世襲議員が政治家の新規参入の障壁

2017年08月06日 06:00

新内閣にも世襲議員が多数(首相官邸サイト:編集部)

家業になったのか政治業

第3次安倍改造内閣は、首相を含め20人の閣僚のうち9人が世襲議員で、その比率は約5割です。党4役ではなんと3人が世襲議員です。世襲の比率は自民党が4割で他党に比べ圧倒的に高くなっています。それだけ国会議員を目指す人にとって、議員世襲は厚い壁、つまり参入障壁として立ちふさがっています。

政治家の2世、3世あるいは縁戚関係者でないと、自民党ほど、政界に入ってきにくいのです。政治が家業化しており、新たな政治人材を迎えにくくなっています。国際的にみても、米連邦議会における世襲比率は5%で、日本は異常に高いのです。閣僚の相次ぐ不祥事、失態、失言が目立ち、政治人材の劣化が懸念されるのも、そこに一因があります。

日本の医師は世襲が多いといわれます。それでも親が医師だった比率は25%だそうです。40%という自民党議員の世襲率の高さは突出しています。首相になった人をみると、さらに世襲は多くなります。安倍首相から過去に遡ると、麻生、福田、小泉、小渕、橋本氏らなど10人中9人がなんと世襲です。この中には、鳩山、細川氏ら非自民の人も含まれます。

獣医の参入障壁どころではない

加計学園問題では、獣医学部の新設が50年間もなく、参入障壁の高さが問題になりました。安倍政権はそれを打破するために、獣医学部の新設を認める規制緩和が必要だったと強調しています。既得権益を認めない、参入障壁が高いなどを問題視するなら、獣医学部どころか、特に自民党議員の世襲による参入障壁の厚さを直視することが重要です。

北朝鮮では金日成、金正日、金正恩と3代続けて、政権を維持してきました。日本は民主主義のもとでの選挙、北朝鮮は独裁政治による強引な政権継承で比較はできないにせよ、民主的選挙を経ても世襲比率が高いことをどう考えていくのか。世襲による弊害には共通点はないでしょうか。

親、祖父らの跡を継いで出馬すると、「地盤、看板、カバンを引き継げるので、選挙で有利」とされます。後援会組織、秘書グループ、事務所など(選挙地盤)、地元に浸透した知名度(看板)、政治資金管理団体など(カバン)なども引き継ぎます。世襲でない議員候補はすべてゼロからスタートしなければならない。これに対し、世襲では、いわば既設の会社、工場、販売店組織などをそっくり使えます。小選挙区では、世襲候補の当選比率は40%近いという調査結果があります。

政治資金を無税で継承

もっと有利なのは政治資金です。政治にはカネがかかります。引退する親の政治資金団体から、子の政治資金団体に資金を移す時、寄付という形をとると、非課税です。一般国民の遺産には、相続税が重くのしかかってくるのに、政治資金の継承というか相続は、無税なのです。それだけでも、世襲は資金面で非世襲候補より有利です。当然、世襲議員は当選回数を多く、重ねることでき、閣僚に早く到達できる。さらに、その上の首相の座を目指すことできます。

同じ選挙区から立候補できないようにする。政治資金継承の非課税制を是正する。改革する手はいくつもあります。問題は、おかしな制度を、特に自民党には、改革する気はないことです。世襲議員でも有能な人はいます。もっと大切なのは、政界への参入障壁を低くし、有能な人材を広く迎え入れる環境を整え、政治の活性化を促すことです。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2017年8月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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中村 仁
ジャーナリスト、元読売新聞記者

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