都民F38に躍進も、自民46で第1党。・民進6・公明23・共産10・維新2・ネット2・無所属諸派1
7月2日投開票の都議選まで1ヶ月となった。
都議選についてはこれまでも高橋亮平(一般社団法人政治教育センター代表理事・NPO法人 Rights代表理事・元中央大学特任准教授・元市川市議・元市川市長候補)コラム)でも書いてきたが、各党の立候補予定者も出揃ってくる中で、今回は選挙区ごとに情勢調査を行なってみた。
5月中の情勢に基づく推計だが、結果は、自民党が45.8議席となって第1党となりそうなものの10.2議席の減だ。都民ファーストの会は民進党離党組の推薦候補も合わせれば、5議席から38.0議席まで躍進するが、推薦を出している公明党の23.0議席を足しても61.0議席と、全127議席の過半数である64議席には届かない推計となった。
今回はあくまで各選挙区ごとの情勢調査で分量を取るので、詳しい分析については、また別にコラムを書くことにしたい。
民進党は18議席から5.8議席と大幅減。
共産党も17議席から9.6議席、以下、日本維新の会が2.2議席、東京生活者ネットワークが1.7議席、無所属と諸派で1.0議席となった。
図表: 都議会議員選挙各党議席獲得予測
出典: 筆者作成
千代田区・中央区・港区・新宿区の情勢
ここからは選挙区ごとに見ていく事にしよう。
都議会のドンと言われた自民党の内田都議のお膝元である千代田区は都議選の最重点選挙区と位置づけられていたが、内田氏の引退、千代田区長選挙の結果を受け、都民ファーストが確保する可能性が高い。
中央区は、自民党の現職が無所属で出馬、一方で自民党公認に前回みんなの党で出た候補とネジレた選挙区になっている。ここに都民ファーストの候補者が決まり三つ巴の争いになりそう。
港区の2議席は自民が1議席を確保した上でもう1議席を都民ファーストの2名と自民で争う形になりそう。
新宿区は4議席のため、都民ファースト、自民、公明で1議席ずつ確保した上で、最後の1議席を自民の2議席目と共産が争う形になりそう。
図表: 選挙区ごとの候補者一覧(千代田区・中央区・港区・新宿区)
出典: 筆者作成
文京区・台東区・墨田区・江東区の情勢
文京区はオーソドックスな2議席を都民ファーストと自民で確保。
台東区は都民ファーストが2人区に2人出すレアケースで、現職が1議席確保した上で、残り1議席を自民と元自民区議の都民ファーストで争う。
墨田区は3議席。1議席を公明が確保した上で、残り2議席を都民ファーストと自民2人で争う。
今回の構図では、前回より投票率が上がるため、全体として、こうした構図の選挙区においてはボーダーラインが上がり、共産が届かないという選挙区が目立つことになりそう。
江東区は、民進党が議席確保できる数少ない選挙区の1つになる分析。自民は現職の票をうまく配分できれば2議席も可能性があるが、票割りがうまくできずに現職だけの当選となりそう。公明党も確保した上で、残り1議席を都民ファーストと共産で争う形か。いずれにしても下位は混戦になりそう。
図表: 選挙区ごとの候補者一覧(文京区・台東区・墨田区・江東区)
出典: 筆者作成
品川区・目黒区・大田区の情勢
品川区の4議席も公明党、都民ファーストの現職、自民の1議席ずつは手堅く、残り1議席を自民と都民ファーストそれぞれの2議席目と共産で争う形か。民進は前回の2候補分がそのまま合わされば可能性もあるが逆風の中、新人では厳しそう。
目黒区は公明、都民ファーストの元職は手堅く、最後の1議席を自民2人で争う事になりそう。
大田区は最大の8議席。自民と公明が2議席ずつと都民ファーストが1議席確保、共産も1議席は確保できる。その上で残りの4候補者で2議席を争うような構図か。維新は唯一の現職でありこの選挙区で取れるか取れないかは大きい。
この選挙区もそうだが、都民ファーストの候補者は、元維新を維新に、元自民を自民にといった形で意図的にブツけているかのように見える。
図表: 選挙区ごとの候補者一覧(品川区・目黒区・大田区)
出典: 筆者作成
世田谷区・渋谷区・中野区の情勢
世田谷区は、公明がなぜか現職2人の選挙区を1人に絞ってきたので安泰。共産も議席を確保、自民党も2人は確実に議席が取れるのではないか。この選挙区もそうだが、今回の都議選は総じて民進党が大幅に減少する構造になったこともあり、都民ファーストが票を伸ばしても自民の票が減る構造にならなくなっているように見える。
一方で、都民ファーストのような空中戦をベースにした政党の票は一方に偏る可能性が高い。こうした選挙区で複数当選できないと、一定の数以上に増えない構造になってしまう。
渋谷区の2議席は自民が1議席確保した上で、残り1議席を都民ファースト2人で争う形になりそう。
定数減になった中野区の3議席は公明、自民、都民ファーストで綺麗に分けそう。
図表: 選挙区ごとの候補者一覧(世田谷区・渋谷区・中野区)
出典: 筆者作成
杉並区・豊島区・北区の情勢
杉並区の6議席も公明、共産、自民の1議席も手堅く、残りの3議席のうち1議席を都民ファースト同士で争い、残り2議席を残りで争う構造になるか。結果論だが民進党は1人に絞れば取れるが、また複数立てて共倒れの可能性もある。
豊島区は3人区のため共産が届かないので、都民ファースト、公明、自民が綺麗に分ける。
定数減で3議席となった北区は、調査を見ても都民ファーストが一人飛び抜け、残りの2議席を自民、公明、共産で接戦だが、やはり定数3だと共産は厳しいか。
図表: 選挙区ごとの候補者一覧(杉並区・豊島区・北区)
出典: 筆者作成
荒川区・板橋区・練馬区の情勢
荒川区は2議席でありながら公明が立てている選挙区。都民ファーストは、あわよくば都民ファーストと公明でと思っているのかもしれないが、現実には自民が手堅く確保しそう。
板橋区は5議席のため公明のほか共産も1議席獲得できる。自民も1議席確保した上で、残りの2議席を4人で争う。現実的にはこうした構図で都民ファーストが2候補に票を分けることができないため、片方の候補に偏ってしまい1議席の可能性がある。こうした選挙区で複数当選させられるかによって状況が変わってくる。
練馬区の6議席は逆に公明、共産、自民が1議席ずつのほか、都民ファーストが2議席確保。残り1議席を自民、民進、維新で争う。ここでも民進は2候補擁立したため共倒れの可能性もある。
図表: 選挙区ごとの候補者一覧(荒川区・板橋区・練馬区)
出典: 筆者作成
足立区・葛飾区・江戸川区の情勢
足立区は立候補辞退した後の民進候補も決まったが、公明が2議席を確保し、共産1、自民1、都民ファースト1が決まり残りの1議席を自民と維新で争う形になりそう。
葛飾区は公明、自民が1議席ずつ確保した上で、残り2議席を都民ファースト、自民、共産で争う。
江戸川区も公明、自民、都民ファーストが1議席ずつ固めた上で、都民ファースト、自民、共産で残り2議席を争う。
図表: 選挙区ごとの候補者一覧(足立区・葛飾区・江戸川区)
出典: 筆者作成
八王子市・立川市・武蔵野市・三鷹市の情勢
八王子市も公明、自民、都民ファーストで1議席固めた上で、自民、都民ファースト、共産で2議席を争う。
立川市の2議席は都民ファーストと自民で決まりか。
武蔵野市は、今回の都議選の中でも最もわからない激戦区。現状では三つ巴。
三鷹市は自民が取りそうだが、まだ三つ巴。
図表: 選挙区ごとの候補者一覧(八王子市・立川市・武蔵野市・三鷹市)
出典: 筆者作成
青梅市・府中市・昭島市・町田市の情勢
青梅市は1議席なので、実質、都民ファーストと自民の一騎打ち。
府中の2議席は、現職である自民と都民ファーストで決まりそう。
昭島市の1議席も実質、都民ファーストと自民の一騎打ち。
この辺りの1議席を自民と都民ファーストのどちらが取るかが選挙結果を大きく変えていく事になる。特に都民ファーストは、複数当選が難しいので、こうした1人区を取れる戦略が打てるかが重要。逆に自民は地盤を固め複数当選をしっかり抑えていきたい。
町田市は、都民ファーストが候補を決めきれない数少ない選挙区。公明、自民のほか、都民ファーストも地元で選挙経験のある塾生から選べば確保できる。残り1議席か2議席になるかを自民、民進、共産、維新で争う。都民ファーストが出なければ維新が議席を取れる数少ない選挙区になる可能性もある。
図表: 選挙区ごとの候補者一覧(青梅市・府中市・昭島市・町田市)
出典: 筆者作成
小金井市・小平市・日野市・西東京市の情勢
小金井市は自民と都民ファーストの新人同士の一騎打ち。自民党で当選し都民ファースト入りした現職の票をどちらがどれだけ獲得できるかも重要に。
小平市は自民が確保し、都民ファーストと民進で争う構図。民進としては死守したい選挙区。どれだけ戦力を集中させられるかも注目。
日野市は都民ファースト、自民、無所属の現職で争う。都民ファーストは1候補が辞退しており、無所属だと厳しいか。
西東京市は、自民が確保した上で、都民ファースト同士で1議席を争うことになりそう。
図表: 選挙区ごとの候補者一覧(小金井市・小平市・日野市・西東京市)
出典: 筆者作成
西多摩・南多摩・北多摩一・北多摩二の情勢
西多摩も自民が確保した上で、都民ファースト同士で1議席を争う形か。
南多摩も同様。
知事選時から多摩が弱いと言われてきたが、こうした地域で都民ファーストが複数当選するようになると一気に議席構造が変わる可能性がある。
北多摩一は、公明、自民、都民ファーストで決まりか。
北多摩二は唯一生活者ネットワークの候補者が都民ファースト推薦を得た選挙区。自民党が1議席を確保した上で残り1議席をネットと都民ファーストで争う形になりそう。
図表: 選挙区ごとの候補者一覧(西多摩・南多摩・北多摩一・北多摩二)
出典: 筆者作成
北多摩三・北多摩四・島部の情勢
北多摩三は、都民ファースト、自民、公明で決まり。
北多摩四は、自民と都民ファースト。
島部は自民で決まる。
図表: 選挙区ごとの候補者一覧(北多摩三・北多摩四・島部)
出典: 筆者作成
小池氏が代表就任、反転攻勢でさらに都民ファーストは躍進の可能性もある
今回は、基本的に5月末日までのデータに基づく分析だが、状況が変われば、選挙情勢も変わってくる可能性はある。
町田市については、都民ファーストの会がまだ立てきれていない選挙区であり、地元で選挙経験のある地方議員の塾生から選べば、確実に議席は取れるだろう。各党ともこうした最後の候補者擁立が直近の注目になりそう。
分析していると、現状では都民ファーストの1選挙区内での複数当選がかなり厳しそうだ。空中戦頼りの政党は政党への支持につながっても、目立つ方の候補者に票が偏る傾向がある。
ただこの分析後に小池知事が代表に就任したため、都民ファーストの支持が上がってくる可能性はある。
選挙直前には、市場問題についての結論を出して一気に都民ファーストブームを創ろうとしているとの噂もあり、こうした点も含めて、引き続き分析を続けていきたいと思う。
高橋亮平(たかはし・りょうへい)
一般社団法人政治教育センター代表理事、NPO法人Rights代表理事、一般社団法人生徒会活動支援協会理事長、千葉市こども若者参画・生徒会活性化アドバイザーなども務める。1976年生まれ。明治大学理工学部卒。26歳で市川市議、34歳で全国最年少自治体部長職として松戸市政策担当官・審議監を務めたほか、全国若手市議会議員の会会長、東京財団研究員、中央大学特任准教授等を経て現職。学生時代訴え続けた18歳選挙権を実現。世代間格差問題の是正と持続可能な社会システムへの転換を求め「ワカモノ・マニフェスト」を発表、田原総一朗氏を会長に政策監視NPOであるNPO法人「万年野党」を創設、事務局長を担い「国会議員三ツ星評価」などを発行。AERA「日本を立て直す100人」、米国務省から次世代のリーダーとしてIVプログラムなどに選ばれる。テレビ朝日「朝まで生テレビ!」、BSフジ「プライムニュース」等、メディアにも出演。MXテレビ「TOKYO MX NEWS」で解説も務める。著書に『世代間格差ってなんだ』、『20歳からの社会科』、『18歳が政治を変える!』他。株式会社政策工房客員研究員、明治大学世代間政策研究所客員研究員も務める。
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