ソ連崩壊後のロシア経済は日本の近未来の姿?(前編)

2017年05月02日 20:09

こんにちは。香川健介です。
アゴラでは「日本は財政破綻するのかどうか?」という大きなテーマのもと、財政や経済に関する記事を連載しています。

さて、前回の「国債が売られると金利が上がる直感的な解説」では、国債価格と金利が反比例することを説明しました。

今回は、ソビエト連邦(ソ連)崩壊後のロシア経済について、細かいところは端折りざっくりと解説します。
これらの事例を知っておくと、国債価格と金利の関係を知るのと同じく、日本が財政破綻するのかどうか考える際に役立ちます。

ここからは、ソ連(ロシア)について解説します。

 

20世紀のはじめに成立したソ連は、紆余曲折の末、1991年の12月25日、ゴルバチョフの大統領辞任に伴い崩壊しました。

ちょうど偶然この日にソ連を訪れていた知人(日本人)によると、当時の首都モスクワは、次のような状態だったそうです。

「私はソ連が崩壊した日に、たまたまモスクワに行く用事があった。
空港は真っ暗で、電気はついていなかった。
私はロシア語が全く読めないので心細かった。
バスを降りたら物売りがわーっときた。何十人も突進してきて怖かった。
身なりはひどく、生活は困窮しているようだった。
街中にはモノがなにもなかった。
まともな店を探し続け、やっと見つけたが、ソ連の通貨であるルーブルは受け取ってくれなかった。仕方なくドルで払った。
カラカラの天気で、雪も降っていなかった。
ホテルに着いた。トイレはぼろぼろで、便器の蓋はなかった。娘はまだ小さくて、どう用をたせばよいのかと泣いたため、便器の上に立って用をたせと言ったことを記憶している。」

 

崩壊する前から、ソ連には深刻な問題がありました。

まず、ソ連政府はひどい財政難でした。
この原因は、ソ連が長年にわたり軍拡を続け軍事費がかさんでいたことや、企業や一部の個人に多額の補助金を出していたことなど、たくさんあります。
帳簿上はうまく行っているようにみせかけていましたが、実態は火の車でした。

また、ソ連共産党による全体主義体制が続いていました。
このような全体主義体制はたいてい、特権階級と一般市民の間に、大きな格差を作ります
今の北朝鮮が良い例ですね。北朝鮮では、金正恩をはじめとする政府高官に近い人ばかりオイシイ思いをしています。

ソ連も北朝鮮と同様、党や軍などの特権階級が、国家の富を独り占めにしていました。
このような特権階級に一般市民が入るのは、ほぼ不可能でした。

こうなると、一般市民はやる気と希望をなくし、仕事をサボるようになります
皆がそうなってしまうと生産性は上がらず、国の経済全体がダメになっていきます。
生産性は低く、近代化も遅れ、自由主義・資本主義を唱えるアメリカや西側先進国との経済格差は、ますます開いていきました。

このように、ソ連の経済は長年にわたり腐りつつありました。
にも関わらず、ソ連政府は軍事費や補助金を相変わらず出し続けていました。
こんなことをしていると、当然、いきづまります。
そんなときにゴルバチョフが出てきて、ソ連を立て直そうと改革に挑戦したものの、紆余曲折あって失敗しました。

結局、1991年の12月25日、ソ連は崩壊します。
その後、エリツィン大統領が率いるロシア連邦が成立しました。

では、崩壊前後、経済面ではどんなことが起きたのでしょうか。

いろいろなことが起きましたが、特筆すべきは、ソ連崩壊後、もともと起きていたインフレがさらに加速したということです。

そもそも、インフレとはなんでしょうか。
ひとことで言うと、インフレとは、その国で使われるおカネの価値が下がることです。
モノの値段もたいていあがります。たまに値段が下がるモノもあるので一概にはいえないのですが、たいていのモノの値段は上がるので、インフレのときはモノの値段が上がると考えてしまってもいいでしょう。
「インフレ=おカネの価値が下がる。たいていのモノの値段は上がる」と覚えてください。

また、モノの値段が上がることを、物価が上がるといいます。
どれだけ上がったかという割合を、「インフレ率」や「物価上昇率」などと言います。

話を戻すと、1992年のロシアのインフレ率は、なんと約2500%でした。
たとえるなら、1個100円だったコンビニのおにぎりが1年で2500円になってしまったり、250万円あった銀行預金が1年で10万円になってしまうような感じです。
想像すると怖くなりますね。

参考までに、1993年、94年、95年も、ロシアのインフレ率はそれぞれ900%、300%、200%くらいありました。
単純計算すると1992年から1995年までで、物価が1000倍以上になったことになります。
1個100円だったコンビニの菓子パンが、1個10万円になったような感じです。すごいですね。

 

では、なぜこの時期にロシアでこんなすさまじいインフレが起きたのでしょうか。

最大の原因は、ソ連時代に生み出された膨大な財政赤字です。
ロシア連邦は自分たちはソ連の継承国だと宣言したので、ソ連の債務も引き継ぎました。
一般的に、膨大な借金があると国家の信用力は低くなります。

また、新たに成立したロシア政府が急激な経済自由化を行ったことも一因です。
ソ連はもともと、中央政府が生産設備を独占していました。
ソ連崩壊後、ソ連時代に作られた生産設備は、格安で民間の企業家に払い下げられました。
その人たちは、生産設備を実質的に独占できたので、価格を吊り上げていきました。

当然、モノはたりなくなり、物価は上がります。
何十年もバリバリのソ連式経済体制のもとで暮らしてきた人々の中には、うまく立ち回ることができず、ひどい目にあう人が続出しました。市場メカニズムも十分うまく機能せず、大混乱が起きました。

貨幣の価値が下がると、当然モノも買いにくくなります。
モノが足りなくなると、ますますインフレが進みます。

これらの原因を背景に、ロシアではものすごいインフレが進んでいきました。

(後編に続きます)

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なお、この記事は、私が先日出版した本をもとに書かれています。
主に、財政や社会保障の話や、財政破綻が起きる場合のメカニズムや、「個々人が財政破綻にどう対処したらいいか?」などの解説をしています。
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香川 健介
投資家、元中央官庁勤務

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