教育無償化、同性婚...(5月25日・憲法審査会での自由討議)

2017年5月25日 憲法審査会 自由討議部分(新しい権利について)※見出しはアゴラ編集部

教育無償化は検討に値するが、高等教育は問題あり

○細野委員
民進党の細野豪志でございます。
教育の無償化について今議論が闘わされておりますので、一言申し上げたいと思います。

まず、民進党は、昨年、教育無償化についての法案を提出しておりまして、一歩一歩前進をしていくという立場で、まず法律から始めるという立場でございます。憲法にそれを書くかどうかについては党内でまさに議論中でございますので、きょうは私の個人的な意見ということで少し述べさせていただきたいと思います。

まず、憲法二十六条の制定の経緯というのを共通認識として持つ必要があるというふうに思います。

憲法二十六条については、義務教育について無償化が定められておりますけれども、当初、政府から示された原案というのは初等教育の無償化でありました、GHQの考え方ということもあるわけではありますが。ただ、初等教育というのは小学校だけですから、それでは十分でないという当時の帝国議会の議論があって、最終的には義務教育の無償化となったわけであります。

これは、当時からすると、日本の財政も非常に厳しく、さらには、当然、家庭は非常に貧しいという状況でしたから、相当先進的な条文と言えるのではないかというふうに思っております。

それから七十年以上が経過をいたしまして、教育をめぐる環境は一変をいたしました。

例えば、幼稚園、保育園なんですけれども、制定当時は、世の中にはほとんど幼稚園というのは存在をしておりませんし、保育園も全くありません。割合を調べてみますと、幼稚園に就園している子供の割合は七・三%、十四人に一人。保育園はほぼゼロでしょう。今どうなっているかと申し上げますと、幼稚園、保育園を足し合わせますと、ほぼ全ての子供が幼児教育を受けているという現状にあります。

これだけ状況が大きく変化をし、そして、幼稚園、保育園の子供たちの親というのは小学校、中学校と比較をすると所得が低いケースが多いわけですから、そこについて無償化をするというのは十分合理的な理由があるし、これだけ時代も変わってきているわけですから、二十一世紀の教育を、国民的な議論をして、ここをやるのであれば、憲法に書くというのは十分検討に値するというふうに思います。

同じく高校も、憲法ができた当初というのは半分を下回っておりましたが、今は九七%程度となっておりますので、同様に検討に値すると考えます。

一方で、高等教育なんですが、問題は非常にたくさんあります。

具体的に私が一番問題だと感じていますのは、生活保護家庭の子供については、世帯にとどまる限り、大学進学、専門学校についても認められておりません。先進国としては非常に恥ずかしいことだというふうに思います。そういったことについて状況を変えるということについては、私は、国民的な合意ができるのであれば、憲法改正も検討すべきだと思います。

ただし、全て無償化するかということについては、それこそ工業高校などを出て立派に働いて税金を納めている若者もたくさんおりますので、そういったことを考えると、そこは私は、全て無償化するということではなくて、経済的な状況によって差をなくすということに重点を置くべきではないかというふうに考えております。

なお、教育の無償化について明確にすべきは、公の性格を有する教育について無償化ということを二十六条の中に書くべきだというふうに思います。そして、それをすることによって、八十九条の、公の支配に属しない慈善、教育もしくは博愛の事業に対し公金を支出することはできないとなっている、この条文の今私が読み上げた部分については削除するのが、憲法上の疑義をなくすという意味で、私は必要だというふうに考えているということをつけ加えたいと思います。

私権制限に関して

最後に、中谷委員がお帰りになりましたので、簡潔に、先週の議論について改めて。

中谷委員の方からは、憲法改正が必要な理由として、私権制限について幾つか例示がありました。結論から申し上げると、全て現行憲法上可能でありますし、現行法上も可能です。

まず第一点ですが、自衛隊が緊急に道路をつくる場合に、瓦れきをどかせるとか車をどかせるというのは、災対法の七十六条の六で既にできるようになっています。

次に、家の中に入り込んで家を解体するということについては、災害救助法の四条及び九条で可能になっています。

そして、地方自治体ができない場合、国ができるようにするべきだということについては、既に自衛隊の自主派遣がありますから、既にできるようになっています。言わずもがなですが、中谷大臣は有事法制のときの当初の提案者ですから、武力攻撃事態国民保護法制についてはもちろん全て可能になっていますから、全て現行法上可能です。

なお、それでもできないことがあるのであれば、憲法上は公共の福祉による制約ができていますから、現行法をさらに変えれば全て対応できるということをぜひ御理解をいただいて、もし反論があれば、ぜひお聞かせをいただきたいというふうに思います。

以上です。

同性婚の現状は改憲論議よりずっと前の段階

○細野委員
二回目ですので、簡潔に発言させていただきます。

まず第一点目、中谷幹事の方から御説明があった点、地方自治との関係で御発言がありました。

私は、地方自治との関係においても、緊急事態、十分対応し得るという理解でございますけれども、具体的に御指摘いただいたので、ぜひお願いしたいことがあります。それは、緊急事態の具体的な事例において、現行法でできないことは何なのかというのを少し書面で整理していただきたい。現行法でできないけれども、憲法上、法改正をすればできることもあるはずですから。それでもできないものは何かということも、憲法上できないことも何なのか。法律上できないこと、憲法上できないことを少し整理して、できれば書面で、議論を深めるという意味で、出していただければ具体的な議論がし得るかなというふうに思います。

二点目、船田幹事の方から、自民党を代表して、同性婚について発言がありました。前向きな意味で驚きました。

憲法二十四条は、婚姻についてこう定めています。婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本とすると書かれている。この両性というのは、家が決めるのではなくて個人の意思だということですから、私は二十四条をもって同性婚が禁じられているというふうには解釈をしておりませんし、それが通説だと思います。

ただし、憲法制定当時、LGBTのことについてしっかり踏まえた議論がされたとは到底思えませんので、ここは、そういう議論をする中で、両性という書き方をしない方がいいという議論は十分あり得る、前向きな議論はあり得るというふうに思います。

ただし、ぜひこれは皆さんに御理解をいただきたいんですが、現状況というのは、そういう憲法改正の議論よりもずっと前の段階にある。LGBTについて、差別解消法は通っていません。自民党の皆さんの中では理解促進法という議論がされているようですが、それも結論が出ていません。まずそれが第一段階。第二段階で、パートナーシップ、渋谷区で導入をされているようなものについてどう考えるかということが出てくる。そして第三段階で同性婚をどうするかという議論であって、はるか手前の状況にあるということはぜひ御理解をいただいて、ぜひ各党間でしっかり議論を進めていただきたい。我々は前向きに議論したいと思いますので、そのことを申し上げたいと思います。

その前向きな、法的な対応をする中で、憲法についても二十四条を改正しようという話になるのであれば、それは大いに議論する、そういう必要があるのではないかということを申し上げたいと思います。

最後に、簡潔に一点だけ。

河野統幕長の発言についていろいろ御発言がありました。私、地元に自衛隊を四つ、駐屯地を抱えておりまして、日ごろから自衛隊の皆さんのいろいろな話を、特にこの九条についてさまざまな議論が出てきましたので、具体的にお話を伺ってまいりました。

私も自衛隊の皆さんの気持ちはわかっています。そして、前向きに議論したいというふうに思っています。ただし、統幕長があの発言をされるかどうかというのは、私はやや議論が必要だと思いますよ、質問に答える形だとは言っても。やはり、そういう政治的な影響のあることについては、特に、私は、制服組が厳に発言を慎んでこられたから自衛隊は信頼を得てきた部分があるというふうに思います。

ですから、それは全然おかしくないんだという御趣旨がありました。与党としてそういうことを言われる立場にあることはもちろんわかりますけれども、自衛隊の問題について本当に冷静に議論したいのであれば、制服組の皆さんの思いというのはしっかり我々が踏まえればいい話であって、彼らが発言をしなくてもいろいろな議論が前に進むような状況をつくることの方が政治の責任ということになるのではないかということを最後に付言して、発言を終わりたいと思います。

以上です。


編集部より:この記事は、衆議院議員の細野豪志氏(静岡5区、民進党)のオフィシャルブログ 2017年5月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は細野豪志オフィシャルブログをご覧ください。