なぜ、ミュージシャンは練習をするのかという問題

2017年07月18日 08:00

完全に公私混同なのだけど、ここ数年、自分の才能で食べている方のインタビューに力を入れている。ミュージシャン、プロレスラー・格闘家などだ。彼らの仕事哲学にいちいち共感したり、刺激を受けたり。

何度かインタビューをさせて頂いており。いつも緊張感と安らぎがあるのが、日本を代表するメタルバンド、ANTHEMのリーダー柴田直人さんと、格闘家の青木真也さんをインタビューする際だ。私は二人を尊敬している。一方、私もプロだという自負があり。インタビュアーとしては、いかに本音を引き出すか、特に私だから聞くことができた話を引き出せるかどうか、唸る質問ができるかどうかが問われる。私は音楽ライターでも格闘ライターでもない。領空侵犯であるがゆえの責任を果たさなくてはならない。

先日の柴田直人さんのインタビューもそういう感じだった。

老舗ヘヴィメタルバンド『ANTHEM』に学ぶ 「メンバーの個性」の活かし方 | しらべぇ 

新譜を20回以上聴き込み、直近の他誌のインタビューを読み込み、質問したいことを一度、書き出す。たいていインタビュー時間は1時間以内だから、その間の組み立てを考える。

もっとも、この事前準備は当然、大事なのだけど、実はこの綿密な準備をいかに壊していくかどうかが大事で。その場の化学反応、想いを大事にしないといけないな、と。さらには、互いに用意しておいた展開にしてはいけないなあ、と。

まあ、事前に周到に準備していたのは、「このアルバムは、”面白い”」という言葉を率直に伝えること。メタルのアルバムに「面白い」という褒め言葉は不適切かもしれないが、この言葉こそ、新譜を表現する言葉だと私は確信したから。その言葉をぶつけたときに何と言うかを楽しみにしていた。実際、この感想に唸っていた。

今回、神がかっていたのは、実は柴田さん自身、そういう仕事の進め方を大事にしている方だとわかり。完璧主義者のように見える柴田さんだけど、実はその場、その場の衝動を大事にしており。

僕は最近のレコーディングでは、その場で瞬間的にスパークした火花をぱっと写真に撮るような感覚を意識しています。本当は周到に準備して、デモテープを持って行ったほうが効率良く作業は進みますし、「正しい」のかもしれません。

でも、少なくとも今は、僕、個人の心は準備すればするほど冷めてしまう(苦笑)。僕は長い間 部屋にこもってギターを弾きとおしますが、それは細かく計算した曲をきちっと仕上げるためではなく、衝動とかエネルギーとかを圧縮するためなのかもしれませんね。

心に火がつかないと、なんだか気持ちが悪いんです。ものをつくって提示するのって、ものすごいエネルギーと度胸がいること。僕の心の中を全て見せるのと同じなので。僕は、イメージ的に表現すると、即興演奏をレコーディングしたいくらいなんですよ(笑)。

最近ライブが増えているのも、もしかしたらそんな想いからくるものなのかもしれません。リハーサルは何度も繰り返してやりますが、いつ自分の心の中に何が生まれても身体がちゃんと反応できるようにするためで、上手な演奏を毎回同じようにするリハーサルじゃないんですよ。

もちろんプロですから、最低レベルの演奏はクリアしようとしますが、僕はライブでCDと同じプレイをする気はまったくないので(笑)。例えば2日連続でプレイしても、前日と全く違うアプローチに挑戦していることを見て聴いてほしい。

うん、練習って上手くなるというかそういうことではなくて、気持ちを高めるという意味があるわけで。そして、その場の衝動をいかに描写するか、という。それも含めて練習。

プロは上手いのは当たり前。プロは、凄いのだ。

というわけで、地道な練習(にあたるもの)と、その場でのスパーク、両方大事にしようと思ったわけだ。

ENGRAVED(デラックスエディション)(初回限定盤)(DVD付)
アンセム
ユニバーサル ミュージック
2017-06-21


新譜、本当にいい感じなので、聴いてみてね。


MVもいい感じ。


私の新作もよろしくね。2年準備したのだけど、最後はその場の衝動を大事にしているよ。


編集部より:この記事は常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2017年7月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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常見 陽平
千葉商科大学国際教養学部専任講師

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