バニラ・エアの障害者差別と情報アクセシビリティの推進

山田 肇

バニラ・エアの飛行機(Wikipediaより:編集部)

朝日新聞の記事によればバニラ・エアは「歩けない人は乗れない」と言ったそうで、これは障害者差別解消法第八条が禁止する「障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすること」に相当する恐れがある。

2006年に施行されたバリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)は、高齢者・障害者等の自立した生活のために、公共交通機関、道路・路外駐車場、公園施設、建築物や、これらをつなぐ駅前広場などの改善・整備を求める法律である。鉄道駅でエスカレータ・エレベータの整備が進んだなど、この法律は高齢者・障害者を包摂する社会環境整備に役割を果たしてきた。バニラ・エアには、バリアフリー法と障害者差別解消法に基づいて急いでサービスを改善するように求めたい。

一方で、情報の受発信に関する障壁(情報アクセシビリティ)への社会的な関心は低い。テレビにテロップ表示される緊急情報は視覚障害者には伝わらない。手話言語条例の制定も13県/75市/9町にとどまっている。日本語字幕付きの邦画の上映も少ない。それにも増して、地方公共団体の公式ウェブサイトではアクセシビリティへの配慮不足が目立つ。

情報通信政策フォーラム(ICPF)では情報アクセシビリティについて考えるシンポジウムを6月26日に開催した。詳細はICPFサイトで公開しているのでご覧いただきたい

シンポジウムで提案されたのは、公共調達において情報アクセシビリティ対応を義務とするというアイデアである。公共が積極的に対応するようになれば民間にも波及していくだろう。

米国ではリハビリテーション法508条によって公共調達での対応は義務化されており、欧州もその方向に向かっている。わが国も、交通機関と建築物に関するバリアフリー法と同様に、情報アクセシビリティに関する個別法の制定を考えるべき時期が来ている。

編集部注:事実誤認の記述を削除しました。