SAKETIMESが『地元の期待を一身に背負う!北海道に誕生した地方創生蔵「上川大雪酒造」の新たなスタートに密着』という記事を出した。
冒頭の「三重県にある休眠中の酒蔵がもっていた酒造免許を、北海道にできた新設蔵へ移転する。そんな前例のない離れ業で話題を集めた」に疑問を持って少し調べたら、酒税法に基づく岩盤規制が見えてきた。
酒税法では第7条で酒類の製造免許新規付与の条件が定められていて、日本酒は「製造免許を受けた後一年間に製造しようとする酒類の見込数量」が60キロリットルとなっている。これがとてつもなく高い壁なのだ。
「都道府県別統計とランキングで見る県民性」というサイトに日本酒生産量の都道府県ランキング(2013年)が掲載されている。1位は兵庫県で1蔵当たり977キロリットル、2位が京都府で963キロリットルである。これは、兵庫県の白鶴と大関、京都府の月桂冠と松竹梅という巨大酒蔵が数値を伸ばした結果である。
三位の埼玉県はほぼ三分の一の359キロリットルに過ぎず、24位の滋賀県で60キロリットルを割り込む。都道府県の半数で60キロリットル以下なのに、これを新規参入条件とする酒税法は厳しすぎる。
60キロリットルを365日で割ると一日に90本以上も一升瓶を販売しなければならない勘定になる。名前も定着していない酒蔵にこれを求めるのは無理。そこで、「上川大雪酒造」は三重県の休眠酒蔵の免許を買い取ったようだ。
せっかくの地域創生が岩盤規制で制約されるのは気の毒だ。地ビールが話題になって久しいが、国酒での地域創生にも取り組めるように規制を緩和すべきである。