トランプのパリ協定離脱が行政事業レビューで議論された

平成29年度(2017年度)春の行政事業レビュー公開プロセスが始まった。6月2日は外務省。トランプ米国大統領が、日本時間では同日に発表した、パリ協定からの離脱に関係する事業が議論された。それが「気候変動枠組条約(UNFCCC)拠出金」である。

気候変動枠組条約(UNFCCC)は1994年に発効した条約で197国・機関が締結している。条約事務局の定常経費は国際連合の分担金比率で各国が拠出し、これがUNFCCC拠出金である。我が国は2016年度には2億66百万円を負担した。同じ事務局が京都議定書とパリ協定についても事務局を務め、それぞれに固有の経費も分担金比率で各国が別に拠出する。トランプの宣言した離脱がパリ協定に限られればUNFCCC拠出金は変わらない。条約から脱退するとなれば、米国の拠出額を各国が分担しなければならないので、およそ25%の増額が予測される。情報を収集し適切・柔軟に対応するべきというのが公開プロセスの結論になった。

わが国が拠出金を分担する活動を評価する指標の一つとして、政府は日本人職員比率を設定している。UNFCCC事務局の場合は3.7%で目標としている3.1%よりも高い。しかし、幹部には一人も日本人がいない。これについて、公開プロセスは幹部への登用について戦略を立てて臨む必要があると指摘した。外務省ではUNFCCCの活動状況を経団連などに説明し関心の喚起を図っているが、UNFCCCにおける交渉の場に民間企業から専門家を直接参加させるといった、より積極的な方策が求められる。

「ハーグ条約の実施」についても議論された。邦人が保護を求めた際に対応するという受動的な側面を外務省は強調したが、公開プロセスは、各国の批准の状況や国際結婚・離婚の動向などから計画的に予算を立て、執行するように求めた。また、ハーグ条約に関わる事案は国内でも発生するが、夫婦間のトラブルで傷つく子の保護が最優先されるべきなので、児童相談所などの関連機関と連携を深める必要があるとの結論になった。

「独立行政法人国際協力機構運営費交付金(技術協力)」は青年海外協力隊とシニア海外ボランティアに関する事業である。青年海外協力隊への応募者は年々減少しているので、彼らが不安に感じている帰国後の就職支援を一層充実させる必要がある。開発途上国からは電気電子機器、自動車整備などに関連する派遣要請が増加しているが、熟練のシニア海外ボランティアはこれに応えられる可能性がある。シニア海外ボランティアの潜在的な希望者に届くように広報を改善する必要があるというのが、公開プロセスの結論である。

先の記事「事業は霞が関で起きているんじゃない!現場で起きているんだ!」で公開プロセスにおける現地調査の重要性を説明した。外務省についてはUNFCCC事務局の活動についてドイツ・ボンまで調査に出向くといったことは不可能である。したがって、霞が関にとどまっての議論とならざるを得ないが、トランプ大統領の離脱表明もあり、緊張の中で公開プロセスは進められた。