購入して利用者登録をする際に入手したのだろうか。

3000万人全員から装着データの利用について事前に同意を得たのだろうか。それとも、ビッグデータ解析しただけで個人の情報が公表されるわけではないから、事前の同意は取らなかったのだろうか。

わが国では改正個人情報保護法が5月30日から全面施行される。個人情報を取得・利用する際には、利用目的を本人に通知又は公表することが義務付けられ、特に、人種・信条・社会的身分・病歴・前科・犯罪被害などの要配慮個人情報は事前の本人同意が原則となった。

スマートウォッチの利用規定など長文すぎて誰も読まない。利用規定などを法的には「約款」というが、約款に利用者の利益を一方的に害する規定があった時には、合意を無効とする民法改正も成立間近である

民法や個人情報保護法があるためにわが国では困難だが、中国では3000万人の睡眠状況調査が実施できる。この彼我の差、個人の保護に関する姿勢の違いは大きな驚きだった。