情報通信政策フォーラム(ICPF)では5月のセミナーを参議院議員会館で開催した。テーマは「教育の情報化を推進しよう」。セミナーの記録は間もなくICPFサイトで公開するのでご覧いただきたい。
セミナーの要旨は次の通りであった。
21世紀を生きる子供たちのために、今まで主流だった一斉学習から課題解決型の学習に切り替える。人工知能技術が急速に進展しているが、人工知能はマネジメントや創造性、ホスピタリティが苦手である。人間が得意なこれらの要素を教育にいっそう組み込むために、デジタル教科書活用をはじめとした教育の情報化を推進する。超党派で組織された「教育における情報通信(ICT)の利活用促進をめざす議員連盟」は、裏付けとなる法律を議員立法で準備している。
セミナーの中では、著作権の扱いに課題があり教育の情報化が進まないとの指摘が繰り返された。学校教育での著作物の利用については、著作権法第35条(学校その他の教育機関における複製等)によって、著作権の行使が制限されている。第35条の主要部分は次のとおりである。
学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における使用に供することを目的とする場合には、必要と認められる限度において、公表された著作物を複製することができる。
これだけでは、今までの対面教育でも遠隔教育でも、デジタル教科書を用いた教育でも同じように「公表された著作物を複製することができる」ように読める。しかし、文化庁は第35条が適用されるのは、対面教育と遠隔の同時中継に限られるとの解釈を公表している。文化庁サイトから引用すると次のとおりである。
教育を担任する者やその授業を受ける者(学習者)は,授業の過程で使用するために著作物を複製することができる。また,「主会場」での授業が「副会場」に同時中継されている場合に,主会場で用いられている教材を,副会場で授業を受ける者に対し公衆送信することができる。複製が認められる範囲であれば,翻訳,編曲,変形,翻案もできる。
文化庁の解釈がこのままでは、クラウドに教材コンテンツを置き学習者が自分のペースでそれを閲覧する、といったこれから想定される利用形態は範囲を越えてしまう。
このことは規制改革会議でも既に問題になっている。セミナーと同日の5月23日に公表された『規制改革推進に関する第1次答申』には「高等学校の遠隔教育における著作権法上の問題の解決」という節がある。規制改革会議の指摘は次のとおりである。
平成27年4月から高等学校で解禁された「同時双方向型の遠隔授業」(配信側には教員のみで生徒はいない)では、著作権法上の措置がとられておらず、著作権者の許諾が原則必要とされており、音楽の授業などの制約要因になっていると考えられる。
速やかに議論が進み、教室での対面授業と同様に著作権者の許諾が不要という措置が講ぜられることを期待する。これは、超党派議員連盟が進める教育の情報化にも深くつながる重要な一歩である。