【更新】台湾国籍の喪失には「中華民国パスポート」が必要

池田 信夫

JBpressで蓮舫問題の経緯をざっとおさらいしたが、今週の会見で疑惑はむしろ深まった。最大の疑問は、この1984年に失効したパスポートで台湾政府の国籍喪失許可証が取れるのかということだ。

民進党は記者レクで「台湾政府の特別な配慮で喪失許可がおりた」と説明したが、その意味ははっきりしない。有効な旅券がなかったのに台湾政府が超法規的に許可した、といいたいようだが、それは考えにくい。

台湾の国籍法では「満20以上であって、中華民国法によって能力を有し、自ら外国国籍の取得を申請する者」と定めている。これは台湾の戸籍や旅券をもつという意味で、日本生まれの蓮舫氏は台湾に戸籍がないので、有効な台湾の旅券がないと国籍法の手続きはできない。彼女の1984年の旅券には穴があけられ、左上が切られている。

これは別の旅券に更新したことを意味するので、少なくとも1994年まで台湾の旅券を使ったはずだ。それは1993年の朝日新聞に掲載された「在日の中国国籍の者としてアジアからの視点にこだわりたい」という記者会見でもわかる(彼女は「編集部の間違いだ」と否定している)。

彼女は日本国籍を取得した1985年以降も台湾の旅券を更新し、2016年9月の段階で有効な旅券をもっていた疑いが強い。この写真のように、中華民国の国籍を喪失するには「中華民国パスポート」が必要で、1984年に失効した旅券が使えるとは考えられない。

渡航記録は台湾政府も日本政府も持っているので、彼女が嘘をついていることは両国政府が知っている。台湾政府が「特別な配慮」をして国籍喪失許可の日付を3ヶ月も遡及したのは、日本の野党第一党に「貸し」をつくるためだろう。これで台湾政府は、いつでも民進党代表のクビを取れる弱みを握ったことになる。

遡及するメリットは台湾にはないので、民進党側が日付の改竄を依頼したものと思われる。これは目黒区役所の9月26日付の「不受理証明」と整合性を取るためだが、少なくとも昨年10月17日までは台湾内政部で審査していたので、9月26日に区役所に喪失許可証を出せるはずがない。

いずれにせよ蓮舫側の説明は矛盾だらけで、特に2016年まで有効だった旅券があるはずだ。これが出てきたら「故意ではなかった」という彼女の説明は崩れ、2016年の参議院選挙でも経歴詐称していたことになる。その証拠が出てきたら、当選無効である。野田幹事長を更迭するより、民進党執行部が彼女を更迭すべきだ。