民法改正案の衆議院通過を歓迎する

民法改正案が衆議院を通過し今国会で成立の見込みとなった。法務省は2015年に改正案を国会に提出したが継続審議となり、二年越しでやっとゴールが見えてきた。読売新聞は改正案のポイントを次のように紹介している。

改正案は、企業などが消費者に契約内容を示す「約款」について、消費者が一方的に不利になるような項目を無効とする規定などを新設する。

情報通信政策フォーラム(ICPF)では2014年にシンポジウムを開催し、定型約款規定の必要性について議論した。当時の記録はICPFサイトに掲載している。なぜ民法を改正するのか知ってもらうために、その要旨を紹介する。

通信サービスでは電気通信事業法に従って契約約款を事前に総務大臣に届け出ることが義務付けられ、同様の規定が鉄道事業・銀行業・保険業などにも存在する。しかし、ネットビジネスの約款について規定する法律はない。

われわれは頻繁にネットビジネスを利用する。最初にアクセスした際には長い長い規定を見せられ同意するように求められる。規定など読まずに同意をクリックするのが日常である。それでは、規定に利用者に不利な条項があったらどうなるか。

「規定を改正します」というお知らせがメールで送られてくる。「ああ、改正されたんだ」としか思わないが、改正規定に利用者に不利な条項があったらどうなるか。

「利用規定」「利用にあたって」などの総称が「約款」である。約款は利用者から変更を求めることができないという点で、提示する側に一方的に有利な契約条件である。

改正民法では第548条に「定型約款」の規定を設けることにした。そこには次のような規定がある。

その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして民法第一条第二項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意をしなかったものとみなすものとすること

このような規定が当初の契約締結時だけでなく、定款改正に関しても書かれている。民法改正案が成立すれば、利用者にはこの規定に基づいて対抗する力が生まれる。参議院での審議が順調に進み改正案が成立するように期待する。