マンチェスターの「話」

2017年05月26日 11:30

英国中部マンチェスター市には数回足を運んだことがある。リヴァプールに居住していた時、知人の誘いを受けてマンチェスター市に行ったのが初めてだった。そこでは知人と昼食を一緒にしただけだったが、フィッシュ・アンド・チップスの紙袋が路上に散らばっている湾岸都市リバプールと比較すると、マンチェスター市内はセンスのあるショーウィンドーで華やかだったことを覚えている。およそ35年前の話だ。

リヴァプールに住みながら、英ロックバンド「ザ・ビートルズ」関連の建物すら見学することがなかったが、マンチェスターはビートルズ後に登場した英ロック界のヒーロー、「オアシス」(1991年結成、2009年解散)の兄弟(ノエル・ギャラガーとリアム・ギャラガー)の出身地だ。アイルランド系の労働者家庭出身のギャラガー兄弟は性格も全く異なっていた。ノエルは父親によく叩かれた思い出があるという。彼の反逆精神、アンチ権威主義はマンチェスターの労働者社会で育ったところから由来しているのかもしれない。

マンチェスターは英プレミアリーグの「マンチェスター・ユナイテット(U)」と「マンチェスター・シティ」の2チームの本拠地だが、ノエルとリアムは「マンチェスター・シティ」の大ファンだ。マンチェスターUが24日、欧州リーグ(EL)でオランダの強豪「アヤックス」を2-0で破り、チャンピオンになったというニュースを聞いた時、「オアシス」の2人兄弟の苦り切った顔を直ぐに想像したほどだ。

ノエル・ギャラガーは2016年4月12日、「オアシス」が解散した後に結成したロックバンド「ハイ・フライング・バーズ」を引き連れてウィーンのガソメーター(Gasometer)でコンサートを開いた時、最後の歌を終え舞台から姿を消したが、再び舞台に戻り、「僕のチームが今夜勝ったんだ」と子供のように喜んでファンの前に出てきた時はびっくりした。彼は舞台で歌っている時も、「マンチェスター・シティ」の試合を気にしていたのだろう。ホームゲームの時はスタジオ最前列で必ずといっていいほど応援しているノエルの姿が見られる。ノエルは「マンチェスター・シティ」に就任したばかりのジョゼップ・グアルディオラ監督とインタビューしているほどだ(「『オアシス』再結成の日は来るか」2016年4月15日参考)。

そのマンチェスターの英国最大のコンサート会場「マンチェスター・アリーナ」(2万1000人収容)で24日夜、米人気歌手のアリアナ・グランデさん(23)のコンサートが開かれたが、彼女が歌い終え、舞台から姿を消した直後、会場ロビー周辺でイスラム過激派の自爆テロが発生し、少なくとも22人が死亡、59人が負傷した、犠牲者の22人のうち、12人は16歳以下で、最年少は8歳の女の子だった。なお、英国メディアによると、「マンチェスター・シティ」のグアルディオラ監督の奥さんと娘さんがコンサート会場にいたが、無事だったという。

当方はBBCで自爆テロ直後のコンサート会場やマンチェスター市内を見て、茫然とした。自爆テロ実行犯は1994年マンチェスター生まれのサルマン・アベディ容疑者(Salman Abedi)だった。

ちなみに、マンチェスターやリヴァプールには、ノエルの家族のようにアイルランド出身の移民が多く住んでいる。マンチェスターでは1992年と96年、アイルランド共和軍(IRA)軍が今回の自爆テロ事件のような爆弾事件(通称 Manchester bombing)を起こしている。なお、アベディ容疑者はリビア系の移民家庭出身だ。
昔、聴いていたピンキーとフェラスの曲「マンチェスターとリヴァプール」(1968年)の歌詞が突然、飛び出してきた。

A city, a city that may not be so very pretty
But to be back, a smokestack
Can be a welcome sight to see


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年5月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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